「直行・直帰」


 2005年5月2日から5日にかけて5カ月振りに中国の深?を訪れた。香港に滞在せず、シンセンのみというのは今回が初めてだ。


 今回は、香港国際空港から直接対岸の中国・シンセンの「蛇口」を目指し「羅湖」に滞在し、帰りはバスにのり「皇崗岸口」経由で香港国際空港にもどってくるという計画を立てた。はじめてのコースの上、帰りは10時5分の飛行機に間に合うようにしなくてはならないので、慎重にコース選びを行った。


高速フェリーでシンセン「蛇口」へ直行

 さて、行きの船便を説明すると以下のようになる。


 飛行機を降りて、通常だと体温検査のカメラを通り過ぎてから入境手続きをするための列に並ぶことになる。ところが今回は、体温検査のカメラを通る直前の左側にフェリーのチケット売り場でチケットを手に入れた。香港ドルの持ち合わせがなかったがカードが使えたので問題はなかった。料金は普通席で200香港ドル。


 カード決済をするとチケット、乗り場への行き方を書いた紙、船会社のワッペンを渡された。ワッペンを胸につけて、4階のバス乗り場までいくと、既に30人ほどの人が待っていた。間もなく、バスに乗り込み5分ほど走るとすぐに埠頭へ到着したが、船に乗り込むまでに10分ほど待たされた。フェリーは指定席だが空席が多いため、どこに座っても大丈夫のようだ。中国への入国カードは船内で渡されたので、すぐに記入しておいた。フェリーはその後順調に運航し約30分で「蛇口」に到着。飛行機を降りてから「蛇口」への所要時間は約1時間20分だった。


 フェリーターミナルから2分ほど歩くとその日の宿である「南海酒店」に着いた。





 香港・広東省で放映されたテレビドラマ「イ火頭智多星(マジック・シェフ)」に、このホテルの1階のレストランがよく出てくる。テラスでも飲食が可能だ。空や海を眺め小鳥囀りをききながら、のんびりできたら最高だったのにこの日は生憎の雨。僕の部屋からは海が見えなかったが、雑木林の緑が目に心地よい。付近を散歩したかったが雨が止まず、あきらめて部屋でテレビを見ることにした。香港の番組も見ることもできる。


 それでも飽き足らず、傘をさして散歩をした。椰子などの熱帯植物が多く、南国のリゾート地に似た雰囲気がある。



中心街「羅湖」へ



 翌日の昼前に、張さんとその友人の亜TONが迎えに来てくれた。歩いて2分ほどのフェリーターミナルまで行きタクシーを捕まえてもらった。タクシー運転手と交渉して運賃を決め、より安いタクシーを捜すらしい。「羅湖」へは約40分で60人民元(約840円)ほどなので、安いか高いかは僕にはよくわからない。20分ほど走ると風景は徐々に変わり、高層ビルがちらほら現れてきた。あっという間に、張さんの住むマンションの前に到着。廊下続きの隣のマンションに亜TONが住んでいるという。ここは「羅湖駅」から比較的近く、徒歩なら10分ほどのロケーションだ。すぐ近くにも中堅のホテルが数軒、学校、カラオケ屋、レストラン、食堂、マンション、郵便局、CD屋もあるので便利に違いない。


 「羅湖」での宿泊先は「新都酒店」という老舗のホテルだ。距離も「羅湖駅」へは徒歩5分ぐらいで便利なことと、ホテル発の香港へのバスがあるというので、ここを選んだ。

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小羊の開き




 今回特に印象に残った料理は「アジの開き」でなく「小羊の開き焼き」だ。この料理には非常に時間がかかるので、4時間以上前に予約する必要がある。子羊を開きの状態で焼き上げたもので、サイズは30×60センチぐらいのビッグサイズ。味は、今まで食べた羊の肉とは断然にちがう。柔らかく、少し鶏肉に近いような感じもする。脂も結構あるが、くどくなく胸にくることもない。手がベタベタになるので、使い捨てナイロン手袋を使って食べた。


 この料理は450人民元のコースになっており、他にも11種の料理がついている。この日は8人で食べたが、少し残したので、10人でも十分な量だと思う。


 他にも海鮮料理などおいしいものが沢山あったが、安くておいしかったものは「雲呑湯(ワンタンスープ)」。清ましのスープに小ぶりのワンタンが20個ほど入っていて3.5人民元(約50円)という安さには驚いた。またおやつに買ったニラ饅頭も一個1人民元(約14円)なのだが、味も濃厚で腹持ちがよかった。朝や昼はこうした庶民料理でも十分感動するのだ。


 


マージャン



 長時間に渡ってマージャン観戦をしたのは今回が初めてだ。亜TONの家を訪れると、電動卓、普通のマージャン台が1卓ずつあり。全員静かにマージャンを打っている。「やらないか」とさそわれたが、当地のルールを知らないと断り、観戦することにした。マージャン牌は日本のものより1.5倍ほどの大きさであるのはご存知だと思う。


 他に気づいたことは、次のようになる。


 日本との大きな違いは、勝負がやたら早い。そのため流局(上がりのものがなくゲーム1回が終了すること)がないこと。


 役なしで上がれること。(日本ではピンフやタンヤオ、ツモなどの役が最低限必要)


フリテン(自分で捨てたパイとそれに関連するパイでは他人から上がれない)がない。


フリテン関係なしなので、牌の捨て方がチー(自分の左側の人から、1つもらい3個の連数にすること)はできない。


 ポン(自分の持つ2ペアーを他人から1つもらうこと)がやたら多い。


 カン(手持ち3ペアーを4ペアーにすること)をすれば得点が倍になること。


 サイコロは2つ使うが大きい数字を出目とみなすこと。


 1回ごとの現金精算であり、その掛け金が大きいこと。


 掛け金はする場所によって違うのだが、ここでは、他人から上がれば50人民元(700円)獲得。自分で上がるツモなら他の3人から各50元ずつ獲得する。カンをした後上がった場合は、当初の上がりよりも倍になる。


 その他、トイトイ、清一色、三色、ニコニコなども得点加算されるが、スピードとツモ重視なので、滅多にそんな役はつくらない。香港のルールとも違うそうだ。


 ここでこの数日マージャンを打っているのは30歳中半~40歳前半の女性が主流、50歳前後のオヤジが一人だった。


 あるとき、5巡目ほどで聴牌していた張さんだが、他人の捨てたパイであがらない。3面待ちだったので、3巡後にツモあがり。見事150元を獲得。早い回なら他の人もツモを狙っているのがよくわかった。


 全体で一局(1ゲーム4巡)終了すれば、1,000元(約14,000円)前後のお金が動いていた。2局やって大勝の人が2,000元ほど獲得した。2,000元といえば深?の月収ぐらいなるのではないか?半日でそんなことしていいの? おまけに、亜TONはこの家の主で、ここで1卓を1日200元で貸し出しているそうだ。


 毎日こんなことをしているこの人たちは「黑社會(ヤクザ)」なのではと思った。マージャンは観戦だけにしようと、このとき心に誓った。


 観戦だけでも、お茶やりんごなど出してくれるので、帰り際に200元を請求されるかもしれないと心配になった。


 


カラオケ






 亜TONと彼女の19歳になる娘、張さん、それに近所のおばさんとカラオケに行った。「K歌王量販式KTV」という店だ。入り口の両側には小姐が3人ずつ立ち並び、招きいれてくれる。中に入ると大きな吹き抜けや池があり、ホテルのロビーを思わせる。部屋へはセーラー服を着た店員が案内してくれた。


 部屋の中は広く、綺麗なトイレつき。部屋代・飲み食い付のセットメニューもあるが、今回は飲み物のみにした。飲み物は売店へ自分で買いに行くこともできる。売店には、ビールやソフトドリンクの他、ウィスキーやブランデー、スナックが取り揃えてある。


 カラオケは日本語も含め豊富なジャンルがある。おばさんグループは古い歌を中心に、娘さんは新曲中心に歌った。昨年の香港新人賞を取った衛蘭(JANICE)の「心亂如麻」の時には僕もつい口ずさんでしまった。


 僕はといえば、日本語のテレサテンを中心に歌った。おばさんグループは、中国語で、一緒に歌うのだが、僕の声より断然デカかった。やはりパワーが違う。どこか大阪のおばちゃんに似ているような気がした。


 


ポウレイ茶(ポウレイ:プーアール)




 買物で一番時間をかけたのが「ポウレイ茶」。亜TONと張さんに連れていってもらった。「新都酒店」から歩いて2分ほどのところに「茶葉世界」という茶葉の店が数十軒入ったところがある。かなり大きなビルの2階部分にある。茶葉以外にも茶器などを格安で手に入れることができる。


 2軒お店を覗いたが、2軒目で1時間半ほどお茶の試飲をした。試飲はまず、飲みたいお茶を指差し注文。試飲の前にまず、指定した茶を取り出し匂いをかがされる。それから店員さんが、小さな茶褐色の「茶壷(急須)」にお茶を入れ、その後お湯を注ぐ。直後すぐに、ガラスの器に薄いお茶入れる。このお茶は飲まず、おいて置く。再び「茶壷(急須)」にお湯を入れ少し蒸らす。この時、ガラスの器に入れておいた薄いお茶を上から「茶壷(急須)」にかけ、お茶を蒸らすのに使う。そして再度、ガラスの器に茶漉しを置いて、その上から茶を注ぐ。そして、茶漉しをはずしてガラスの器から、直径4センチほどの茶碗にお茶を注いでくれる。これを10種類ほど繰り返した。


 最後は14年ものと5年ものを飲み比べさせてもらった。5年ものは水の味が強く、お茶の存在感がないと感じた。14年ものは少しコーヒーのようで味わい深い。途中何回かどちらかわからなくされたが、14年ものを的確に当てると喜んでもらえた。


 昨年産の「ポウレイ茶」も試飲したが、お茶は茶色くなく、緑茶の色に近く少し甘みがした。


 試飲の間ずっと、店員さんと亜TON、張さんはしゃべりっぱなし。普通語なので内容はわからないが、値段の話だというのはわかった。店員さんに「だんなさんを紹介してあげて」というところは、さすがおばさんなのだ。


 この店では円盤状の「普?茶」など数種とお茶の本を買った。


 他にも、ご飯を炊く小さな土鍋、調味料類、クッションなどの買物をした。広東語版が店になかったので、DVDやVCDなどの買物はパスすることにした。


 


お寺参り(拝山)




 お寺参りも、亜TONと張さんに連れていってもらった。「羅湖」の中心街からタクシーに乗り約15分で「仙湖植物園」入り口についた。ここから山頂近くあるお寺を目指した。お寺までは歩いて行けば1時間近くかかる。それがいやで、亜TONが気のよさそうなご夫婦の乗る自家用車をヒッチハイクし、お寺の入り口まで乗せてもらった。


 山門の近くには「南無阿弥陀仏」と書かれており、お寺を見上げると屋根がそり上がった中国独特の建築物だ。信仰心のない僕でさえ、こうしたお寺にくると心が休まる気がする。


 このお寺では、入り口で線香を3本無料で配っている。御堂毎に参拝者は線香を両手で握り3回深くお辞儀をしているので、同じようにして約10箇所まわった。


 帰り際に階段を3歩上がる毎に、御堂に向かって跪きお辞儀を繰り返す参拝者を見かけた。そういえば、車で参堂を上がる途中で見かけた人と同じだった。膝が痛くなるのを防ぐため膝当てをしているが、大丈夫なのかと思ってしまった。  


雲南


 マージャンのメンバーが余り、亜TON抜けたときに、彼女が今までに撮った旅行写真をパソコンで見せてもらった。「四川」「長慶」「西蔵」「雲南」などの自然や町の様子、記念写真など約800点余り。ほぼ全部に解説がついていたので、最後に鑑賞料金200元が請求されるかと危惧はしたものの、エメラルド色の湖、凍った川、花、建築物、山、空や雲など、つい見入ってしまった。


 この2日で顔あわせした亜TONのその友人は、ほぼ「雲南」出身の人で今は深?で働いているという。独身が何人かいるので、知人を旦那として紹介してあげてよとも言われた。ヤクザ仲間かと思っていたが、同郷のつながりだったのか。いや同郷のヤクザ仲間かもしれないと未だに、僕の疑惑は消えないままだ。


 故郷の「雲南はいいところだから、次回一週間の休みが取れたら連れていってあげる」と言われたが、「ヤクザ疑惑」が消えないうちは一緒には行くこともないだろう。


 


「美女軍団」







 いつも、旅行先では現地人によくからかわれる。今回は雲南「美女軍団」にはいじめられてしまった。亜TONとその友人ときたら、日本語と普通語で一~十までを言わされた。その間、何回も笑われっぱなし。日本語でいっても笑われるなんて、本当に失礼なやつらだ。


 食事の時、料理ばかりを撮影していると「美女がいるのに、どうして料理ばかり撮るの!」と凄まれたりもした。


 明日の出発が早いからホテルへ帰るというと「ホテルへ行って添い寝してあげるから」「よかったら、全員で行ってあげるから」とからかわれる始末。「公安のお世話」「簀巻き」にされて川に投げ込まれている画面が頭をよぎってしまうので、覚えたばかりの普通語で「不要?!(要らないよ)」と言ってきりぬけた。


 


復路



 最終日「新都酒店」で朝6時20分のバスで香港へ向うため、前日180人民元(約2,500円)でチケットを買った。コンシェルジュは、このバスでも出発時間には「きつい」と言われた。


 ところが当日、6時40分になってようやく迎えの約20人乗りバスが来た。中国側出国ゲートのある「皇崗岸口」まで約10分、そこで出国手続きは5分もかからなかった。外に出ると今度は大型バスに乗り換える。胸にシールを着けているので、バスの係りの人が手招いてくれた。事前バスのナンバーを聞かされていたので、万が一でも大丈夫。再びバスに乗り、また5分ほど走り今度は香港への入国の手続き。ここもあっというまに通過し、再度同じバスに乗り込で、一路空港へ。到着は8時だったので、所要時間が120分ということになる。


 たまたま今回はスムーズだったのかも知れない。中国の出国ゲートを出て大型バスに乗り換えた際、僕が一番だった。その後20分ほど待ったが、この待ち時間が延びることも予想される。