4時半。雨のせいもあって、外はかなり暗くなっていました。
暖かいパーキング内から動くのが、億劫になりつつあったので、これではイカンと意を決して、雨の中、再び車探しです。これで何とか大阪まで一気に行ければ…。


ここまで来ると、関西ナンバーが多くなりますが、ど・れ・に・し・よ・う・か・なっ…なんて、暢気に選んでいる場合ではありません。雨が止まんのだ!持参していたラクダ革のカバンは、水に弱いのです。早いとこ車を見つけなければ。


しかし、ここでひとつ問題が(ってほどでもないが)。
大阪まで、と一口に云っても、大阪にも東西南北、色んな場所があります。わたしが住んでいるN市は、かなり京都寄りにあるのですが、さて、いったいどの辺りで下ろしてもらうのがよいのか…。まあ、電車で帰れる範囲ならどこでもいいのだけれど、出来ればなるべく近くまで帰りたい…。


というわけで、まずは京都ナンバーのトラック、「うる星やつら」のチェリー似の運転手さんに声をかけましたが、方向違いで断られました。
うーん、普段車に乗らないから、今いちうまく地理を説明できないんだよなぁ…。


二台目は、大阪ナンバーの中型トラックです。運転手は、色の浅黒い眼鏡のおじさん(とお兄さんの中間くらいの人)。ちょっと怖そうな感じだったのと、「乗せてくれませんか」と云ったときの反応が鈍かったのとで、これは相手を間違えたか…と思いましたが、返事はOKでした。今日は何だか二台目にツキがあるみたいです。しかも、トラックに書いてある会社の住所を見れば、わたしの地元の隣の市!


運ちゃんは、長距離の専門ドライバーではなく、たまたま仕事でこっちに来ていた人でした。「いつもは設計なんだけど、今日は人の代わりに運転することになったので、運転は下手ですよ;」
普段運転しない人なので当然ですが、ヒッチハイカーを乗せたのは、これが初めて。
最初声をかけられたとき、わたしのことを男だと思ったらしい。。。確かにセクハラ対策&防寒のために、かなり女子らしくない格好(アーミージャケットに黒いズボン、ニット帽を目深にかぶっていた)ではありましたが…。


そうでなくとも、妙齢の女子がヒッチハイクをするなんてことが信じられないらしく(乗せてくれているのにね(笑))、「女の子一人でヒッチハイクなんて、よく思いついたよねえ…。何でまたやろうと思ったの?」と、宇宙人を見るような目で聞かれてしまいました。
そこでまた、例によって、わたしの旅話に持ち込んでいくワケですが(笑。困ったときの旅だのみ)、運ちゃんはひたすら感心…というより半ば呆れておりました。ますます宇宙人だと思われたっぽい…。


彼の会社が、わたしの地元の隣の市で、そこにはわたしの母校(高校)もあるので、地元ネタでしばし話ははずみました。地元ネタはやっぱ強い。場が和む(笑)。


その後、前職が雑誌の編集だったという話になり、編集の仕事はどんな感じだったかと聞かれたので、「色んな人に会えるのが楽しかったですね。旅もそうなんですけど、人に会って話すのが好きなんですよ♪」なんてテキトー(というかウソに近い…)なことを云ったために、話は意外な展開に…。


わたしが現在、旅を終えて求職中であることを話すと、
「仕事探してるなら、うちも今女の子の募集かけてるから、興味があったら面接来てみる?」とおっしゃって、名刺まで下さるではありませんか。
えええっ、そんなあなた、見ず知らずの人の車に乗っているわたしもわたしですが、見ず知らずのヒッチハイカーに自分の会社への就職を斡旋していいのかっ!?


「人に会うのが好きだって云ってたし、喋るの得意そうだし、営業なんか向いてると思うよ」
いやっ、これはヒッチハイク限定で作られたキャラなんですよ!本当のわたしは、電気も点けずに部屋で森田童子を聴いているような、暗い子なんですよ!(前半はウソ)
編集職時代は確かに色んな人に会えて面白かったけれど、基本的には新しい人に会うのは苦手なの!インタビューは好きだったけれど、毎回毎回、めちゃめちゃ緊張してたの!
営業なんて、わたしの最も苦手とする職種なの(あと接客)。本当は、営業よりも編集よりも、ベルトコンベアー作業が一番向いているの(別に好きじゃないけど)。


まあそれはともかく、この人の会社の業種というのが、これまでのわたしの職歴とまったく関係のない”和菓子の製造機械の開発”なので、ありがたいお話とは云え、すぐに飛びつくわけにもいきません。年末までのバイトとかなら即お願いしたいところですが…。


名阪国道を西にどんどん走っていき、空が完全に暗くなった頃、奈良に入りました。
一般道になったので、進み具合はぐっと遅くなりました。奈良公園、春日大社前などを通って、生駒へと向かいます。
生駒まで来れば、大阪はもう目の前。山を越えれば、わたしの住むN市までは、ものの30分もかかりません。
生駒の山道を走りながら、「この辺はバイク事故の幽霊が出るらしいよ~」なんて話をしている間に、運ちゃんの会社のある某市まで来ました。


会社近くのJR線の駅で下ろしてもらって、そこからバスで帰るつもりでしたが、「まあ、ここまで来たらついでだから」と、N市駅まで送ってもらえることに!今日はツキまくってるなーーー!


そして、19時過ぎ。わたしは無事に、地元まで帰って来ました。
「まさかここまで連れて来ていただけるなんて…何とお礼を申してよいのやら」
「いえいえ。でもね、僕がこんなことを云うのもなんだけども、ヒッチハイクはやっぱり危ないと思うから、あんまりやらない方がいいと思うよ~。僕がお父さんだったら、絶対止めてるよ
「は、はい…そーですね^^;お父さんには云いません」
「あ、就職も興味があったらぜひ。会社のHP、名刺に書いてあるから、また見てみて」
「はい、ありがとーございます;それでは、どうもありがとうございましたっ^^ゝ」


ははは、やっぱり「危ないよ」って云われてしまったか…。
そう云えば、エリさんが云ってましたっけ。
「みんな(運ちゃんたち)、『ヒッチハイクなんて危ないよお~』とか云うんだけど、そう云いながらもちゃんと乗せてくれるんだよね(笑)」。


というわけで、何かハプニングなど期待されておられた読者の方には、少々退屈だったかと思いますが、わたしにとっては、無事で帰って来られたことが一番なので、どうぞお許し下さいませ。
それにしても、初ヒッチなのに、本当に恵まれた道中でした。
何だかんだで、日本人という人たちは親切な人種なんだなーと思いましたね。まあ、一般の乗用車には声をかけなかったので、トラック運転手という人たちだけが優しいのかも知れませんが。


すっかりヒッチの味をしめてしまい、次回は九州あたり(別府温泉)にでも行こうかななどと、またよからぬ企みが沸沸と…;