「明日は真珠湾攻撃から9年です。

しかしこの裁判とは関係ありません」

裁判長が陪審員たちに釘をさす。

殺人容疑をかけられたのは日系人

軍医だった医師が断言する。

「戦時中、日本兵がつけた傷を

たくさん診てきた。

だから今度も日本人の仕業だろう

「棒で殴りあう武術(剣道)を会得する日本人。

彼らは野蛮人だ」

他殺か?

事故か?

人間性を問う裁判が今はじまる。

 

 

 
ヒマラヤ杉に降る雪
スコット・ヒックス監督
1999年
イーサンホーク
工藤夕貴 鈴木杏
マックス・フォン・シドー
サム・シェパード

にみたかった作品をようやく鑑賞。

恋愛ドラマであり社会派ミステリーです。

墨絵のようなブルーグレーに包まれた雪景色。

に降り積もるが美しく、音楽も抒情的です。

千羽鶴が映るカットが、平和の祈りを表現します。

名優マックス・フォン・シドー演じる老弁護士。

彼が語る名台詞

イーサンホーク演じる新聞記者の、

情熱を秘めた

「それが人間というものだからです」

毅然と言い切るヒロイン(工藤夕貴)。

 

それぞれの人物が魅力的です。

 

特にクライマックスからラストにかけての、

イーサンホークと工藤夕貴が素晴らしい。

 

 

  感想

 

「この日本人の顔をみてください。

無表情で何を考えてるかわからない。

ジャップの表情は読めない。

こいつがやったに違いない!」

しかし、

殺人容疑をかけられたカズオは、

幼い頃から父に精神を鍛えられていた。

感情を顔に出すな。

怖がるな。

メソメソするな。

辛くても耐えぬく強い心を持て

アメリカ人とは違う教育。

その違いが誤解を生んでしまう

ぱっと見て、その人物をきめつける。

一部をみてわかった気になって

他人のことをアレコレと揶揄(やゆ)する。

それは、本当に恐ろしいこと。

 

人生や命まで脅かしてしまいます。

偏見手放せない白人

「日本人はなにをしでかすかわからない」

白人への不信感手放せない日本人

「真実を話したって

どうせ白人は信じないだろう」

お互いに決めつけてしまう。

どちらが一方的に悪いとかいう問題じゃない。

証言台に立つハツエ(工藤夕貴)をみつめる

記者イシュマル。

イシュマル(イーサンホーク)は

幼馴染の彼女を一途にしつづけてきた。

彼女が強制収容所に送られ、自分は戦争へ。

帰還すると、彼女は人妻になっていた。

やがて彼女のが殺人容疑で逮捕される。

イシュマルはハツエへの愛が消えず苦しい。

別れを告げた彼女を憎んでも憎み切れない。

いま窮地に立たされている彼女のために

何をするべきか。

老弁護士(マックス・フォン・シドー)が

イシュマルをす。

 

偏見や憎しみ、それが愛だとしても、

執着を手放すのはむずかしい。

絶つためには

生まれ変わらねばならない」

手に入らない

どうやって諦めればいいのか?

世間が怖くて

偏見を見過ごしてきた自分。

今なにができるのか?

「国や島や世の中の話じゃないわ。

あなたが不公平なのよ」

彼女の哀しみと怒りの眼差しが心に刺さる。

そんなイシュマルに母の励ましが背中を押す。

「お前は父さんに似て寒さに強い

それは誇れることよ。」

かつて地方新聞を営む父は

「日本人びいきめ!」と罵られても負けなかった。

イシュマルは動きはじめ、

審理は大きく舵をきる

法廷の1階から

日系人たちがふりかえる。

 

2階にいるイシュマルに

人々の感謝と尊敬の視線が集まっていく。

 

深々と頭をたれる姿。

かつてが人望を集めていた光景と同じ。

 

僕は

偏見に立ち向かう父には

到底及ばないと思ってきた。

 

半人前だと思っていた自分が、

今、ようやく・・・

そして、ハツエが彼を見上げる。

 

そのつぶらな瞳には、

感謝と申し訳なさ、真心があふれている。

 

イシュマルの顔が

ふわぁーっと蒸気していく。

この瞬間のイーサンホーク。

みているこちらまで、胸がいっぱいになります。

 

そして葛藤が浄化されていく

秀逸なラストシーン

リスペクト(敬意)というのは

なんと美しいものだろう。