「私は人を殺しました」

懺悔室で男が告解をすると、

神父の目が一瞬うろたえる。

頬杖をつく手がかすかに震え、

呼吸を整えながら「つづけなさい」と声をかけた。

少女たちの目撃証言と、元恋人の証言により

警察の疑いの目が神父に向けられる!

しかし聖職者として真実を公表できない。

さぁ、どうすればいいのか?

「私は告白する」

アルフレッド・ヒッチコック監督1953年

モンゴメリー・クリフト、アン・バクスター

(画像お借りしました)

 

ヒッチコック監督作品のなかで

観る機会がなかった1本です。

ようやくテレビ鑑賞できました拍手

ありがとうBSプレミアムお願いピンクハート

 

「ハリーの災難」という映画があるけど、

今作は「神父の災難」です。

メンタル的にさんざんな目に遭いますよ。

 

人妻からの未練に戸惑い、

身に覚えのない不倫を疑われ、

殺人犯を疑われ

裁判にかけられ

誤解した民衆から罵声を浴びせられる。

 

ヒッチコックらしいユーモアは鳴りを潜め、

神の教え己の恐怖の間で

葛藤する神父をモンゴメリークリフトが

セリフに頼ることなく、表情だけで演じます。

 

大好きな「イヴの総て」のアン・バクスターが

元恋人役で出演していたことにビックリでしたびっくり

 

【感想】

隠せば隠すほど、

打ち明けたくなる心理。

犯人も告白する、

犯人の奥さんも告白する、

神父の元恋人も告白する

隠していることを吐き出したい。

 

そんな彼らをたった一人で庇う、

それが神父です。

「最後の晩餐」「十字架」「教会」のカット割り。

人々の罪を肩代わりする、

キリストのイメージと重ねた演出ですねぇ。

戦争を体験し、

神の道を志すローガン神父。

恋や結婚ではなく、

聖職者として生きる道を選んだ身。

人妻から寄せられる恋慕厄介です。

未練の瞳で見つめられても、

何もしてあげられない。
昔のことは忘れて、伴侶と幸せになってほしい。

そんな神父と人妻のスキャンダルを

捏造する男が現れた。

2人の関係をネタに恐喝するが

偶然殺されてしまう。

人妻が神父を窮地から救おうと

告白すればするほど、

動機があると見なされ、

神父の疑惑が強まる事態に!

心が崩れ落ちそうになる神父。

この試練をどう乗り越えたらいいのか・・・

神父が何を考えているのか、

視線の先のカットが教えてくれます。

 

たとえば、映画館の前を通るシーン。

劇場に掲示された

犯罪映画のスチール写真が目に飛び込んでくる。

手錠をかけられた悪人・・・

自分の姿を想像し、思わず目をそらす。

 

洋装店の店先に飾られた紳士服が目に入る。

いっそ、神父の法衣を脱ぎ捨て、

一般人に姿を変えて街を脱出してしまおうか。

 

そして、教会の礼拝堂へ入っていく。

救いを求めるように祭壇を眺める。

その瞳に輝きキラキラがふわ~っと戻ります。

彼の目に何がみえたのか・・・神秘的です。

 

まるで神の啓示をうけたよう。

迷いを払拭した心がほんの数秒の表情で表現されます。

モンゴメリー・クリフトの眼の演技、素晴らしいです。


その頃、警察署では

「神父の行方がわからない。逃げたに違いない」

慌てる刑事。

そこへ静かに登場する神父。

 

裁判がはじまると傍聴席には

真犯人と妻元恋人と夫

 

神父は誰のことも責めません。

アルマ(犯人の妻)の心は不安でいっぱい。

 

「神父さま、黙っていて・・・」

 

怯えながら、隣に座る夫の腕を掴むが、

神父は、口を閉ざしてくれた。

 

ほっとするアルマ。

と同時に罪悪感が膨れ上がる。

一方、証言台に立った夫は

神父を不利にするような証言をほのめかす。

 

仕事を世話し親切にしてくれた神父。

その恩を仇でかえす夫の姿。

アルマの心がかき乱されていく。

 

そして、ハゲタカのような民衆

神父を待ち受ける。

 

「神父なんかやめちまえ!」

「ここで説教してみろ!」

野次がとび、もみくちゃにされる神父。

 

車の窓ガラスが割れた瞬間、

アルマの中で何かが爆発する。

 

群衆をかきわけ、神父のもとへ駆けていく。

 

彼女を追う夫!

 

は、ローガン神父を見放すのか?

それとも・・・


一度目の告白で衝撃をうけ、

二度目の告白で救われる、

赦し×サスペンスの珍しい1本でした。

 

この邦題、ナイスです☆