夫がベルリオーズ幻想交響曲をかけるとき、彼の本性が露わになる。
他の男を見ただけで、話しただけで平手打ち
暴力を振るったあとは、埋め合わせるように贈り物をする。
真っ赤なバラと朱色のランジェリー。
妻は3年7ヶ月6日、地獄のような結婚生活を生き延びた。
ついに自分の死を偽装するチャンスがやってくる。
「愛がこわれるとき」ジョセフ・ルーベン監督1990年
ジュリア・ロバーツ、パトリック・バーギン、ケヴィン・アンダーソン
(画像お借りしました)

先日、レビューした「愛が微笑む時」と対照的な「愛がこわれるとき」
今作の原題はSLEEPING WITH THE ENEMY
悪い夢をみている (敵と一緒に眠る)

女性の社会進出が目覚ましい時代。
当時、日本では夫のDVから逃れる妻の駆け込み寺が話題に。
今作は悪夢のような結婚生活から脱出する奥さんの物語です。

「プリティウーマン」一躍人気スターになったジュリアロバーツ
彼女がサスペンス映画のヒロインに!と話題になりました。
スリラー作品だけど、彼女の七変化するファッションが楽しめちゃう
大学の演劇部舞台裏で、小道具を身につける場面がロマンティック。
シルクハットピンク薔薇のボンネットカウボーイハット中世のヘッドアクセ
リレー式にかぶっていきますよ(^_-)-☆


【感想】

怖がっていたら、
いつまでも克服できないぞ。

暴力夫のセリフです。
が怖くて泳げない妻に向けた言葉ですが、
妻は夫の存在を克服したいと考えるようになります。

夫マーティンが妻ローラを連れて洗面所へ。
かけてある3枚のタオルをじっとのぞきこむ。
「これでいいのかい?」
「まぁ…うっかりして(汗)」
あわててタオルの柄をそろえるように、整頓するローラ。
整理整頓、清潔でないと夫は居ても立っても居られない。
 
彼にとっての完璧が、妻にとって凶器になる。
落ち度がないかどうか、常にピリピリ緊張する奥さん。
オドオドと顔色をうかがう不幸せな毎日。
彼女が逃げ出さないように、海のそばの家で外出制限をする。
人影はなく、カモメが舞うだけの風景。
しかし、彼女は虎視眈々とチャンスを狙っていた。

ある日、泳げない彼女をヨットに連れ出す夫と知人。
嵐がやってきた。
ヨットの帆に気をとられている隙に、彼女は消える。
彼女の救命胴衣が発見され、絶望にたたきつけられる夫だったが。。
溺死したはずのローラは、別の町で人生を再スタートさせていた。

温かみのある花柄の壁紙、カントリー調のキッチン。
窓際に紫色のポインセチアの鉢植えを飾り、ポーチのブランコで寛ぐ。
以前住んでいた、白と黒のモノトーンで統一されたスタイリッシュな家とは大違い。

花柄のタオル3枚、そろえそうになる手をとめる。
わざとタオルを乱雑にして、微笑む。
水泳教室に通った甲斐があった。
自由が手に入った。
たくさんの人が行きかう町のにぎわいが嬉しい。
新しい恋人もできる。

大学講師の彼は、料理を失敗しても気にしない
「ウェストサイド物語」を歌い踊るきどらない人。
彼女の意志を尊重し、自分好みに彼女を染めようとしません
徹底的に夫とはうタイプだという演出の畳みかけ。
(こーゆーところが好き)
 
しかし、一本の電話を眠りから覚ます。
「奥様と、水泳教室で仲良くしていた者です」

泳ぎが上手かったって??

恐ろしいですねぇ。夫が追いかけてくる。

彼女には一つ弱点があった。
老人ホームで暮らす盲目の母の存在。

母に逢いたくて男装してホームを訪ねる。


同時刻、夫マーティンもやってきた。

この場面、ドキドキハラハラしますよ。
ウォータークーラーで水を飲むローラ。

その背後に、夫が!!

気づく?気づかない?

そして、魔の手が新居に伸びてくる。
例の音楽、ベルリオーズ幻想交響曲が流れだす。

タオルの柄がそろっている!

キッチン戸棚をあけると・・・缶のラベルが正面を向いてる!

整頓されることが、これほど恐ろしいなんて!!

完璧って、息が詰まる・・・

この結末は、いかに。


おびえるジュリア・ロバーツのチャーミングな演技、楽しみました。