瓦礫_convert_20130311154914













【シナリオ】




長崎県公用車が巨大な城壁に停まった時、
場馴れした腕っ節の強そうな看護師達が出迎えてくれた。
真夜中の診察は老いぼれた精神科医が当直しており、
俺の顔を見る事さえ出来ずに電子カルテと格闘している。


キーボードで入力することに苛立ち、
両手の人差し指で誤変換を繰り返す有様は爺さんにはちょっと酷じゃん。
だから診察時間が短い上に十分な診察が出来ないDr.は
共通してブラインドタッチが出来ない。


診察の結果は想定内だ。
俺は措置入院命令を受けたことになる。


措置入院とは、患者本人に対して行政が命令して入院させるものだ。
これは精神疾患のために自傷他害の恐れや、つまり自分自身を傷つけたり、
他人を傷つけたり何らかの迷惑や犯罪行為をする可能性が高い場合に
行政が患者に命令して、行政措置として入院を強制させる人権無視の隔離を意味する。
入院契約を交わすのは、患者本人でも家族でもなく、
行政の対象の長崎県知事 中岡 秀雄 と言う事になる。
しかもこれは強制的な命令であって、
俺自身の意志も、家族の意志も、関係は一切ない。

このような極めて強制力の強い入院である為に、その条件はかなり厳しく、
実際上は何らかの犯罪行為や違法行為を犯して警察ざたになったケースが殆どな訳で
俺なんてカンファレンスの教科書みたいな
立派な精神障害者なんだから金一封くらい長崎県から貰っても良さそうだ。
行政が患者を病院に連れてくるという行動に出る前に、
「通報」が必要らしいが、3つの法律によって具現化する。

一般市民による通報(23条)
警察官による通報(24条)
検察による通報(25条)

いずれの場合でも、関わった奴らが

「どうも精神疾患がありそうだし、危ない、このままだと自傷行為や他害行為をしそうだ!」

と判断したときに、通報するのだから、俺は長崎警察署から通報された事になる。


訳の解らない精神病院からシャバに出た時には
必ずあの警察署を地獄の底に叩き込んでやる。


簡単に言うと、措置入院の条件はこの様に成立する。

精神疾患があって、そのために自傷行為や他害行為をしてしまったか、
あるいは今後する危険がかなり高い。
保護した警察官、検察、一般市民などからの通報があって
行政が動き患者を病院に連れてくるに至る。
精神保健指定医2名が診察し、2人そろって「精神疾患があり、
そのために自傷他害の危険性が高い」と診断される。
その診察結果を受けて
都道府県知事あるいは政令指定都市市長が行政措置として入院を命令する。

なんか俺の為に作られた法律みたいでマジウケル。

措置入院は、こんなんで非常に厳しい条件で、自己や他人に危険性のある場合に
保護や収容する目的でなされるものでもあるため、それ以外の入院とは違い、
基本的に入院中の外出や外泊も大きく制限される。
つまり、相当な医療的保護監視のもとではないと、病院外に出ることさえできない。

俺なんて隔離・拘束などの行動制限を使用される危険性も十分にあるのだから、
厳重な一定のルールのもとで実施されるのだろう。



ここは巨大な精神病院と多くの関連施設から構成されている。
一般病院まで同じ敷地に建設され、その規模は西日本最大だ。

精神病院がどれ程の莫大な利益を生み出すものかは、ちょっとした知識人達の常識である。
老人性痴呆症、脳梗塞での後遺症、アルコール依存症、原因不明の二重人格、多重人格、
生活保護者、統合失調症、うつ病、先天性脳疾患、思春期疾患障害、そして双極性感情障害。

現代社会のシステムは多くの精神疾患患者を作り出す。
精神病患者は折れ線グラフの二次方程式によるY軸を限りなく上昇させて来るのだから、
利益目的の理事長さん方は患者不在の経費削減と、
囲い込んだ老人施設と障害者施設により
患者は一生涯利益対象の道具とされることから抜け出すことは不可能なのだ。



マンモス精神病院 創立

昭和35年9月
病床数
精神療養病棟(I) 360床
精神科急性期治療病棟1 60床
合併症治療病棟      125床
一般精神病棟        240床

診療科目 

精神科:神経科:心療内科:内科:皮膚科:歯科

施設面積
186,660.17m2

基準許可 
精神科デイケア・デイナイトケア(大規模)
精神科作業療法
精神科訪問看護
薬剤管理指導料
精神療養病棟1
精神科急性期治療病棟入院料1
療養環境加算
新看護II群・入院基本料3:
夜間勤務等看護加算(3,4)
特別管理給食(入院時食事療法I.適時適温.食堂)
補綴物維持管理
歯周疾患継続治療診断料
ペースメーカー移植術
医療安全管理体制
褥瘡対策体制
精神科地域移行加算

基本理念
偽善でしかない患者第一主義 

基本方針
挨拶と笑顔をもって皆様(患者・家族)に接します。
疾病や治療に対して十分な説明と同意に基づき、患者本位の医療を提供します。
患者の権利を認識し、尊重します。
地域における責務を認識し、開かれた病院を目指します。
職員研修を行い、常に研鑽に努めます。
健全な病院経営に努めます。
患者の社会復帰に努めます。

どれも此れも全くの嘘っぱち。
此れだけの患者に対して看護スタッフが余りにも足りない。
Dr.数もネーベンを含めてもまるで不足している。

こんなマンモス病院では看護師は理事長の政策道理に動くサラリーマンだろうし
Dr.達も診察も出来ずに挨拶程度で館内を回り大量の薬の処方を利益の為に処方するシステムだ。

【患者の権利と責任】
患者には、闘病の主体者として、以下の権利と責任があります。

知る権利

診療に関することについて納得できるまで説明を受ける権利。

成り立つわけがない。
こんな極度の人不足でそんな時間を割く奴なんて0%だと断言する。

自己決定権

納得できるまで説明を受けたのち医療従事者の提案する診療計画などを自分で決定する権利

ふざけるな。
説明も受けられずに医療従事者からの一方的な強制力で
患者を縛りあげ、抵抗すれば直ぐ筋注だろう。

プライバシ-に関する権利

個人情報やプライバシ-を保護される権利

大学病院などのネーベンDr.達の多くは
自分たちの病院に戻って噂話に花を咲かせて居る事くらい、知ってるぜ。

学習権

病気やその療養方法および保健・予防について学習する権利

質の悪いサラリーマンで誰がそんなことを教えてくれるんだ。
なんの説明会もサークルだって見当たらないぞ。

受療権

いつでも、必要かつ十分な医療サ-ビスを人としてふさわしいやり方で受ける権利

金儲けの道具だろ。
人として見るどころか人権無視のキチガイ扱いによる暴挙黙認実行権支配と翻訳できる。

参加と協同

患者自らが、医療従事者とともに力をあわせてこれらの権利を守り発展させる責任をあわせて、
これらの権利を守り発展させる責任
  1・ 常に研鑽に努めます
  2・ 健全な病院経営に努めます

笑えるね。既に想像がつくんだ。
どんなに卑劣な担当医が俺に着くか。
担当看護師にどんな優秀なサラリーマンが担当になるか。

俺は極めて重症な精神病患者として
緊急措置入院命令で此処に隔離されるのだから。


丘の上の病院とはまるで違う世界のようだ。
長崎県は何故、俺をここへ連れ込んだのか。
長崎警察署から、かなり重症で危険な患者として検討されたのだろう。



決して権力や暴力には屈しない。
不正を憎み、正義を尊ぶ。
俺の残されたアイディンティティーは 正義 の証明と、
それによる  への確認と記録だ。




正義の為なら何時でも死ねる。
卓上論より、実行あるのみ。
ちゃちな哲学より鼓動の高鳴りを求める。
自己美化より自己戒めに美徳を感じる。
他者の目より現実を変えてゆく事がリアリストだ。
経験は明日へ繋がる基礎に活かす。
群れるより人を操作する方が目的を具現化できる。
多くの犠牲のもとにだけ自己犠牲は行われる。
悩んだり起死念慮に囚われても命は大義に奉納する。
誰かの役に立つことは誰かを傷つける事と覚悟する。
不治の病は一つの個性だ。
個性を最大限に利用する。
自分は自分を愛している。
生命の輝きは個体として消滅してゆく
故に、一瞬一瞬を宇宙の構成物質の 意志 として生きてゆく。



自分はそこにだけ存在する。






【C3病棟@】闘病記より抜粋



風 蘭
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