”旅は道連れ 世は情けと言いますから”
一人旅の学生は、雨宿りで一緒になった
芸人一家に同行する。
が、彼らは村の手前で回り道を選ぶ。
”なぜそっちへ?近道ですか?”
旅芸人は立て札を指さす。
この村入るべからず 物乞い旅芸人
”我々だけなら迂回するけど
学生さんと一緒だから許してもらおう”
一行が進むと村人はジロジロ白い目で睨み
童たちがはやしたてる。
”すみませんね、急いで通りぬけますんで”
一行は頭をさげ腰低く歩みを進める。
学生はそんな彼らと距離を縮めたくて
学生帽を脱ぎ、代わりに鳥打帽をかぶった。
伊豆の踊子
西河克己監督
1974年
山口百恵
三浦友和
中山仁
佐藤友美
田中里代子
有崎由見子
近所で映画上映会がありました。
これからの季節にぴったりの伊豆の風景。
ススキが風に揺れる山道。
秋の草花が彩る山あいの風景。
ただのアイドル映画ではなく
社会派映画ですねぇ。
若者の淡い恋心が美しく切ない。
けれど、それだけじゃありません。
主人公の目を通して、
芸人一家の社会的地位が描かれます。
石川さゆりさん演じる女郎娘の運命。
彼女が亡くなったことを知らず
「おきみちゃぁーん」と叫ぶ踊子。
山にこだまする奥で棺が運ばれていく場面の
切なさがたまりません。
なんといってもラストカットですね。
胸にズーンときました。
ストップモーションからの静止画!
ロマンティックな感傷に浸っていた私の頬を
平手打ちする演出。。
純粋な少女の行く末が危ぶまれる
残酷なショットにやられました。
野の花がいまにもむしり取られそうで。。
”現実をちゃんと見ろ”
そんなメッセージを叩きつけるように
終の文字がスクリーンに浮かびます。
このカットのおかげで
甘いだけじゃない名作になったんだな
と思いました。
感想
”あの手合いの連中には
かかわらん方がええですよ。
気をつけなさい”
天城峠の茶屋のお婆さんは
ひとり旅をする学生(川島)に忠告する。
行商人も冷やかす。
”旦那も物好きだねぇ。
旅芸人なんかと…”
誰もが旅芸人を野良犬をみるように見下し
汚らわしいと避ける。
でも、学生は花のように笑う
澄んだ瞳の踊子から目が離せない。
しかし、誰も踊りなんか見ちゃいない。
腕をのばす男たち。
向かい宿の二階から
学生は身の乗り出し座敷をのぞきこむ。
踊子は、からんでくる酔っ払いを
なんとかかわそうと困り顔。
学生が思わず腰を浮かし、
ぐっと身を乗り出した拍子に
バランスが崩れた。
あっ。
手で掴んだ灯りが落下。
ガッシャーン。
宿の人に見つかりそうになり、ヒヤリ。
ひょっとしたら今夜、
踊子が男に汚されてしまうのかと
気が気ではない。
眠れない。
まんじりともせず夜が明け、
朝湯に浸かる。
下の方で温泉に浸かる女性たち。
いきなり、踊子が真っ裸のまま、
日向に飛び出してきた!!
大喜びでこちらに手を振っている。
学生は驚き、急に胸のつかえがとれる。
”あぁ、まだ子どもなのだ。
こちらに気づいて天真爛漫に手を振る。
あの娘が身を売るかどうか、
一晩中ヤキモキしたけど、
取り越し苦労だったのだ”
なんだかほっとして
笑いがこみあげてきた。
次第に踊子との距離が近くなる。
五目並べで”書生さんに勝った!”と喜ぶ姿、
水戸黄門読本を読み聞かせすれば、
夢中になって顔が近くなる姿、
傾斜のきつい山を歩けば、
彼のために杖をさがそうと走り回る、
健気に世話をしようとするいじらしさ。
2人の将来を心配する。
兄は「かおるはまだ子供だ。心配ない」と呑気。
でも、女性陣は皆口をそろえます。
(これには私も同感)
”あの子が辛くなる前に引き離さないと。
もう子供じゃない。
これからが一番危ない時期。
娘から女性の変わり目は
身も心も深く傷つけられる時期だから”
たとえ学生さんが善い人でも、
良い人がたくさんいても、
世の中にはどうにもならない
差別がある
厳しい社会で人生を台無しにした女性を
たくさんみてきたお年寄りの言葉は、
重いです。
いよいよ別れのとき。
兄は学生に清涼剤を渡す。
「妹の名前と同じだから」
彼が箱に目をやると『カオール』の文字。
お返しに鳥打帽を兄へ渡す。
踊り子からは
赤い櫛をもらう。
西河監督×百恵ちゃんの他作品は↓

























