「人間は一人では生きていけない。その運命に逆らっちゃいかん。
分かるね、寅次郎君。分かるね・・・」

博の母が亡くなった。
お葬式にいつもの姿でやってきた寅さんは、博の父からこんな話を聴かされる。

「暗い畦道を歩いていたときにな、家の灯りが見えた。
その家にはリンドウの花がたくさん咲いていた・・・」

「男はつらいよ 寅次郎恋歌」山田洋次監督1971年
渥美清、池内淳子、倍賞千恵子、前田吟、笠智衆、志村喬(画像お借りしました)


タカ兄(志村喬さん)が出ているから、借りた今作。
「’ぺこぺ~こぽんぽん’の歌、やめなさい」
からの、リンドウの話が・・・もう沁みて沁みて

印刷工場のインクだらけになった顔。
あの女性にもう一度会いたくて花占い
お供えの饅頭盗んで怒られて、タコ社長は大笑い。

でもね、やっぱり寅さんは
一番大事なことを知っているんだよ。



【娘の感想】
人には皆、捨てられない今の生活がある。

父を一人故郷に残してきた博は、父の寂しさを感じながら、
これからも柴又で暮らし続けるだろう。

柴又で喫茶店を開いた女性は、
「寅さんみたいに旅をするのが夢だったの。
あたし、もう何もかも捨てちゃおうかな。」と笑う。
彼女は明日もまた、カウンター越しにコーヒーを注いでくれるだろう。



リンドウの花咲く庭。
明るい灯の下で、夕食を囲む家族団欒
それはきっとこれからも寅さんの夢だ。



「さくら、兄ちゃんのこんな暮らしが羨ましいか。
そんな風に思ったことはあるかい。」

「あるわ。一度はお兄ちゃんと交代して、あたしのこと心配させてやりたいわ。
寒い冬の夜、こたつに入りながら
『ああ、今頃さくらはどうしてるかな』って。そう心配させてやりたいわよ。」


「そうかい。さくら、すまねぇ。」

北風が吹いている。

寅さんはジャケットの襟を立て、また旅に出る。