さて、第11回ウルトラクイズの復刻第4弾は大長編となった「日の出タイムショックで大暴走」。
元々はカンクンの日の出タイムショックについて書こうと思ったんだけど、発端となるハワイから書いていったら、ハワイからカンクンまでの話になってしまった。おまけにこのブログにはいろいろと問題発言も多いので気が引けるところなんだけど、、、まあいいか。

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ついにこの話を書くのか。ひょっとしたらウルトラファンの夢を壊すことになってしまうかもしれないな。でも、第11回の僕の戦いの中では、これも重要なファクターのひとつだし……
ということで、今回はおっかなびっくりで書きます。

・・・・・(例によって本文敬称略)

ウルトラクイズのスタッフは、ときとしてとても罪つくりなことをする。番組をより盛り上げ、よりおもしろくするためにだ。
もちろん、クイズドキュメンタリーを標榜するウルトラクイズのこと、そして正統派クイズ番組たるウルトラクイズのこと、さすがに、クイズの出題や答を事前に教えたりといった、いわゆるやらせをすることは一切ない。しかし、それ以外の許容範囲ぎりぎりのところでは、いろいろと仕掛けをしてくる。方々で噂されていた、女性挑戦者が勝ち残っているときに早押しクイズが中盤に差し掛かってくると、とたんに生活や料理の問題が多くなるといった出題操作なんかは、実際に行われたことが何度もあるのだろう。

ウルトラクイズの旅行中、スタッフはたいへん多忙である。あるチェックポイントでクイズが終了して勝者敗者が決定すると、引き続き罰ゲームを収録し、機材を撤収してホテルに帰る。それからはホテルの一室に集合して収録したばかりのビデオを流し、どの問題のどのポイントで誰が答えたか、正解したか不正解だったかが細かくチェックされる。中には、実際に解答した挑戦者だけでなく、解答権を得られないまでも、ボタンを押している挑戦者も、その問題の答を知っていた可能性が高いと判断されてチェックされる。成田からグアムに向かう飛行機の中で行われる400問ペーパークイズも、実は挑戦者一人ひとりの実力や得意分野・不得意分野を分析するための重要な基本資料になるという。
こうして、挑戦者一人ひとりの個性や実力は、しだいにまる裸にされていくわけだ。

僕は出題の操作なんかは、出題者側に選択権があり、ある程度は許容範囲内だと思っている。アンフェアな部分はあるかもしれないが、クイズ王をめざす以上は、それくらいの壁は乗り越えていかなくてはならないんだろうとも思う。ウルトラクイズがクイズドキュメンタリーを標榜しているとはいえ、当然のことながら企画段階でコンセプトやイメージ、めざすべき方向性は設定されているわけだし、それに近づけたいと思うスタッフの気持ちは理解できる。僕も今はイベント屋の端くれなので、もしウルトラクイズを企画する側に立てば、同じような仕掛けを行うかもしれない。

でも、第11回ウルトラクイズでのスタッフの仕掛けは、僕にとっては相当つらいものだった。そしてその結果が、カンクンでの日の出タイムショックの大暴走につながるのである。

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暑さと疲労でたいへん過酷だったハワイの綱引きクイズが終わった夜、勝ち残った24人の僕たち挑戦者は、珍しく夕食を留さんはじめスタッフとご一緒した。名目は懇親会だったと思う。

そして、宴たけなわとなった頃、僕と高橋(充成)の2人は留さんに呼ばれ、他の挑戦者とは離れた席で、3人だけで話をした。
留さんは気さくに、しかしながら語気を強めて僕たち2人に言った。

「今回の挑戦者にはクイズの経験者が少ない。稲川と高橋(充)がみんなを引っ張っていけ!」

第11回ウルトラクイズの元々のコンセプトが「過去10回のウルトラクイズを超える」ものだったということはすでに述べた。そのために歴代クイズ王を使ったクイズが予定されていた。しかし、勝ち残った挑戦者たちを見渡したとき、スタッフの間には相当な不安があったのだろう。全体的なクイズの実力そのものについても不安があったと思うが、たぶんそれ以上に不安だったのは「闘争心の欠如」だったのではないだろうか。
クイズ未経験者が大多数を占める中、しだいに挑戦者が脱落して別れが続くウルトラクイズの形式が、すでに仲間意識が芽生えていた挑戦者たちには大きな重荷になって、ともすれば肝心のクイズでも真剣さや闘争心をなくしてしまう危険があった。その結果、フィルムがまわっている最も重要な時間を、たいへんつまらないものにしてしまう可能性があった。それを察知したスタッフが、大陸に渡って本格的なサバイバルクイズが始まる前のこの夜、なんとか打開しようとしたのではないだろうか。

留さんのこの激励に、僕と高橋(充)は気持ちが引き締まる思いだった。そして自分たちの重要な人生の1ページとなるであろう第11回ウルトラクイズを、よりよいものとして記録し残すためにも、思い切り頑張っていこうと考えた。

しかし、スタッフの仕掛けはこれだけではなかった。
僕と高橋(充)に言った言葉とは裏腹に、僕と高橋以外のみんなのところ、とりわけ機内トップの高橋(麻)と実力者の宇田川を中心とするグループの席に行った留さんは、全く反対の言葉で、みんなを叱咤激励したのだった。

「稲川はあまり強くない。だからおまえらも頑張れ。」

第11回ウルトラクイズにおいて、「クイズ経験者対未経験者」「稲川・高橋(充)対宇田川・高橋(麻)」の構図が、深く静かにできあがった瞬間だった。そして、そのことを僕が知ったのは、それからずっと後のことだった。

(スターウォーズ中盤のような暗さを漂わせながら・・・つづく。)

※(注)誤解のないように言っておきますが、僕らはクイズのライバル関係になったというだけで、ふだんはふつうに楽しく交流していました。ご心配なく。