カナリアの声が響く部屋で

煙草の煙を吐き、起き上がる男。

「行ってくるよ」の挨拶がわりに

鳥籠を札束で撫で

鏡の前でコートの襟をたて

帽子の縁を指で整えると

孤独な仕事人のできあがり。

ナイトクラブでターゲットを射殺し

廊下に出たところで

黒人ピアニストと鉢合わせ。

目と目が合う。

女は白手袋をはずす男を凝視。

男が何をしてきたか察するが騒がない。

男は無言で立ち去った。

面通しで再び目が合う2人。

女は男から目を逸らさずに断言する。

「犯人は彼ではありません」

 

 

サムライ

ジャン=ピエール・メルヴィル

1967年

アラン・ドロン

ナタリー・ドロン

カティ・ロジェ

 

 

  男と女、無言で通じる

私がぐっときた場面は、

警察が容疑者を並ばせ

首実検をする瞬間です。

殺し屋とピアニストが

目と目でさぐりあう。

この一瞬のシンパシー(共鳴)にドキッ。

無表情と無言で通じあう

言葉では表せない独特な感覚が胸アツです。

殺し屋ジェフは目撃証人に尋ねる。

「なぜ俺を助けた?

警察が嫌だからか?

サツに協力したくないから?」

女は答えない。

依頼人の一味だからという

単純な理由だけではありません。

目撃した自分を消さずに見逃した男。

関係ない人間を巻き込まない

プロの流儀を読み取ったから。

 

 

  感想

冒頭から10分経過して

主人公のがわかる。

 

恋人ラグランジュが「ジェフ?」

と声をかけるまで

無言で物語が進みますラブ

 

男は駐車中の車に乗り込むと

鍵束から鍵をぬき、

エンジンをかけはじめる。

周囲を警戒しつつも焦らない。

4本試すが、失敗。

しかし、まだ余裕をみせる。

5本目で車が動き出した。

車をなじみの修理工に預けると

手慣れた様子で車のナンバーを

つけ替えた。

車証をうけとると、

指をパチンと鳴らし催促する。

(おい、早く渡せ)

 

(またやるのかね?

やれやれ、、しょうがねぇな)

 

修理工は渋々拳銃を手渡す。

台詞なしで会話が聞こえる見事な脚本!!!!

ジェフは仕事を終えるが

警察に目をつけられ、

刺客に命を狙われる。

ここから

やり手の警部とジェフの

頭脳戦が見ごたえ抜群!

この警部さんはマイホームパパ。

デスクに置かれた子供の写真

強調する憎いカメラワーク。

仕事ではチームを動かす司令塔

つまり

一匹狼ジェフとは真逆の人物

警部と殺し屋は対照的なんです。

でも、双方ともにキレ者キラキラ

警部はジェフの恋人ラグランジュを

ゆさぶりにかかる。

「コールガールの商売を見逃してやる。

そのかわり奴のアリバイ証言を変えろ」

「ジェフが浮気している」と囁いたり、

おだてたり、脅したり、

あの手この手で迫る。

しかし、女は裏切らない。

殺し屋に仁義があるように

裏家業で生きる2人の女性

ラグランジュとバレリーにも仁義がある。

野暮なことは口にせず

なにもかも折り込みずみで

口を閉ざすのだ。

に警部は盗聴器を仕掛ける。

だが鳥の異変に気づいたジェフ。

このカナリアも女の子かな?

鳥のおかげで盗聴器を発見。

警部の疑惑は確信に変わる。

その一方で

ジェフの腕前に舌をまく。

の手は無線機リレー

年齢性別バラバラな捜査員が

地下鉄の各駅へ配備され、

出口ごとに待ち構える。

ジェフは用心深く

張りめぐらされた包囲網を

駅から駅へと進んでいく。

見失うまいとする捜査員を

大胆にふりきり

最後の仕事に取り掛かる。

馴染みの修理工から

「これが最後だぞ」と言われ

「わかってる」と答え、

自宅を出る際、ふりかえる。

カナリアをみつめ、

無言の「サヨナラ」

恋人に別れを告げ

彼女の姿を瞳に焼き付ける。

そしてナイトクラブへ。

クロークの女性に帽子を渡す。

受け取り札はカウンターに置く。

二度と帽子をかぶることはないのだ。


バーカウンターへ静かに近づくと

バーテンの前で白い手袋を取り出し

見せつける。

バーテンの顔に緊張がはしる。

ジェフは演奏中のバレリーの元へ。

自分と同じく仲間に裏切られた女性を

見つめる瞳は優しい。

微笑み返すバレリー。

そして、時はきた。

サムライは

恩を返すことで仁義をはたす。

 

俺は絶対に負けない
といった彼の言葉通りの結末に

しびれます。

 

たとえ命を散らしても負けではない。

なぜなら、

流儀を貫く精神は誰にも奪えないから。

彼の意志を見抜いたのは

逮捕に執念を燃やした警部、

その人だった。