何事もバランスを重んじる名探偵。
2つ並べたゆで卵の高さ、ネクタイの角度。
左足でウンコを踏めば右足でも踏む。
「これでよし」バランスが大事だ。
「人の本質は善と悪しかない、中間はない」持論を述べる。
しかし、彼の論理がオリエント急行と共にガタンと傾いた。
善人だらけの列車で、殺人が起きたのだ!
「オリエント急行殺人事件」
ケネス・ブラナー監督2017年(画像お借りしました)
雪で立ち往生する列車で起きた殺人事件。
冬のミステリー映画「オリエント急行殺人事件」のリメイク版。
シドニー・ルメット監督作品は⇒こちら
ケネス・ブラナーのポアロって、アグレッシブですねぇ!!!
頭脳だけで分析していく静かな探偵像とは違います。
高架橋を追いかけ、襲われ、命がけで犯人と対決!!
ウィレム・デフォーの演技が、まぁ上手い
ジュディ・デンチの公爵夫人の気品
ミシェル・ファイファーの冷静と情熱
デイジー・リドリー(スターウォーズのヒロイン)の心理戦
ペネロペ・クルスの哀しみの眼差し
お料理、列車の美しい内装、服装を味わえる前半から
ぐ~っと心の内面にクローズアップしていく後半。
さぁ、名探偵と優雅なオリエント急行の旅へ!
【感想】
鉄道会社員ブークがポアロに言います。
「列車の旅の醍醐味は、一期一会。
見知らぬ者同士が出会い、目的地で散っていく。
ひととき同じ揺れに身をまかせるところが良いんだ。」
たしかに普通は、偶然乗り合うもの。
しかし・・・
この列車に偶然乗り込んだのはたった一人、
招かれざる客=ポアロだった。
犠牲者は、カセッティ。幼女誘拐殺害した容疑者。
仕事上のトラブルか?過去の復讐か?
乗客は全員、なんの接点もない。
アメリカ人、ユダヤ人、オーストリア人、
人種、階級、職業もバラバラ。
公爵・伯爵・教授・医者・家庭教師・伝道師・秘書・営業マン等。
ポアロの前に、たくさんの証拠が現れる。
ガラスに映る人物が三分割されるカット割りに、しびれる~💓
いくつもの素性を改ざんしなくてはならない理由とは?!
捏造が大量生産され、
疑惑も増える。
名探偵にとって謎解きは喜びだけど、
今回は苦しみを与えます。
真実を闇へ葬れば、自分は事後共犯になってしまう。
「みのがす」という罪を背負う覚悟があるのか?
もう、この事件は他人事じゃない。
自分自身の問題なのだ。
犯人に銃を渡し「私を殺せ!」と叫ぶポアロ。
犯人の手が銃をつかんだ。
そして引き金を弾く!
雪の中のドラマティックなクライマックス
法を守らないと、他の動物と同じだ。
秩序も規律もなくなってしまうじゃないか。
しかし…法は万能じゃない。
人をしあわせにするには不完全な存在。
法の番人から、人間の心に
シフトしていく葛藤が描かれます。
「誘拐殺害された娘デイジーの事件を捜査してほしい」
友人アーバスノット大佐が、ポアロに宛てた手紙。
いま、ようやく君に返事ができるよ。
バランスにこだわる男が、アンバランスを受け入れる姿。
人間的なお話でした(*^ー^*)