なにやら不穏な音がすると思ったら

鼓動で。
女性の叫び声がすると思ったら

お母さんで。
もしかして誰か殺されてる?と思ったら

胎児目線の出産シーンだった。
ホラーな出産って初めて見たのに、

なぜかすごく腑に落ちて笑った。
この映画、絶対好きだ

確信してしまうオープニング。

 

 

 

ボーはおそれている

アリ・アスター監督

2023年

ホアキン・フェニックス

 

娘の映画感想です。

 

いつも劇場で一人鑑賞した後、

カフェでゆっくり感想を書くのが

彼女の至福の時間。

 

  はじめてのアリアスター監督

 

「どうせすかした映画を撮る人だろう」

 

と、勘違いしていた。

 

とんでもない!

熱い想いが溢れて止まらない、

ウディアレンやマイクミルズみたいな人で

驚いた。

 

お母さんに捧げる愛の手紙みたいな映画。

 

「私マザコンだよ」って

堂々と宣言してるようでその潔さが恰好良いラブ

コソコソしてない監督って、いいな。

本音をぶつける場面なんて

ラブレターを読みあっているようで、

赤の他人の私が見て大丈夫なやつ?

と、こそばゆくなってしまう。

 

監督が

「ママ、今回の自信作!見てみて~」

って招待するのも頷ける。

 

もしもイマイチだったら

「みないで!」って隠すもんね。

私も自分で納得できる何かが完成すると

「見てみて~」

って悔しいけど母に見せたくなるから。

 

 

  印象的なビジュアル

 

実家近くの色褪せた立て看板と花壇は

「ツインピークス」すぎるし、

 

半開きで震えるエレベーターのドアは

「イレイザーヘッド」すぎて愛おしい。

 

よろめきながら豪邸を去っていくボーは

「ナイトオブザリビングデッド」さながら

すごくよかった。

 

  娘の感想

 

恐る恐る蓋を開けてみると、

ホラー仕立ての「東京物語」だった。

 


笠智衆なら

「若者には若者の生活がある。

わしらも昔はそうじゃった」

と縁側でまどろむところだ。

 

 

ボーのママは

「あのときもあのときも、

あなたは私の愛に応えてくれなかったわね」

と激しく息子をなじる。

「他の子と違って、

あなたは私の母乳を飲んでくれなかったじゃない」


「誕生日プレゼントに毎年同じCDばかり

贈ってくるなんてどういうつもり?」


「挙句、家の鍵をなくしたなんて

嘘をついて実家に寄り付かない。
ママのことを傷つけないと

あれほど誓ったのに、どうしてよ!」

私が注いだ分の愛

あなたも私に注いでよ、

なんで私にもっと時間を費やしてくれないの?

 

と不満が爆発する一方、

 

息子を無条件で愛する

母親でありたいと願うママ。


息子はそんな母の愛に応えたい

応えなきゃと思う半面、

いちいちうっとうしいな~。

ほっといてくれよ~。

って、つい本音が態度に表れる。

そんな自分がうしろめたい。


親も子も相反する想いに悩まされる。

お互いに

愛があまりにも深すぎるがゆえに

自分を悩ませる相手のことが

憎くて憎くて殺してしまう。

母にとって息子は死ぬまで息子だし、

息子にとって母は死ぬまで母親。

不仲のようにみえても

ゆるぎない立ち位置に君臨している。

それはボーが胸ポケット

そっとしまった白い母子像のように

割れてもまた接着剤で

つなぎ合わすことができる

安堵と苦しみが入りまじった特別な関係。

愛してるから鬱陶しい、

それが親子。

 

  好きな場面は…

ボーのアタフタ加減が最高!

焦りすぎてうっかり家の鍵と鞄を盗まれ、

「いったん落ちつこ!」

 

と薬を口に含んだ瞬間、

 

「今度は水がねえ!

必ず水を一緒に飲めって

医者に言われとるんやった!

副作用ググったら

水なしじゃ死ぬって書いてある!

でも一歩外に出たら

チンピラどもに殺されかねない!

でも水ーーー!


必死のパッチで水を買いに行くものの、

なぜかクレジットカードを止められており、

 

チンピラたちがボーの部屋になだれこみ

暴飲暴食大暴れ。

 

なんとか部屋に戻れたと思ったら、

今度は風呂の天井に見知らぬ男が!!

 

驚いて全裸で家飛び出したら

同じく全裸の男にめった刺しにされる

 

という鬼畜展開。

 

もう笑いが止まらない。
風刺エンタメ、おもろいなぁ!

外の世界も

家の中も、

親の存在も、

自分の将来もとにかく全部が怖くて

脳内で逃げまわる姿、かわいい(≧∇≦)

こうだったらよかったのにという

過去の理想から

 

こうであってほしいという

未来の理想を経て

 

現在にもどってくるロードムービー。

面白かった(((o(*゚▽゚*)o)))