「これ、うちのせがれです。

これからはこいつが配達をするので

よろしく」

 

郵便配達人を引退した父親は

引継ぎと見守りをかねて

息子の初仕事へ犬と同行する。

 

広大な棚田、鮮やかな木々の緑、

燃えるように赤い夕焼け、

淀みなく流れる大きな川。

 

コップの音がカランカランと

風鈴のように響き、

足音がザクッザクッと地面を踏みしめる。

美しい自然の中、2人は静かに歩いていく。

 

 

 

山の郵便配達

フォ・ジェンチイ監督

1999年

トン・ルーチュン

リウ・イエ

 

娘の830本をこえる映画感想の中で

彼女が大学生の頃に書いた

「アラビアのロレンス」と

「山の郵便配達」が私のお気に入り。

近々、BSで放映されるので楽しみです♪

 

 

  娘の感想

父は願う。

 

「自分と同じように

息子にも多くの人と

良い関係を築いてほしい」

 

息子にとっては出会い、

父にとっては別れの2泊3日。

盲目のおばあさん、

新聞記者に憧れる少年、

可憐な少女。

郵便配達中、様々な人との交流を通し

父が皆から慕われていることを

初めて知る息子。

「父は村にとって

なくてはならない人なんだ」



幼い頃から父は家におらず、

”父さん”と呼んだことさえない。

 

叱られたことはないのに、

父の存在を遠く感じ恐れていた。

 

そんな息子と父の心の距離が

縮まっていく。

 

その様子が素敵です。

「父もこうして山を歩きながら

家族のことを考えていたはずだ」

印象的なのは川を歩いて渡る場面。


息子が足の悪い父を気遣い

背負って渡ることに。

息子が小さかった頃、

肩車をして歩いたことを思い出し

涙ぐむ父。

 

息子の背中を見て

「こいつも大きくなったな…」と

しみじみ想うお父さんの姿に

グッときました。


「道は自分の足で歩け。

楽をするなんてもってのほかだ」
 

「これだけは守れよ。

愚痴だけはこぼすな」
 

「考えることなしに人生の喜びはない」


たくさんのことを教えてくれた父。

2泊3日の郵便配達を通して、

2人は本物の親子になれたんだなぁ。

これで息子も独り立ちでき、

安心して任せられる。

「次男坊…

あいつ、”父さん”って言ったぞ!」