娘が亡くなったときも、

妻が亡くなったときも、

旗をふりホームに立つ駅長。

「俺はぽっぽやだから」

定年が目前に迫り、幌舞線が廃線に。

駅舎で暮らすことはもう出来ない。

だけど他所で新しい仕事に就いて

生きることはもっと出来ない。

そんな男のもとへ、

赤いマフラーの幼女が人形を抱えて現れた。

 

 

 
鉄道員 ぽっぽや
降旗康男監督
1999年
高倉健
大竹しのぶ
小林稔侍
広末涼子
奈良岡朋子
(画像お借りしました)
 

まっすぐなレールのように

職務にまっすぐな一人の男。

 

 

線路みたいには曲がれない、
不器用な男への花向け物語。
 
親友(小林稔侍)が
定年後の身の振り方が心配で心配で。
あれやこれやと言葉を尽くして気遣う。
 
少年のような2人がいいなぁ。
 
雪山を背景に
機関車デゴイチの吐く煙が力強い
橙色のキハ(気動車)に積もった白い雪の壁
ラッセル車が勢いよく大雪をかき分けて走る姿。
 
その力強さと対比させるように
繊細な与勇輝さんの少女人形
憂いのある表情で駅長の机にぽつんと立つ。
独特な情趣が味わい深いですねぇ。
赤い色可憐な女の子イメージカラー照れ
 
 

 

  感想

 

 

自分を貫くということ。

 
人生を卒業するときに、
「良いタイミングで
好きな場所で
心残りなく逝けたら
最高だろうなぁ」
そんな理想的な旅立ちが
この映画にはあります。
敗戦したこの国を引っ張っていくんだ。
父の教えを守り、機関車乗りとして生きてきた。
雨の日も雪の日も
時代の移り変わりを見守ってきた鉄道員。
乙松さんが人生を振り返る
奥さんが夫に言い放つ。
「キハ(気動車)じゃなくて
私の方を見て」
結婚して17年。
子どもができないという、悩みを
ずっと抱えて耐えてきた妻。
ついについに授かった命。
今日だけは、私の方を見て
雪がちらつく線路の上で、夫は妻を抱きしめる。
女の子が生まれた。
窓の外にちらつく雪を眺め、
ユッコ(雪子)にしないか。名前」
 
鉄道ばかりみていた乙松が、珍しい店に立ち寄る。
それは、女の子の人形が並ぶ店。
 
「乙さん、気が早いねぇ。
まだ赤ん坊で人形遊びをするのは
先だっていうのに(笑)」
 
不器用な乙松さんが、鉄道以外へ目をむけるって、
これはよっぽどの事なんです。
心底、嬉しいんだなぁ。心がはずんでいるんだなぁ。
奥さんもそんな夫の気持ちがうれしくてね。
お人形に手縫いのちゃんちゃんこを着せる。
 
しかし、お人形遊びをする前に
娘は天に召されてしまう。
 
「泣いてやってよ。なんで泣かないの?」
 
奥さんに責められても、
仕事中は悲しみを押し殺す。
 
冷たくなった我が子を抱えた奥さんがホームに降りる。
足早にでていく。
こんな時でも
「後部よし」「信号よし」の指差し確認。
身体にしみついた動作。
業務日誌に「本日、異常なし」と書く自分。
俺ってやつは・・・。
駅長の心残りは、娘への思い。
 
「もし生きていたら、
小学校、中学、高校生・・・」
 
きっと近所の子をみるたびに、
胸がチクリと痛んだろうなぁ。
 
わが子の成長していく姿をみてみたかった。
無邪気な幼少期、おませになっていく思春期、
子供から大人の女性になっていく姿を。
自分の仕事ぶりをみせたかったし、
大事にしている鉄道コレクションを披露したかった。
そして、娘の手料理を食べてみたかった。
そんなお父さんの夢が一つずつ叶っていく。
「俺は幸せな男だ。もう、いつ死んでもいい」
大晦日から元旦にかけて男の心残りが、雪解けをむかえます。
 
北海道の真っ白な雪景色が、
なんだかじんわりと温かい。
 
浅田次郎原作のヒューマンドラマです。