財務省は2月10日、税収で返済する必要のある普通国債の発行残高が2022年12月末に1005兆7772億円になったと発表した。1000兆円超えは初めてで、22年9月末から11兆9807億円増えた。日銀が大規模金融緩和のさらなる修正に踏み込めば、金利上昇で利払い費が急増する恐れがある。

 

普通国債は公共事業の財源となる建設国債や赤字国債、借り換え債などを含む。貸し付けの回収金で返済する財投債や借入金、政府短期証券なども合計したいわゆる「国の借金」は1256兆9992億円となった。

 

普通国債の残高は新型コロナウイルス禍を境に増加ペースが加速した。18、19年度末の増加率は前年度末比で1〜2%程度だった。20年度末に6.8%に跳ね上がり、21年度末も4.7%と高水準が続く。普通国債は22年度の未発行分が残っており、3月末にかけてさらに増える恐れがある。コロナ対策は縮小しつつあるものの、物価高対策や巨額の予備費計上で歳出膨張は続く。23年度予算案は一般会計が初めて110兆円を超え、35.6兆円の新規国債の発行を予定する。成立すれば普通国債の同年度末の残高は1068兆円に達する見込みだ。

 

日銀が22年末に10年物国債利回りの許容変動幅をプラスマイナス0.5%に拡大し、長期金利は上昇傾向にある。財務省は利払い費の見積もりに使う金利を26年度に1.6%に置いた場合、同年度の国債費は29.8兆円と23年度から4.5兆円増えると試算する。社会保障費の膨張と防衛力の強化に利払い費の急増が重なれば、成長投資の余地はさらに狭まる。歳出の抜本的な見直しが欠かせない。

 

(上記は日本経済新聞ウェブサイト 2024.2.10 より引用)

 

1,000兆円を超える大きな借金による今後の日本経済への影響

 

 第一に、高水準の政府債務は財政の持続可能性への懸念につながる可能性がある。政府は利払いによって債務を返済する必要があるため、多額の債務負担は政府財政を圧迫し、増税や必要不可欠なサービスに対する公共支出の削減につながる可能性がある。

 第二に、多額の政府債務は経済に対する投資家の信頼にも影響を与えかねない。投資家が政府の債務返済能力に不安を抱けば、日本国債に高い金利を要求し、政府の借入コストの増加につながる可能性がある。

第三に、高水準の政府債務は民間投資を抑制する可能性がある。政府が金融市場から多額の資金を借り入れると、民間企業や個人の信用力が低下し、経済成長やイノベーションが阻害される可能性がある。

 

さらに、多額の政府債務は、経済ショックや危機に対する政府の柔軟な対応を制限する可能性がある。予算のかなりの部分が債務の返済に充てられるため、財政刺激策や、教育、医療、インフラなどの重要分野への投資の余地が限られる可能性がある。

また、高水準の政府債務は将来の世代にも影響を及ぼす可能性がある。債務が累積すると、将来の納税者が今日発生した債務の返済負担を負うことになり、世代間の公平性に懸念が生じる可能性がある。

 

 全体として、当初は経済成長を刺激するために金融緩和政策が実施されたかもしれないが、多額の政府債務負担の蓄積は上述したような将来の日本経済に課題をもたらす可能性がある。政策立案者はこの債務を注意深く管理し、長期的な財政の持続可能性と経済の安定を確保するための対策を実施することが不可欠である。以上のことは異次元の金融緩和策になってから言われ続けて来たが、国債発行残高は1000兆円台超えてしまった。