さかのぼること数か月前
引き渡し前の、まだ家具も何もない新居。
建物は完成しているけれど、まだ“生活の気配”がないその空間で、私たちは神主さんをお招きして、お祓いをしてもらいました。
地鎮祭のように何もない土地でやるわけではないので、当日は家の中での儀式。これがまた、妙に神秘的なんです。がらんとして殺風景だったはずのリビングが、榊(さかき)や御幣(ごへい)に囲まれて急に“神聖な場所”になるんですよ。
神主さんが祭壇を組み立て、白い布を敷き、塩・米・お神酒を並べると、もう空気が変わる。
「この家で安全に、健やかに暮らせますように」
神主さんの声が静かに響き、私もスミ妻も思わず背筋が伸びました。
建売だからこそのお祓い
工務店で建てる注文住宅なら、地鎮祭のタイミングで土地を清めるのが一般的。
でも私たちは建売住宅を購入したので、家が完成した状態で「これから住まう場所として清める」かたちに。
正直、お祓いをやるかどうか迷っていたんです。
でもスミ妻が「新しい家だし、気持ちの問題でもやっておきたい」と言ってくれて、やることに。
家が建っている状態のお祓いでは、神主さんが家の中を順番に回り、リビング、キッチン、寝室、玄関…と一部屋ずつ塩とお神酒で清めてくださいます。
そのたびに、「この空間にも、ようやく“私たちの生活”が宿るんだな」としみじみ。
とくにキッチンでは、スミ妻が小さく頭を下げていたのが印象的でした。
ここから毎日、家族のごはんが生まれる場所になるんですもんね。
静かな時間と小さなハプニング
式の途中、外からはカラスの鳴き声が。
「カー、カー、カー」と、まるで拍子を取るように鳴くもんだから、ちょっと笑いをこらえるのが大変。
神主さんも一瞬だけ口元がゆるんで、場が少し和みました。
こういう“ちょっとした出来事”も、後から思い返すといい思い出になります。
リビングに戻って最後の祝詞(のりと)。
神主さんの声が響く中、吹き抜けから光が差し込み、榊の葉がわずかに揺れる。
新しい家の静けさと相まって、その光景は今でも鮮明に覚えています。
終わってみて
お祓いが終わったあと、神主さんが笑顔で言いました。
「これで、この家には良い“気”が満ちました。ご夫婦で仲良く暮らしてくださいね。」
ほんの30分ほどの儀式だったけれど、気持ちはすごく穏やかに。
形式的なものだと思っていたけれど、やってよかった。
今でも思います。
“すでに建っていた家”でも、自分たちがこれから暮らす家を迎え入れる儀式としてのお祓いは、まるで家と心をつなぐ“最初のあいさつ”のようでした。