源氏の年上の愛人、六条御息所は

シングルマザー。

無邪気な娘の言葉が母の胸に刺さる。

「私、光の君がお父様に

なってくれるのかと思っていたわ」

かつて愛してくれた源氏が葵の上と結婚。

しかも新妻に逢うために、私の家の前を通るのだ。

「お母様はね、

あの方の幸せを祈っているのよ」

娘の髪を梳かしながら、

平静を装い、娘へ言い聞かせるが

櫛を握る手につい力が入る。

娘は振り返る。

そして、母の辛さに気づく。

 

新源氏物語

森一生監督

1961年

市川雷蔵

寿美花代

若尾文子

川崎敬三

中田康子

 

今回は、

六条御息所(愛人))VS葵の上(正妻)

に注目します。

 

六条御息所は教養ある思慮深い人。

 

ところが

年下の若い源氏に焦がれ、

生霊となってライバルを襲います。

 

自分ではコントロールできないほど

追い詰められる彼女。

 

同情するファンも多く

人気が高いキャラクターです。

 

もちろん、

私も彼女の悲しみと孤独に共感!

 

  感想

「結婚したのは

間違いだったかも」

 

光源氏は打ち解けない正妻に手を焼く。

 

なぜ、葵の上は冷淡なのか?

葵の上を演じる若尾文子さんが

ツンとすました表情の下に

ざわつく心理を秘めています。

婚儀だというのに、

新郎はどこか上の空。

「所詮、

私たちは愛のない政略結婚。

他の女性たちと違って

私は簡単になびくものか。

軽々しい女じゃないのよ。

私だけを愛してくれなくちゃ…」

そんな彼女の心を知らない源氏。

 

結婚を後悔し、

他所で気を紛らわせようとします。

 

久しぶりに六条御息所をたずねると

 

彼女は以前にも増して源氏への想いが募る。

「彼が他の女といるのを

想像しただけで

腹わたが煮えくり返る。

死ぬほど会いたい」

 

鏡の前で黒髪をすく手元に

情念が込められています。

やがて、

葵の上と藤壺が同時に妊娠。

 

葵の上はチクリと嫌味を言う。

「藤壺さまもご懐妊されたそうですね。

誰が父親かわかりませんけど?」

「あの方が懐妊された?」


このあたりのネチネチ演技が、

あやや(若尾文子)っぽくて、良いなぁラブ

しかし、光源氏の一言で

夫婦の距離が縮まります。

 

「葵の上、

私のことを憎んでもいいから

嫌わないでおくれ。

憎むのは返せるけど、嫌われたら終わりだからね」

 

たしかに

憎し恋しは、心の中で相手の存在が強い。

挽回の余地が十分あるわけです。

 

こういう言い方をされると、

女は弱いですねぇ。

 

源氏は畳みかけます。

 

「私は若くて未熟だから、

あなたの望む清潔な夫になるには

時間がかかる。すまない。

だけど、きっと君に相応しい夫になる。

子どもが生まれたら幸せな家庭を築こう」

 

さすがの葵の上も気持ちが動きます。

表情がふっと緩み、

態度が軟化していく。

ようやく心が通い始め

夫婦の絆が強く結ばれていき

光源氏の足が愛人から遠のきます。

一方、

六条御息所と娘は

葵祭に参列する光源氏を一目みようと

牛車で向かいます。

ところが!!!!

 

後からきた葵の上の牛車と鉢合わせ!

 

しかも、場所取り争いへ発展炎

 

「観覧場所を譲れ。源氏の奥方だぞ」

 

「後からきて譲れとは厚かましい」

 

従者たちが乱闘騒ぎを起こし、

六条の車と入れ替わり、

葵の上の牛車が前へでる。

この屈辱。

その直後、

牛車の御簾をあげて、

顔をのぞかせる葵の上。

行列にでている光源氏が

馬上から妻へ挨拶を返す。

そして、

六条には気づかず、通り過ぎていく。

 

「あの方は私に気づかなった」

 

ショックを隠し切れない六条御息所。

 

葵の上への憎悪の炎が一気に燃え上がる。

 

源氏の子を宿している女、許せない。

呪ってやる。

もともと思慮深く、知的で誇り高い

彼女が生霊になるほどの

愛と憎しみ。

 

眠れない夜がつづき、

魂が肉体を離れ、

妊婦 葵の上を襲いはじめます。

物の怪に苦しむ葵の上。

祈祷でお祓いをすると

 

「苦しい、祈祷をやめさせて」

 

息も絶え絶えに訴える妻。

 

が、その声は葵ではない。

 

聞き覚えのある、あのひとの声。

 

「六条御息所?!」

 

そして、葵の上は還らぬ人に。

 

夫婦としてこれからという時に

逝ってしまった。

幸せとは儚いもの。

 

このように

幾人もの女性と出逢い、別れを通して

人の世の美しさ命の儚さを

知る光源氏。

 

他にも

末摘花、朧月夜、若紫など登場し

タイプの違う姫たちが雅な世界を彩る

眼福の1本ですキラキラ