自動運転車事業の営業損失拡大の中、第1四半期の受注が50%減少すると発表

 

Mobileye(モービルアイ、研究開発本部:イスラエル)は、先進運転支援システム(ADAS)の技術と市場をリードするテクノロジーカンパニーである。同社が開発する独自の半導体チップ(EyeQ)とアルゴリズムによって駆動される同社特有の単眼カメラによるADAS技術は、Volvo,BMW,GM, Ford, Opel, Hyundaiなど世界の自動車メーカーに採用され、自動運転技術のベンチマークとなっている。「mobileye 570」はmobileye社の高性能なチップを使用した後付けの衝突防止補助システムで、新車でなくても取り付けることが可能である。

 

モービルアイの株価は2024年1月4日の市場前取引で最大27%も急落した。自動運転技術の業界がウォール街を驚かせ、顧客が過剰在庫を咀嚼して注文を減らしていると警告したためだ。NASDAQに上場している同社は、現在もインテルが株式の過半数を保有しているが、2023年暦年の暫定決算を発表し、投資家を失望させた。モービルアイは、最大手顧客との協議を含む "標準的な計画プロセス "に従い、"当社の顧客で過剰在庫が発生しており、EyeQや SoC(System-on-a-chip;集積回路の1個のチップ上に、プロセッサコアをはじめ一般的なマイクロコントローラが持つような機能の他、応用目的の機能なども集積し、連携してシステムとして機能するよう設計された集積回路製品)が600万~700万ユニットあると思われる "と述べた。この過剰在庫の多くは、2021年と2022年のサプライチェーンの制約と部品不足を回避したいという願望、また2023年の特定のOEMの生産台数が予想を下回ったため、ティア1(ティア;Tierとは段、列、階層を意味し、Tier1/Tier2/Tier3は、自動車業界、建設業界などで用いられる場合は、多階層からなるビジネスプロセスのポジションを指す。たとえば自動車業界の場合、大元のメーカーから見てダイレクトに取り引きするシステム企業がTier1、システム企業が取り引きする半導体企業がTier2、さらに半導体企業が取引する素材企業がTier3となる。)の顧客がベーシックADASカテゴリーで在庫を積み増す決定をしたことを反映していると理解しています。」と同社は付け加えた。

 

「サプライチェーンの懸念が和らいだことから、当社の顧客はこの余剰在庫の大部分を第1四半期に使用すると予想しています。その結果、2024年第1四半期の売上高は2023年第1四半期の売上高を大幅に下回り、2024年の残りの期間で売上高は正常化すると予想しています。」「我々は現在、2023年第1四半期の売上高4億5,800万ドルに対し、第1四半期の売上高は約50%減少すると予想している。また現在のところ、通年の収益は在庫の取り崩しによる影響はかなり少ないと考えています。」

モービルアイは具体的な顧客名を挙げなかったが、ポルシェ、フォルクスワーゲン、BMW、日産を顧客ベースに数えている。

2024年の売上予想は18.3億ドルから19.6億ドルで、アナリストのコンセンサス予想25.8億ドルを大きく下回っている。これは、EyeQの出荷台数が前年の3,700万台に対して3,100万~3,300万台、SuperVisionの出荷台数が2023年の約10万台に対して17万5,000~19万5,000台と予想されることに基づく。

同社は、EyeQ SoC事業の数量が予想を下回ることで、収益性に一時的な影響が出ることを見込んでいる。営業損失は、2023年の3300万ドルから3900万ドルに対し、3億7800万ドルから4億6800万ドルとなる見通しである。これはかなり悪い方向への動きだ。モービルアイは、今年末までに顧客の在庫レベルが正常化することを期待して指をくわえてみている。その保証はないが、2024年にはより広いチップ市場が成長するというのがコンセンサスだ。

 

(上記はポール・クナート氏による2024年1月5日金曜日付け“The Register”の記事の抄訳に一部加筆したものです。)