奇妙な依頼をうけた写真館。

店主たちは金田一耕助を連れ、

荒れ果てた元病院屋敷へ。

扉を開けた途端、悲鳴をあげ腰を抜かした。

「人間の生首だ!」

天井から男の頭部がぶら下がり、

首の下には歌が記された短冊

まるで人間風鈴のよう。

誰が何のためにこんなマネを?

写真・風鈴・2人の娘
名探偵と助手が迫るなか
関係者が次々と消されていく。
 

病院坂の首縊りの家

市川崑監督

1979年

佐久間良子 石坂浩二

草刈正雄 桜田淳子

萩尾みどり あおい輝彦

ピーター 加藤武

横溝正史原作、市川崑監督の映画では
「犬神家の一族」が有名。
レビューしています↓
でもミステリーマニアの中で
ダントツ人気なのが

「悪魔の手毬唄」

「病院坂の首縊りの家」

めてみたときは

家系図の複雑さに混乱しましたが、

主人公の苦悩にスポットライトを当てれば

いたってシンプルなお話

犯人が予想しなかった偶然

思いがけないトリックを生み、

ドラマティックな展開になる面白さ!!

女性編、探偵編の2つに分けて

レビューします。

 

  市川作品は女優が命

市川崑監督の撮る女優さんって

ため息がでるほどお綺麗…


それぞれの年齢の美があり

母娘四代、運命に翻弄される姿を

情趣あふれる映像で描いています。

佐久間さんの凛とした優雅さ。

女性らしい淑やかな所作、

動揺する心を隠し、

微笑みながら警戒心をにじませる顔。

おくれ毛の たおやかさ、

やつれた女性の色気

艶っぽく哀しい演技にうっとりします。

桜田さんが一人二役の難役に挑戦。

清楚で健気な娘と、

我儘で気の強いお嬢さん。

正反対の性格の娘を熱演し、

市松人形のような白塗りが

怪奇映画らしさを盛り上げます。

尾みどりさんの薄幸な女性。

真実を知った瞬間の顔!

なんという美しさでしょうか。

言葉を飲み込む、儚い演技が切ない。

 

  感想

妾の娘、小雪。

本妻の娘、由香利。

2人はまるで一卵性双生児のようです。

腹違いの姉妹にしてはすぎる。

なぜ?

常識を超えた理由がありました。

 

それぞれの母親の過去が

関係しており、終盤で全てが明かされます。

 

悲劇のはじまりは、

山内兄妹の奇妙な復讐計画

 

旅回りのバンドに所属するは、

母(冬子)を自殺に追いやった法眼家へ

なんとしてでも復讐したい。

は兄の熱意に負け、渋々協力します。

その計画とは、一人娘を誘拐し、

薬で意識もうろうとしている間に

花嫁衣裳を着せ、婚礼写真を撮り、

写真をネタに脅すというもの。

金目当てでなく、

屈辱を与えるのが目的

ところが!

予期せぬ事故が起きてしまう。

 

元邸宅にの生首がぶらさがり、

遺書を残し消えてしまう事態へ。

「兄を殺めたのは私です。

後追い自殺をします」

だが弥生夫人は断言する。

「写真の花嫁はうちの子ではありません。

誘拐事件などなかった。

娘の由香利はここにおります」

3日間姿をくらましていた娘を

警察に披露するのです。

不思議なことに小雪の指紋がどこにもない。

小雪の自殺死体はどこへ?

お嬢さんが偽物ではないかと

疑惑の目をむける者

秘密を知り恐喝する者

悪質で欲深いハイエナたち。

彼らは絶妙なタイミングで罠にはめられていく。

もしも娘が入れ替わったとして

母親が気づかぬはずがない。

なぜ不倫相手の子を

本妻がかばうのか?

誰もが首をひねります。

そのを解く鍵は風鈴にありました。

小雪が落とした風鈴を弥生夫人が拾い上げる。

チリンという可憐な音色。

「これは?」

「母の形見です」

内側に刻まれた文字をみて、

夫人の顔色がかわる。

「あぁ、それじゃ冬子さんは。冬子は!」

そのころ金田一耕助は、

南部風鈴の里へ向かっていた。

産院で生まれた赤子に縁起物として

もたせたという風鈴

探偵は、当時の出産日誌をめくり息をのんだ。

そこに記されていた母親の名

じつは5年前、

山内冬子本人もこの地で自分の出自を確かめ、

その足で法眼家へ行ったことが判明。

由香利と鉢合わせになった冬子は、

衝撃をうける。

うちの娘(小雪)とソックリだわ。

驚いて目が離せない。

冬子は確信するのです。
自分と由香利の関係

 

まさか自分がした男性の

この世で一番会いたかった

だったなんて。。

 

冬子の複雑な胸中を知らない由香利。

「父を寝取った盗人!」罵る。

「母を苦しめたくせに会いにくるなんて

さてはお金をゆする気ね?たかりよ!」責める。


何も言い返すことができぬまま、

冬子は人生に絶望し、命を絶ったのでした。

弥生夫人の強い愛情は、
自分と似たような境遇の小雪へ向かいます。

なんとしても庇ってやりたい。

恐喝してくる金の亡者から守るため

機転を利かせていたのでした。

金田一耕助は夫人の身の上に同情し、

大胆な行動を起こします。

それが今作、最大の魅力です。

つづきは、探偵編で。