日本の活字メディアでは、ドナルド・J・トランプ前米大統領が今年11月に当選する可能性を、四つの音節で表現している“もしトラ”は「もしトランプ氏が当選したら」という意味だ。

この表現には、ドナルド・J・トランプ氏が2期目を務めるためにホワイトハウスに戻るかどうかが判明する日(日本標準時)である2024年11月6日という有効期限が組み込まれている。

週刊新潮」(3月7日号)は、「もしトラ」のページを開いた最初の出版物の一つであり、トランプ氏の当選が日本経済にどのような影響を与えそうかを5ページにわたって考察している。

 

福井県立大学名誉教授の島田洋一氏は、「バイデンは8月の党大会前に勇気をもって出馬を辞退するだろう。もしバイデンが選挙に残れば、トランプが勝つ可能性が高い。緑の党のジル・スタイン候補がバイデン候補から票を吸い上げる可能性もある」と付け加えた。

 

Real Clear Politicsというウェブサイトは、約12の主要米米全国世論調査の平均結果をもとに、アメリカ人の有権者選好度を定期的に掲載している。2月22日付の記事によると、トランプ氏が46.1%対44.2%でバイデン氏をリードしている。

 

ニューズウィーク日本版の表紙は、トランプがホワイトハウスに戻ることが日本にとって何を意味するかについてである。Infinity LLCのチーフエコノミストである田代秀敏氏は、トランプ氏の大統領としての前歴を下記のように振り返る。

 

前政権では "米国第一主義 "を唱え、同盟国よりも米国を優先する保護主義的な政策をとった。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)からの永久離脱などだ。今回、彼はこのような政策を再開する『アジェンダ47』と呼ばれるものを提案すると言われている。また、中国の最恵国待遇を撤回する可能性も高い。鉄鋼、医薬品などの輸入は段階的に削減され、アメリカ企業による中国への投資は抑制されるだろう。"

 

上記の行動は、確実に日本を巻き込むだろう。

「アメリカの自由貿易体制からの撤退を全体的に示しているのです」と田代氏は続ける。「それは日本にとって致命的な打撃となる。アジェンダ47は、関税について『目には目を』の立場を適用することを提唱している。つまり、貿易相手国がアメリカ製品にかける関税がアメリカより高ければ、アメリカもそれに合わせるということだ。例えば、輸入牛肉である。日本は輸入牛肉に23.1%の保護関税をかけている。米国が報復措置をとれば、日本の対米輸出品すべてに同じ税率が適用される可能性がある。単純に考えれば、このような措置は物価を上昇させ、アメリカの消費者の生活水準に悪影響を与える。企業収益は急降下し、それによって日本の株価は急落するだろう」と田代氏は言う。

 

第一生命経済研究所の永濱利廣チーフエコノミストは、「アメリカの外交に関して言えば、"アメリカ第一主義 "の立場から、アメリカの対外関与が減少する可能性がある」と指摘する。例えば、米国のウクライナ支援が減少してロシアが有利になれば、『攻撃した国が勝つ』という認識が生まれ、国際秩序に影響を与える可能性が高い。国際紛争のリスクが高まれば、台湾をめぐる危機を招きかねず、武力紛争のリスクが高まれば、必然的に株価の下落を招く。」

 

「中国経済の減速が不動産市場やその他のセクターに悪影響を及ぼしている現在、同国でビジネスを展開する日本企業、特に産業用ロボットやファクトリー・オートメーション関連企業も大きな打撃を受ける可能性がある」と、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は言う。ユニクロのように中国への依存度が高い企業も、中国の強硬政策の餌食になるかもしれない。

 

「中国とのライバル関係を重視するアメリカにとって、日本の重要性が変わることはないだろう。しかし、安倍晋三前首相の時とは違い、トランプ氏と友好的な人間関係を保ちながら取引できる人物が日本にはいない。米国は対日貿易で赤字であり、トランプ氏が提案している外国からの輸入品に対する世界10%の関税を含め、日本が不利な条件を突きつけられる恐れがある。」

 

(上記は“ Japan Today 2024/03/7付 記事”からの抄訳です。)