以前、私は関西ローカルの某ラジオ番組の法律相談コーナーの

一部門を担当していたことがあり、身近な法律紛争についての相談案件を目にする機会が

多々ありました。

色々な種類の相談がありましたが、お金や家族関係のトラブル、隣近所のトラブルのほか、

ペットに関するトラブルの相談が多く寄せられていたように記憶しています。

その中で、今日はペットによる事故・損害について、軽くお話させて頂きます。


Q ペットの咬みつき事故、鳴き声・悪臭等のトラブルが起きたら
  どうすればいいか



1 民事での損害賠償問題の原則
 
 ペットの咬みつき事故や、鳴き声が異常にうるさい・異常な悪臭がただよって困っている、

等の事情により、何らかの損害が発生した場合には、ペットの飼い主に対して

損害賠償が可能です(民法718条)

 この場合、被害者は、①自分が受けた損害を立証し、②損害を与えた動物が加害者の

ペットであることを立証すれば、賠償請求が認められます。

 これに対し、加害者(つまりは飼い主)側は、自分が飼い主として

相当(十分)な注意を尽くしたことを立証すれば、賠償責任を免れることができます。

 しかし、この免責について裁判所は厳格に捉えていて、裁判例上、

きわめて認められにくいものとなっています。

 つまり、ペットが他人に損害を与えた場合(特に人を傷つけた場合、

よほどの事情が無い限り、賠償の責任を覚悟してください



2 事故が起きたとき、被害者側が調達すべき証拠

 ① 当該動物が、飼い主のペットであることを示す証拠
  (※ まれに飼い主が責任を逃れるために、自分のペットではないと
    しらばっくれることがあるため)
  
  ・ 事故状況の写真、飼い主が紐などでペットをつないでいた写真など

  ・ 当該動物が飼い主のペットであることを証言するの周辺住民の陳述書

 ② 動物による被害の内容を示す証拠
  
  ・ 診断書、診療報酬明細書

  ・ (鳴き声被害の場合)録音テープ、ビデオテープ
  
  ・ (悪臭被害の場合) 臭気測定器の結果

3 事故が起きたとき、加害者側が調達すべき証拠

 ① 自分が飼い主として十分な注意を払ったことを証明する証拠
   ( ※ 裁判例上、動物の種類・年齢、動物の性格、動物の加害前歴、しつけや訓練
     保管態様、被害者の対応等を考慮して、注意義務違反かが判断される)
 
  ・ 当該動物が一般的に有する性格を示す文献
   (この犬種は一般的に大人しい・荒々しい性格を有する等)

  ・ 当該動物が有していた性格について、飼い主の周辺住民の証言

  ・ 当該動物を飼育していた普段の状況を示す写真、ビデオ
  
  ・ 当該動物を管理していた際につかっていたリードや鉄鎖、飼育箱など
 
 ② 被害者側の過失を証明する証拠
    (これを提示することで、過失相殺を主張し、賠償額の減額を主張します)
 
  ・ 被害者側の事故時の行動の証言
   (飼い主による証言、できれば目撃者の証言) 
   (※ 例えば被害者がペットへ軽率な接近をした、ペットを挑発した等)


4 その他、行政に対してとるべき手続   
 
 ① 犬に咬まれたとき
   
   ・咬まれた被害者が、
   ・最寄の保健所に、
   ・事故後なるべく早く
   ・犬によるこう傷被害届
(保健所でもらえます)を
    提出する
   ・届出の際に必要なのは 被害者の印鑑 です
  ※ この届出は義務ではないが、これが出されないと
    咬んだ犬に対して狂犬病検査を行うことができません。
    加害者・被害者 双方のためにも 被害届の提出が望ましいです。

 ② 飼い犬が他人を咬んでしまったとき
   
   ・咬んだ犬を飼っている飼い主が、
   ・最寄の保健所に
   ・事故後24時間以内に(自治体によって異なります)
   ・事故発生届出書
(保健所でもらえます)を
   提出する
   ・持参物は特に無いが、犬の登録番号を書かなければならないので
    鑑札や狂犬病予防注射証明書などを用意しておくと良いです。
  ※ ちなみに、この届出は義務です

   さらに、上記届出に加え
    ・咬んだ犬を飼っている飼い主が、
   ・最寄の動物病院に
   ・事故後48時間以内に
   ・獣医師に狂犬病の検診をしてもらい、
    その検診証明書を最寄の保健所と被害者に渡さなければいけません

  ※ ちなみに、この届出も義務です


なお、麻生行政書士事務所は、上記の証拠収集のお手伝いや
賠償額の算定、行政への届出手続も承っています
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