【張 富士夫】 トヨタ自動車株式会社会長

●ソニーの社外取締役。また経団連副会長、日本自動車工業会会長、財務会計基準機構理事。
●しばしばJR東海の現会長 葛西敬之(張氏と同様,教育再生委員)と並んで「名古屋のドン」と言われる。
 参考 張富士夫 - Wikipedia

教育に関してどのような考えの持ち主かわからず,経団連について調べてみた。

●長年、自民党を中心に政治献金を続け、「自民党の金庫」と呼ばれた。
 自民党は経団連から多額な政治献金を受け取っている。
 1993年、リクルート事件などの汚職を理由に政治献金の斡旋を中止したが、2004年に再開。
 2004年度の会員企業の政治献金は、自民党向けが22億2000万円、民主党向けが6000万円で、
 他党への献金は無かった(『産経新聞』8月24日号)。
●2005年6月21日に
 ホワイトカラーエグゼンプション(ホワイトカラー労働時間規制撤廃制度)の実現を促す提言をした。
 しかし、残業手当全面撤廃はするがドイツ・オランダのように残業禁止の義務化を全くしない。
 参考 日本経済団体連合会 - Wikipedia

どうもよくわからない。
さらに,調べてみると,このようなものが…。

2005年1月18日に経団連が発表した「わが国の基本問題を考える~ これからの日本を展望して ~」には,
次のようなことが書かれている。
●政治寄付を促進する制度整備
政党は、その思想・信条に賛同するものによって支えられるべきであり、
民間の自発的な政治寄付の意義を再認識し、これを促進していく必要がある。
政党は、民間からの寄付を政策立案・推進能力の強化に充てるとともに、その使途を公表すべきである。
併せて、政治資金規正法の抜本的な見直しを含め、法制・税制の整備を行うべきである。
●教育問題
(1) 現行の教育の問題点
学力面では世界のトップクラスを目指すとともに、個人の個性や能力を伸ばす教育へ、
「多様性」「競争」「評価」を基本とした大胆な改革を行う必要がある。

(2) 教育改革の方向性
① 多様な主体による教育への参入
現在、小中学校の在学者の9 割以上が公立学校に在籍している。
公立学校では、ほぼ同一の方法で標準的な内容を教えることが期待されているため、
独自色の強い教育を実践することは難しい。
多様な教育を実施するためには、私立学校の比率を高めるほか、
公設民営型学校の促進や株式会社立学校、NPO立学校などによる学校の設置・運営を促進し、
教育の質の向上に向けて相互に競争、切磋琢磨する必要がある。
そのためには、学校の設置者を国と地方公共団体、学校法人に限定した
教育基本法第6 条、学校教育法第2 条を改正すべきである。

② 生徒の選択結果を反映する補助
社会のニーズに応えた質の高い教育を行っている学校に、予算を重点的に配分しなければならない。
そのためには、生徒の選択結果を反映して学校への補助金を交付するバウチャー制度が有効と思われる。
例えば、初等中等教育では、児童・生徒や保護者に教育バウチャーを渡し、
通学する学校を選ぶ権利を与えるようにすれば、多数から支持された学校に多くの補助金が配分され、
社会や教育の受け手のニーズに合致しない学校は、自然淘汰されることとなる。
併せて、これからの教育予算のあり方を検討する上で、私学への助成根拠を明確にする観点から、
法的な見直しを行うべきである。

③ 時代の変化に適合した教育内容
優れた人材の育成には学校の教育力の向上が不可欠であるが、
何を子どもたちに教えるかという問題も極めて重要である。
21 世紀のグローバル社会において、
日本人はこれまで以上に国際社会において積極的に役割を担っていくことが求められる。
国際社会で活躍するためには、
国際人である前に日本人としての素養をしっかりと身につけていることが必要である。
こうした観点から教育内容を見直す上で、教育基本法の見直しが求められる。
第一に、戦後の教育で不十分であった日本の伝統・文化・歴史に係わる教育を充実させることである。
郷土や国を誇り、他国の人にも魅力ある国にしようという気持ちを育むための教育である。
また、戦後の教育では個人の権利の尊重に重きが置かれてきたが、
その結果、権利のみを主張する無責任な利己主義の弊害も見られることから、
権利と義務は表裏一体であることを教育の中でも強調していく必要がある。
こうした点を、教育基本法に示された教育理念の中に盛り込むべきである。
第二に、政治に関する教育である。
現在の教育では、有権者としての権利を行使することなどの重要性を十分教えていない。
従って、教育基本法に、政治に関する教育の重要性を追記すべきである。
第三に、宗教に関する教育である。
自然や生命に対する畏敬の念を育むことや、
異文化理解の素地となる宗教に関する知見を深めることの必要性が高まっている。
しかしながら、公立学校の教育現場では
特定の宗教のための教育を行わないとする教育基本法の規定に基づき、
宗教に関係するあらゆる行為を排除するという極端な運用がなされるケースがある。
従って、教育基本法の中で、
社会生活における宗教の持つ意味を理解することの重要性をより明確に示すべきである。
このほか、国が、教育内容の方向を示すことについての正当性を明らかにすることが必要であり、
条文解釈をめぐる教育現場での混乱を解消することが望まれる。

④ 組織的な学校管理・運営と評価
教育主体の多様化、教育予算や教育内容面での改革が、教員や学校の教育力向上に結びつくためには、
教員や学校の取り組みに対する評価を徹底することが不可欠である。
特に、高等教育機関においては、研究のみならず教育にも注力することが求められ、
教育への取り組み実績についても評価する必要がある。
こうした観点から、教育基本法に、
高等教育機関における教育機能の重要性について新たに規定を設けるべきである。
また、学校運営にあたっては、外部ノウハウ・人材を積極的に活用することが求められる。
このほか、教員に関する問題として、教育基本法に教員の自己研鑽努力義務を規定するとともに、
教職員組合が職場環境、待遇の改善などの活動に徹することを期待する。

⑤ 家庭や地域の役割
教育の基本は家庭であり、基本的な生活習慣、基本的倫理観などを身につけさせるのは保護者の義務である。
また、児童、生徒、学生や保護者など教育サービスを受ける側が、
学校と協力して教育を良くしていこうという姿勢も必要である。
さらに、家庭でのしつけを補う上でも地域社会の果たす役割は大きいこと、
産業界が学校と交流・連携することを通じて教育の質を高めることも求められることから、
教育基本法に、家庭教育の重要性や学校、家庭、社会の交流・連携の重要性、
教育を受ける側の責務を規定することが望まれる。
引用 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/002/honbun.html#part6

さすがは世界にエコノミックアニマルと言わせた(と言わせている)日本人を大量に生み出した
財界の方たちだけのことはありますなぁ。
早い話が,政党に金を配ることで,自分たちの意見を取り入れやすくしようとしているわけです。
極端な話,どの政党が与党になったとしても,金で言うことを聞かす集団ということです。
自民党へ22億2000万円,民主党へ6000万円という政治献金も彼ら流に言えば分散投資ということでしょう。
庶民にしてみれば大変な金額ですが,
1999年4月1日に引き下げられた法人税がさらに引き下げられれば,
この程度の献金は1年で元がとれるかと思います。
政治が彼らの言いなりになれば,日本の民主主義を崩壊しますなぁ。
会社の乗っ取りどころか国の乗っ取りを,堂々とやろうとしているわけですから。


教育に関して言えば,彼らの主張する多様性とは,
多様な個性を持つ子どもに対応するふりをした,
ビジネスチャンスとしての多様な学校を求めているわけです。
そのために障害となっている教育基本法第6 条、学校教育法第2 条を改正すべきと主張し,
バウチャー制度が有効と提言しているわけです。
日本の一般企業同様に社会や教育の受け手のニーズに合致しない学校は、自然淘汰されるとして,
一見すると今日のダメな学校は公立も含めてなくなって,いい学校だけが残るかのように言っていますが,
在籍中に淘汰されてしまった学校に通う子どもの気持ちは,
どのように法整備されても傷つくことになるでしょう。
そういう視点がまったく見えていない。
20年ほど前のイギリス・サッチャー政権が失敗した教育改革をあえて導入しようとするのも,
ブレアの成功例(イラクでは失敗したが…)を参考に立て直すことが可能で,
新たなビジネスチャンスが生まれるだろうとでも考えているのでしょうかねぇ。
参考 
サッチャー政権の教育改革 http://blogs.yahoo.co.jp/techno_bow/trackback/617565/2897281

また彼らは,
 戦後の教育では個人の権利の尊重に重きが置かれてきたが、
 その結果、権利のみを主張する無責任な利己主義の弊害も見られる
とも主張しています。
少なくとも多くの国民は,公共の福祉に反しないように権利を行使しようとしていますが…。
上記のようなことを主張し,達成するために,
公共の福祉を考えない経団連の方たちこそ利己的ですなぁ。
滑稽な話と笑い飛ばしたいところですが,
この「わが国の基本問題を考える ~ これからの日本を展望して ~」という提言は
2005年1月18日に発表されており,2006年9月にスタートした安倍氏が言っていた教育バウチャー制度も
これに基づいているのでしょう。

すでに安倍氏は経団連の言いなりということを証明するように,
教育再生会議の委員として張氏が参加しているわけですな。

ここしばらく,教育再生会議のメンバーを調べていましたが,だんだん気持ちが重くなってきました。
庶民にとっては,教育崩壊会議の方が適切な名称なのではないかと…。