芸術家の娘ベルは不思議に思う。

なぜ父は母の話をしないの?

野獣との旅理由が明らかになる。

野獣が魔法の本を開いた。

「ベル、君が行きたい場所を一つだけ

思い浮かべてごらん。心で見るのだ」

頁に手をのせ父のした場所を念じる。

”家族三人で暮らした水車小屋へ”

思い出の詰まった部屋の中で

野獣が防護マスクに気づいた。

なぜこんなものが?!

当時パリを襲った恐ろしい病ペストだ!!

ベルの心に見えてきたのは

愛妻と引き裂かれた父の苦しみ

幼い自分を守ってくれた父の愛

そして失ってもなお

生き続ける母への愛だった。

 

 

美女と野獣

ビル・コンドン監督

2017年

エマ・ワトソン

ダン・スティーヴンス

クリス・エヴァンズ

ケヴィン・クライン

 

想像力とは、

目にみえない愛をみることができる

説明しなくても共感できる

優れた能力だと私は思います。

今作はそれを教えてくれるファンタジー。

 

 

  喪失ベースの物語

母の不在を強調する演出が新鮮だなぁ💓

 

妻亡き後、

息子を厳しく教育した野獣の父

亡き妻の分まで

娘へ愛情を注いだベルの父

王子が持つ優しさが影をひそめ

心の空洞を道楽で埋めていた。

彼の孤独を見て見ぬふりをした

お城の人々も集団責任のように

皆一斉に呪いをかけられてしまう。

呪いをとく唯一の鍵は愛し愛されること。

「秘密の花園」の主人、

「ハイジ」にでてくるクララの父、

「リトルダンサー」のビリーの父、

「サウンドオブミュージック」の大佐もそうだけど

妻を失った夫が仕事に打ち込んだり、

旅行やパーティで心を埋めるお話って多いです。

喪失感が根底にある話って

深みがあって

魅力的。

 

  感想

最後の花びらが落ちたらどうなるの?

助けてあげたい。何か方法はないの?

ベルは野獣と召使たちを気の毒に思い

運命を変える手助けをしたいと考えます。

でも、ポット夫人、ルミエールたちは

その方法を口にしません。

真実の愛は、

同情や施しで育むものではないからです。

彼らはベルに希望を託し支えながら、

そっと見守り応援する。それも愛ですね。

彼女の空腹を満たし

心を和ませるおもてなし。


ユーモアまじりの楽しい口上、

フランス流で華やかに

ムーランルージュ風のダンス、

徐々に野獣とベルが変わっていきます。

愛が芽生えると目に映るものが変わる。

野獣には興味が持てなかった書斎が

大切な場所になっていく。

ベルの瞳が宝(本)の山に輝くのをみて

バカにしていた恋の小説を読みはじめる。

これまで目に入らなかった雪景色を

しみじみと眺め、感慨にふける。

ベルも変わっていく。

怖いと思っていた野獣の眼差しが

優しく温かくみえてくる。

スプーンをおき、

スープ皿を口元へ運ぶ、相手への心くばり。

なんといっても距離が縮まるのは

ダンス!

恭しくおじぎをして

手に手をとって息をあわせる。

愛の歓びを知る。

そして愛の苦しみも味わう。

歓びと苦しみ、

両方を味わうことが本当の

愛が深ければ深いほど、

失う怖さ、手放す悲しみが強くなる。

ベルの願いを叶えたくて自由を与えてしまう。

きっと戻ってはこないだろう。

 

いや、もしかしたら。。

 

絶望のなかにいても

最後の瞬間まで希望を持ちたい。

彼女が目の前にいなくても

面影で心が癒され

離れているのにそばに感じられる幸せ。

もう会えないかもしれない不安。

その2つを噛みしめる長い長い夜です。

人間性の寿命はあとわずか。

ガストンが村人を先導して城へ乗り込み…

 

ついに最後のひとひらがハラリ。

赤い色がすーっと色あせ朽ちてゆく。

 

最も愛が強くなるのは失う瞬間赤薔薇

 

召使たちも最後の1秒

夫婦の愛、恋愛、友情、親子愛が強くなる。

どの種類の愛でも同じことですね。

失う瞬間、ひときわ輝くキラキラ

 

呪いをかけた本人(魔女)が

要所要所で誘導し、そっとサポートする

彼女流ののスパルタ教育だったんですね。

 

冬がとけ6月を取り戻すラストが素敵でした💓

 

ベルとの思い出の1コマは↓こちらから