アナは夫の死を乗り越え、

婚約者との結婚を控えていた。

その矢先、

10歳の少年が自宅にやってくる。

「僕だよ。君の夫のショーンだ」

亡き夫の生まれ変わりだという。

「いたずら?頭のおかしな子?」

取り合うつもりはなけれど・・・。

心の中で夫への愛が蘇ってくる。

出会った海、2人だけの秘密、

親戚とのやりとりをなぜ知っているの?

 

記憶の棘

ジョナサン・グレイザー監督

2004年

ニコール・キッドマン

キャメロン・ブライト

ダニー・ヒューストン

ローレン・バコール

(画像お借りしました)

 

スカーレット・ヨハンソン主演

「種の捕食」が見つからず、

今作を手にとったら、

偶然にも同じ監督さんの作品でした。

なんだかちょっと嬉しい音符

 

ニコール・キッドマン VS キャメロン・ブライト

両者一歩もひかない演技対決

圧倒されました。

原題は「Birth」

バースデーケーキ、姉の出産、輪廻転生。

誕生にかかわる場面がでてきます。

邦題は「記憶の棘」

物語の中心をずばり言い当てた

文芸的なセンスにときめきましたよ💓

 

 

を握る女をアン・ヘッシュが演じています。

彼女の不可解な行動の謎が明かされるとき

邦題の意味がすーっと腑に落ちますよ。

 

 

感想

本当は一途に愛したかった。

もしも生まれ変わったら

前世で果たせなかった愛を注ぎたい。

 

夫ショーンが少年の姿でもどってきた。

未亡人アナは新しいパートナーと

未来を築く決心をしたばかり。

科学者だった夫は、

魂とか輪廻転生とか、サンタも信じていなかった。

 

その彼が「生まれ変わった」なんて。

信じられない。

演奏会のシーンが秀逸です。

「サイコ」のジャネット・リーを思い出しました。

車の運転席でハンドルを握り、何もみていない。

彼女の表情の変化から、頭の中がみてとれる。


「記憶の棘」では

客席から正面の舞台を見つめているようで

何もみていない、ニコールキッドマン。

肌の色、かすかな眉の動き、口元、瞳の演技!

脳内がみえる。最大の見せ場ですねぇラブ

 

少年を追い返した光景が脳裏に浮かぶ。

腰をかがめ、彼と同じ目線になり、

「ありえない話を聞かされて、傷ついたわ。」

毅然とした態度で言いはなつ。

「会いたくないから、二度と近づかないで」

アナに拒絶された少年は、

膝から崩れ落ち、

気絶。

・・・・!!

少年の様子に心が動く。

もしかして、本当に夫?

まさか、ね。


「ジョゼフと結婚しないでほしい」

少年が書いた手紙。

故人もそう願うかしら?

10年たって吹っ切れたはずなのに、

この気持ち、どうしよう。

はっきりさせたい。

本物かどうか。

あって確かめよう。

そうしよう。

演奏会が耳に入らず、

隣に座る婚約者の囁きも耳に入らず

頭の中は、夫のことでいっぱい。

 

長回し撮影だけど、

セリフは一切ありません。

 

音楽がヒロインの心のゆらぎと

シンクロします。

ザワザワ感、波立つ感じの旋律。

弦楽器の音色が繊細で豊かです。

 

一方、婚約者ジョゼフの心も穏やかではない。

3度目のプロポーズをやっとOKしてくれたのに、

ここで横やりを入れられてたまるか。

彼女を奪われてなるものか。

 

寛容な男でいようと努めていたけれど

苛立ちがエスカレートし、ついに爆発

大勢の前で我を忘れ、少年を追いかける。

乱暴につかみかかり、お尻をたたく。

一同騒然!

家族は2人を引き離す。

アナとジョゼフの距離が離れ、

逆にショーンとの距離が縮まる。

 

 

しかし終盤、

物語は思いもよらない方向へ動きだす。

 

”奥さんにぞっこんで脇目もふらない夫”

 

私が想像していた夫のイメージ像が

覆されるのです。

ショーンの大親友の妻が吐き捨てる。

「貴方はショーンなんかじゃない。

偽物。うそつき」

本物だと気づいてるくせに

絶対に認めようとしません。

なぜか。

「本物の彼ならば、

一番に逢いにくるべきなのは

奥さんじゃなくて、この私でしょう?!」

 

嫉妬にゆがみ、凄い剣幕のクララ。

ショーンの顔に動揺が走る

すっかり忘れていた、都合の悪いこと。

 

触れられると痛む、

トゲのような記憶

 

裏の顔があったのだ。

 

(アナの前から消えなさい。

さもないと・・・)

 

瞳で脅すクララ。

過去を清算できないことを思い知る。

 

さぁ、どうするか。

 

彼なりの愛のかたちを決断する。

ほろ苦く美しい結末

お楽しみくださいね。