(前回のつづき)

ロサンゼルスで勝ち残りが一気に半分の12人になってしまった翌日、本来ならばパームスプリングスに移動するこの日、僕たちは本場のディズニーランドへ連れて行ってもらい、思い切り遊ばせてもらった。
ディズニーランドを後にしたのは、もう夕方も近い頃だったと思う。僕たちを乗せたバスは一路東へと向かい、すっかり日が落ちた頃に、その日泊まるホテルに着いた。

夜だったのでどんなところに建っているのかはよくわからなかったのだが、このホテルのスケールは異様に大きかった。上にではない。平面的に大きいのだ。フロントでチェックインして自分の部屋の鍵を手渡された僕は、その部屋へと向かったのだが、その部屋というのが完全に別棟になっていて、フロントのある建物をでて外を歩くこと5分余り(10分くらいだったかも?)。到着したその部屋も、ものすごい広い部屋が2部屋つづきになっていて、しかもバスルームもとにかく広かった。日本だったら高級ホテルのスイートルームといった感じで、1泊何十万円もするんじゃなかろうか。
この広い部屋に1人(注:ふつうは2人1室なのだが、この日は端数がでたのか1人だった)なので、とにかく落ち着かなかった上、夜遅くに到着したのに翌日の集合時間も早かったので、せっかくの部屋もゆっくりと満喫することはできなかった。

翌日。朝に集合場所であるフロントに向かうときになって、初めてこのホテルがゴルフ場の隣に建っているホテルだとわかった。帰国してから知ったことだが、たしか「ミッションヒルズ」とか言って、アメリカの女子プロゴルフの4大タイトルの一つ、ナビスコ・ダイナショアの行われているゴルフ場とそのホテルだった。

バスに乗った僕たちは、アイマスクをはめさせられた。そして、どれくらい経ったろう。ようやくアイマスクをはずした僕たちのまわり、窓の外に広がっていた風景は、何百基もあるかと思われる風力発電機の群れ「ウインドファーム」の風景だ。
バスを降りてからがまたたいへんだった。とにかく常時風速20mくらいの風が吹いているところだ。砂も思い切り舞い上がっている。そんな中を、重い荷物を持って、自分の解答席まで歩いていくのだ。

そしてルール発表。
僕たちが留さんに促がされて振り向くと、ウルトラクイズのスタッフの中でも若手(つまり下っ端)のスタッフ、体格もあまりよくない岸さんが、パラシュートをつけてふらふらよたよたと蛇行を繰り返しながら、僕たちのいた解答席までやってきた。

「強風駆け込み大声クイズ」

体力と持続力のない僕にとっては鬼門の、体力がものを言うクイズだった。実際にパラシュートをつけてみると、風の抵抗が半端ではない。

「俺の体力では、全力疾走で3回くらいが限界だな」

まるで、アストロ球団・宇野球一のスカイラブ投法(注:1試合に2球が限度)のようなことを感じた僕は、ここでの敗者が12人中1人しかいないこともあって、あまり他の挑戦者と解答を争わないようにしようと考えた。つまり、極端な話、自分だけがわかる問題だけ走ろうとした。
だから、実戦で「東京だよおっかさん」の問題がでたときは、ほとんど全員が走っているが、僕だけはぴくりとも動いていない。
もっともオンエアでチェックしてみると、結局は自信がなかったのか、相当むだな動きをしている。「ふいご」の問題を宇田川と争ったときなどは、定番のクイズ問題なのでとりあえず走ってみたが、答を思い出せずに途中で走り負けたふりをしてもいる。やっぱりここでもさえない戦いに変わりはない。

ここで僕が勝ち抜けたのは、結局5番目だった。もちろん勝ち抜けたのはほっとしたが、その勝ち方には可もなし不可もなし。次のデビルスタワーにはどうしても行きたかったので、デビルスタワーへの期待だけが膨らんでいた。

・・・・・

パームスプリングスからデビルスタワーへは、いったんロサンゼルスに戻り、ここから空路デンバー空港へ(デンバー空港は国内線の乗り継ぎによく使われる空港らしい)、そこで乗り換え、ラピッドシティ空港に降り立った。ラピッドシティはこのあたりの中心都市ではあるが、アメリカの典型的な田舎町といった感じのところだった。市内にはこれといった高級ホテルがないらしく、市内では1番の、しかしながら日本で言えば地方都市の駅前にあるシティホテルといった感じのところに泊まった。

翌日。バスで2時間ほども乗っていただろうか。州境を越えてワイオミング州に入った僕たちは、映画「未知との遭遇」の舞台として有名な(というかそれぐらいしか知らないが)、デビルスタワーに降り立った。
正直、「未知との遭遇」でのイメージから、相当おどろおどろしいところをイメージしていたんだが、実際のそこは、まるで奈良の若草山のようにのんびりと明るい場所だった。
到着する直前の2~3分間、バスに乗っていて急に「その場でかがめ。窓の外を見るな」と言われたので何事かと思っていたが、その理由はすぐにわかった。バスの横をこの日のゲストであるインディアンたちが通っていたのだ。

そしてルール発表=クイズ開始。
ここでのクイズは、ウルトラクイズの代名詞のひとつ「バラまきクイズ」だった。

バラまきクイズでは、最初の問題以後は常にクイズを読む時間のラグがある(ハズレの場合はタイムラグが少ないが)ので、並び順がほとんど変わらない。だから最初にどこにつけるかがたいへん重要だ。
そのため、体力的には全く劣っている僕だったが、最初だけは全力疾走で問題を取りに行き、そして一番手前にあった封筒を手にすると、一直線にまた全力疾走で戻ってきた。

「狙い通り一番に解答席に戻り、クイズに答えることができる。まずは順調な滑り出しだ」

そう思ったのもつかの間、ここでも大失態を演じることになるのである。


(今回はまったりとした展開だったなあと思いつつ・・・つづく)