免許証の更新に行った時の話。

違反も無く、優良だった為、講習は30分の短いものだった。

部屋に着くと、2名用のテーブルは、ほぼ1人ずつ座っている状態で埋まっていた。

一番後ろの、まだ誰も座っていない席を見つけ、腰をおろした。

まだまだ入室してくる受講生達。

そんな中、一人の受講生が声をかけてきた。

「隣、空いていますか?」

甘い声の主は、色白の肌に長い髪を束ね、腰から熊のぬいぐるみとバックから、ウサギのぬいぐるみをぶら下げている、同い年ぐらいの女性だった。

「あっ、はい。全然、大丈夫ですよ。」

腰を下ろす彼女からは女性特有の良い香りが、例えるならラフランスの様な甘い香りがフワッと香ってきた。

最後に制服姿の白髪のじいさんが入ってきて、講習が始まった。

開始から数分、睡魔と戦い始めそうな時、また、あの甘い声が聞こえてきた。

「あの、車は何に乗ってるんですか?」

状況を理解しつつ、答える僕。

「車は持っていないんですよ。たまに乗るぐらいで。レンタカーとか。」

「そうなんですか。でも、優良ってことは安全運転なんですね。私、車は持ってるんですけど、一人でドライブしてもつまらなくて、近所のスーパーとかにしかいかないんですよね。」

「はぁ。そうですか。」

その瞬間、怒声が教室内に響き渡る。

「こら!そこの二人!真面目に聞かんか!!ごらぁ!」

あの白髪の教官だった。

「ごめんなさい。私のせいで怒られちゃいましたね。お詫びに私の車でこの後、どこか行きません?」と言いながら車のキープを渡してきた。


「お前のせいで怒られたんだぞ!俺はこういう恥ずかしいのが一番、嫌いなんだ!エアバックに頭、ぶち込んだろかっ!」と言うのを止め、渡されたベンツのキーを笑顔で握りしめた。

キーに付いていたのは、先刻、お会いした熊のぬいぐるみだった。その、クマの口がすこし、ニヤリと笑っていた。



こんな出会いないかなー!!!


山崎ユタカ