お伽話は何のためにある?

イギリスの文学博士アリシアは

トルコの講演会で語りはじめた。

 

    

人が物語を生み出したのは

 

病、天災など自然現象を

神や魔法の仕業と思うことで

不安から心を守ってきたから。

 

でも、今は科学がある。

 

いずれ物語は科学にとってかわられ

神や魔法は役目を終えるでしょう

 

次の瞬間、

博士は幻覚に襲われ失神

 

翌朝、現地で購入したガラス瓶から

魔人(ジン)が飛び出した。

「貴女の3つの願いを叶えよう」

「特にないわ。

もし私が願いごとを

しなければどうなるの?

「…なんだって?

 

 

アラビアンナイト

三千年の願い

ジョージ・ミラー監督

2022年

ティルダ・スウィントン

イドリス・エルバ

 

スリルと冒険と恋のSF映画

ではありません。

精神性や哲学が織り込まれた

美しいファンタジーです。

つらい時、寂しいとき、

人は自らの想像力で心を癒します。

他人には見えなくても

心に実在するイマジナリーフレンド。

(作中では魔人)

子どもの空想と言われるけど、

むしろ大人に必要かもしれません。

主人公が魔人との交流で

愛とはなにか?に気づく物語です。

 

 

  感想

バツ1独身の文学博士アリシア。

子どもの頃、

イマジナリーフレンドがいたが

成長するとそんなことを考える自分が

バカに思えて…葬ってしまった。

今は、物語に描かれる人の真理

研究している。

だけど

現実社会に溶け込めない。

 

周囲の雑音や電波にさらされると

一日がおわる頃にはぐったり。

心穏やかに過ごしたいのに

ささいな人の言動にイラつく。

ストレスから

頭痛と喘息発作に見舞われることも。

一度、結婚したが

互いに気持ちが離れ、離婚。

夫の思い出を段ボール箱へ封印した。

それ以来、

孤独を選んだ彼女は、

自由気ままなひとり旅を謳歌。

 

面倒な人間関係を断つ生活が

最高の幸福と満足している。

 

なのに、何かが足りない。

そんな時だった。

魔人が現れたのは…。

彼は言う。

 

「私は瓶に閉じ込められた時、

自分はここにいるのが最高!

望んだ生活なんだ…って

思いこもうとした。

でも本心は違った。

あなたも本当は

望んでいるものがあるのでは?

瓶から解放してくれたお礼に

3つの願いを叶えよう」

 

しかし、アリシアは用心深い。

 

「私は童話の専門家よ。

3つの願いだなんて危険だわ。

欲につけこまれて願えば最後、

たいてい破滅するものよ。

バッドエンドにきまってる。

私、別に欲しい物はないし。

人生を変えたくない

 

 

そんな彼女の心を動かしたのは

魔人が愛した女性の話。

 

ゼフィールという天才少女が

老人に嫁がされ、籠の鳥になった。

彼女はアリシアと同じ想像力豊か。

ダヴィンチのような発想と

情熱を持つ才女だった。


自由と対等な会話を求めるのも

アリシアと同じ。

没頭すると膝を小刻みにゆらす

貧乏ゆすりのクセ

アリシアと同じ。

そして、

所有者(夫)からの解放

という望みもアリシアと同じ。

魔人はゼフィールの願いを叶え

歴史、科学、自然、数学、詩、語学、哲学

あらゆる知識を彼女に与えた。

ガラス瓶に保存し、

知のコレクションが増えていく。

魔人は

学問の壁に悩むゼフィールを

笑顔にするたび、喜びを味わった。

やがて彼女を愛するようになり、

自分の自由より、

彼女の幸せを願うようになった。

 

ずっとそばにいたい。

 

ところが、

彼女の知への探求は天井知らず。

 

究極の学問の答えが欲しい!

 

3番目の願いを口にしようとする。

 

だが、彼女の言葉を遮る魔人。

願いを叶えてしまえば、

別れがやってくるからだ。

 

「私の意志を拒否するなんて

結局、あんたも夫と同じ。

エゴイストだ!」

激怒したゼフィールは

「魔人に出会わなければよかった」

と、忘却を望んだ。

アリシアは魔人の話に魅せられ、

愛の深さに唾を飲み込み、

優しい表情になる。

そして、ついに願う

その願いとは?

魔人との暮らしで

少しずつ変わっていくアリシア。

「どんなに科学が発達しても

人はすぐ恐怖とパニックになる。

平和を望んでいても

憎しみ打ち負かす。

いつまでたっても同じなのはなぜ?」

「それは人として自然なことだよ。

矛盾が人間だ。

その矛盾を秘めた人間は素晴らしい。

だから君はそのままでいなさい」

ある日、アリシアは気づく。

魔人が弱っていることに。

私のために無理をさせてしまった。

彼女は最後にどんな願いをするのか?

果たして2人の関係は?

彼女流の幸せのかたちとは?

 

大人の哲学ファンタジーでした。