(前回のつづき)※本文部分敬称略

ここで、「爆走!エアーボートカルタクイズ」のルールをおさらいしよう。
クイズが出題されると、6台のエアーボートは挑戦者の指示により一斉にスタートし、大湿原を爆走して約1km先のカルタバラマキゾーンへ。そこには直径数百mにわたり、いろは48文字のうちの1文字が大きく書かれた巨大ボードがばらまかれている。そして、挑戦者はその中からクイズの正解の頭文字のボードを拾ってスタート地点に戻り、正解すれば1ポイントというものである。
但しそれだけだと毎回1人しか正解がでないため、答をアレンジしたり、修飾語句をつけてもよいことになっていた。テレビでは、答が「切手」の問題で、「き」のボードを持ってきて「切手」と答えるだけでなく、「す」を持ってきて「スタンプ」、「ゆ」を持ってきて「郵便局で売っている切手」でもよい、と説明されている。もっとも、このアレンジや修飾がどこまで許されるのかは不明だった。
また、1問につき正解先着3名までが有効となり(つまり1問につき最大3名が1ポイント獲得できる)、誤答しても減点はなし、3ポイント獲得で勝ち抜け。そして僕たちを驚かせたのは、勝ち抜け人数が6人中4人(2人が敗退)しかいないことだった。

Q1.国民栄誉賞とアメリカ大リーグのベーブ・ルース賞を受賞。小学校の副読本にも載った、日本プロ野球界を代表する存在といえば誰?(A.王貞治)

第1問を受けて一斉にスタートしたエアーボート。僕の「ジェットエンジン搭載」エアーボートは生い茂る草をものともせず、軽快に大湿原の上を疾走していく。風を切って豪快に走るのが本当に気持ちく、まさにいかにもウルトラクイズといった感じだった。。
答はすぐにわかったものの、ストレートな「お」はみつからず、「き」(巨人の王貞治)もどうかと思い、ちょっとひねりを加えたいとあれこれ考えていると、「そ」の札が目の前に。これを拾ってスタート地点に戻った僕は、なんとか3番手で「早実出身の王貞治」と答えて幸先よく1ポイントを獲得した。
→高橋0・山賀0・柳井1・稲川1・中村0・宇田川1

Q2.ここエバーグレーズで撮影された日本でも人気のあったテレビドラマ。子どもと一緒にでてきた動物は何?(A.イルカ)

この問題、まあアメリカのテレビドラマで少年と動物といえば、「名犬ラッシー」か「わんぱくフリッパー」くらいしかないだろう。でもこの風景はどうみてもラッシーじゃないし、かといってフリッパーが泳ぐ雰囲気でもないしなあ……などと考えながらカルタバラマキ地点に向かうと、いきなり「い」のボードが目の前に。ひねりも何もないんだが、まあとりあえず、ということでこのボードを拾って「(いちおう)イルカ」と答えた。最初の2問で2ポイントを獲得。今日の俺はなんだが調子いい。

~と思ったのもつかの間、これ以後は調子が急降下していくんだから勝負はわからない。
→高橋1・山賀0・柳井1・稲川2・中村0・宇田川1

Q3.相手をだますために、ウソの涙を流すといわれる爬虫類といえば何?(A.ワニ)

この問題は過去に聞いたことのない問題だった。クイズ本はおろか、雑学本でもみた記憶がない。爬虫類でウソといって思い浮かぶのは「ヘビ」。でも、ヘビと涙が結びつかない。むしろ爬虫類で涙といったら「ウルガメ」が真っ先に思い浮かぶ。
そんな僕の目にとびこんできたのは「へ」のボードだった。これも何かのお導きか。僕は自分の迷いを払拭してこのボードを拾い、スタート地点に戻った。しかし、判定は無常にも不正解。結局この問題で正解したのは宇田川だけだった。彼は答に自信があったのだろうか?

そして、運命の第4問を迎える。
→高橋1・山賀0・柳井1・稲川2・中村0・宇田川2

Q4.竜田揚げを揚げるために使われる粉は何?(A.片栗粉)

この問題、立命館大学の学食で竜田揚げをのせた竜田丼というメニューがあったので、その食感とかを冷静に思い浮かべれば、あるいは答を思い出せたかもしれない。だが、一瞬考えても何も思い浮かばなかった僕は、カルタバラマキ地点に到着すると、操縦者のおじさんに向かってとんでもない指示をだした。しかも右手ではなく口頭で(つまりはつたない英語で)。

「山賀のエアーボートを追ってくれ」

今となっては正確になんと言ったかは覚えていないが、とにかく僕は山賀のエアーボートを追跡してくれるように指示した。料理問題の得意な山賀がどんなボードを拾うかをみれば、あるいは答がわかるかもしれないと思ったからだ。(結果的には無意味な行動だった。この問題で片栗粉の「か」を拾ったのは高橋で、山賀が拾ったのは「し」。「白い色の片栗粉」の「し」では、答がわかろうはずがない)

ところが、ルール違反(と思われる行為)であるばかりか、元々無理なこの指示が、その直後にとんでもないトラブルを生み出す。ようやく僕の指示の意味を理解したおじさんが、山賀のエアーボートを追いかけようと舵を切ったところ、急なターンでエンジンに過大な負荷がかかったのか、エンジンが悲鳴を上げ、そのままストップしてしまったのである。
おじさんがなんとかエンジンを再始動させようとしたが、エンジンはうんともすんともいわない。
他の挑戦者のエアーボートがスタート地点に戻っていく中、僕のエアーボートだけがカルタバラマキ地点に取り残された。

他のエアーボートが遠くに去ったその場所は、大湿原の真っ只中。静寂に包まれた空間の中で大空を仰いだ僕は、クイズの最中であることも忘れ、「俺は今、どうしてここにいるんだろう」と、不思議な気持ちでいっぱいだった。

※この問題の結果は以下の通り。高橋と山賀が正解。
→高橋2・山賀1・柳井1・稲川2・中村0・宇田川2

(つづく)