「危険を犯して横領するなら
よその女に貢がないで
お父様のためにして頂戴」
詐欺師一家の司令塔パパとママは
会計課にもくりこんだ息子をたしなめる。
一家は、小説家の二号になった娘の部屋へ
転がり込んで優雅に暮らしていた。
メロンをかじりビールを飲み気ままに踊る生活。
たとえ金を返せと押しかけられても
貧乏人をよそおい善良なフリでおとぼけ。
しかし上には上がいた!
母はしたたかな美女の出現に驚嘆。
「あの方はたいしたものですわ。
敵に回すのはよくありませんよ」
しとやかな獣
川島雄三監督
1962年
脚本 新藤兼人
若尾文子
山岡久乃
伊藤雄之助
川畑愛光
浜田ゆう子
小沢昭一
船越英二
ミヤコ蝶々
至福の時間
高野豆腐を炊き洗濯機を回し
娘の仕事着にアイロンあてながら
しとやかな獣を観る幸せ![]()
旧い邦画って新しい![]()
こんなにカッコよくて可笑しいなんて。
ああいえばこういう、こういえばああいう
台詞の掛け合いがドリフのコントみたい![]()
アパートの部屋で繰り広げる
ワンシチュエーションムービーだけど
飽きさせない。
センスあふれるブラックコメディです![]()
鼓の効果と無音の効果
胸のざわつき、心の声は
能の鼓と横笛、拍子木等で表現![]()
ヨォーー!ポンポンポン、ポポン!
かと思えば、
夕焼け空を背にツイストを踊りまくる。
古典と現代の融合。
クセが凄い(笑)
でも、私が好きなカットは無音です。
世渡り上手な彼らが本心をみせる場面です。
突然コメディがシリアスへ急転!
娯楽の隠し味に社会問題がぶち込まれ
イカサマを続ける理由が明らかに。
大黒柱が悲痛な表情で訴えます。
生きぬくために
綺麗ごとなんか言ってられない。
若尾文子演じる女性も同じ。
軽くて滑稽な物語にぴりっと緊張感が走る、
こういう脚本が素晴らしい。
さすが新藤兼人監督の原作脚本!!!
ストーリー展開が匠の技です![]()
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カメラワーク
聞き耳を立てのぞき見する面白さ。
ヒッチコック「裏窓」みたい。
大胆なカメラワークがシャレオツです。
足元から見上げ
天井から見下ろし
壁の上からのぞき、
姉や母が、弟と恋人の会話を盗み聞き。
ドア越し。
カーテンごしに息をひそめる。
蒸し暑さがイイ。
感想
ともかく
生きていくってことは大切よ。
詐欺師一家の長男がぞっこんなのは、
同じ芸能プロに勤める女会計係 幸枝。
「貴方にはお世話になって感謝してるわ。
わかってね。悪く思わないで。
最後は良い印象でお別れしましょう」
虫も殺さぬ清楚な微笑み。
艶やかな瞳と上品な物腰、
甘くねっとりした口ぶりで別れを切り出す。
あやや(若尾文子)の声色にクラクラしちゃう。
男たちからしぼりとれるだけ搾り取り、
5歳の子と自分の城を築く。
用が済めば、黒いカラス(男)を追っ払う。
「旅館をたてて女将になるため
俺を誘惑し利用したってわけか?!」
「あなたのお金を使った証拠なんてないわ。
証拠のない事実なんて空気みたいなもんよ。
みえないのよ(^_-)-☆」
「悪党!」
青年の言葉にふっと笑う幸枝。
「社長さんもあなたのこと、
悪党って呼んでたわよ(ニッコリ)」
長男はぐうの音もでない。
勝負はきまった。ふふ。
煙草に火をつけ、ふっと吐き出す。
嫌悪感を抱く隙を与えない、
気持ち良いほどふてぶてしい。
しかし、貢いでいたのは一人ではなく
社長や、税務署員も彼女の魅力にはまっていた。
恩着せがましい言い分で男は責めたてる。
「お前のために使い込んだんだぞ」
しかし、幸枝は落ち着いて冷や水を浴びせる。
「お前のため、お前のためって言いますけど
奥さんやお子さんを養うため
よその女と浮気するため
たまには事務員をホテルに連れ込むため
みんなご自分のためじゃなかったんですか?
ご自分の?」
「もう部下じゃないんですから
偉そうに言わないでくださいね。
ごきげんよう」
と涼しい顔でぴしゃりと言い切る。
ゆっくり階段をのぼっていく幸枝。
階段をおりていく社長。
右往左往する男たち。
さらに、税務署員がやってきて
うつろな目でアパートの階段を昇っていく…
この話の最も面白いところは
ペテン師たちが誰に敗北するのか?という点。
相手が悪い奴なら手の内が読めるから
痛くも痒くもない。
でも・・・
幸枝を心から信じて愛している善人。
かばおうとする誠実な人によって
足元をすくわれるのです。
相手にされない小者の方がよっぽど危険。
皮肉ですねぇ…私、こういう設定が好き。
サイレンが近づいてくる。
外が騒がしくなり、
何事かと母親がベランダに出る。
見下ろして固まる。
・・・。
そしてゆっくり振り返る。
亭主はいびきをかいてうたた寝。
(ちぇっ。いい気なもんね。
海軍中佐だった自分を
いまだに買いかぶっている貴方。。
家族旅行は行けそうにないわね)
苦々しげに夫をにらむ。
ヨォ~、ポポン!
おあとがよろしいようで。
「太陽がいっぱい」や
「地下室のメロディ」を
思い出すCOOLなラストが最高です。



















































