美貌の若侍が浮かぬ顔で鼓を打つ。
従妹が代官に見初められたのだ。
里見八犬伝
深作欣二監督
1983年
志穂美悦子
京本政樹
萩原流行
後者の愛をご紹介します。
許されぬ間柄のカップルです。
夜桜の宴に美男美女が一堂に会します。
映え~萌え~がとまらない(笑)
浜路(岡田奈々)と
毛野(志穂美悦子)
信乃(京本政樹)と
妖乃介(萩原流行)。皆さんお綺麗やわぁ
余談になりますが、
私、浜路姫を演じた岡田奈々さんに一目惚れし、
飼ってる子猫に浜路と名づけ
育てたことがあるんですよ
あっという間に
新郎は女刺客に暗殺される。
が、こともあろうに
犬塚信乃(京本政樹)が
曲者の手引きを疑われ、
彼を庇った浜路は父親の手によって
命を落としてしまいます。
信乃の怒りが大爆発!
姫への淡い想いを封印してきたものを…
まさか目の前で失うことになろうとは!
花散らしの嵐のなか、
乱舞のような大立ち回りとなります。
京本さんが深作監督に任された
華麗で迫力のある殺陣
男衆を全滅させ、我に返った信乃は
浜路の遺体が消えたことに気づく。
探していると光が!
手水をのぞきこむと
水の中にぼぅっと輝く珠。
掌の上で孝の文字が浮かび上がる。
親を失い、養父を手にかけた彼にとって、
「親に従い尽くす」
という意味の孝が皮肉です。
さて、
死んだはずの浜路姫の遺体は
どうなったのか?
じつは敵のマッドサイエンティストによって
毒娘に変えられてしまいます。
虫も殺さぬ可憐な姿だが、
吐息、汗、血、すべてが毒。
黒揚羽蝶に息をふぅ~っと吹きかけると
パタリと落ちる。
近づく者を死に追いやる危険なゾンビです。
そうとは知らず、信乃は敵城で浜路と再会。
魔物になった浜路が
長刀を構えニヤリと笑う。
愛する者同士の死闘がはじまります。
もう一組は異形の愛。
毛野(志穂美悦子)と蛇の妖之介(萩原流行)
彼女は両性具有のトランスジェンダー。
映画では
”呪わしい生まれによって天涯孤独の身の上”
”誰からも愛されず誰も愛さず”
という語りで生きづらさを表現します。
半陰茎をもつ蛇と縁があるという設定。
互いに心惹かれるが、
毛野の持つ珠が光を放ち危険を知らせる。
彼女の漢字一文字は、礼=人の道
敵味方である以上、
近づいてはならぬ相手なのです。
このカップルの再会も敵城。
”待っていた”
迎える大蛇 妖之介(萩原流行)
決戦の場が絢爛豪華で、いいんですよねぇ。
クリムトの接吻を思わせる
金色の壁画をバックに闘う2人。
惹かれ合う者同士の闘いって、魅力的。
刀と刀がぶつかりあい、
互いに傷つけていく、
着物を裂かれ、露わになった肌を
恥じらい隠しながら戦う乙女心!
志穂美悦子さんが素敵です。
絵と同じように
2人が重なる相打ちシーンは
音楽も緩急があって
ドラマティックな終焉を盛り上げます。
生きているうちに結ばれない愛って
映画を美しく彩りますねぇ
切なさの美学にうっとり
里見八犬伝の魅力③ へつづきます。