雷鳴がとどろき、土砂降りの雨の夜。
停電になった屋敷の階段で子猫の鳴き声が。
猫嫌いの女主人が振り上げた杖を少女が奪い取り
伯母へ向かって打ち下ろした。
現場に居合わせた少年2人。成長した3人が再会する。
「呪いの血」
ルイス・マイルストン監督
ロバート・ロッセン脚本
1941年
バーバラ・スタンウィック
カーク・ダグラス
ヴァン・ヘフリン
リザベス・スコット
ジュディス・アンダーソン
(画像お借りしました)

邦題をみて真っ先に連想したのが
怪奇映画吸血鬼モノゴシックホラー
原題はマーサの異常な愛情

心理サスペンスタッチだけど
意外と哲学的でした。
スリリングな展開に「この結末はどうなるんだろう?」
と目が離せません。

 
ヒッチコックの「レベッカ」で悪役ダンヴァース夫人を演じた
ジュディス・アンダーソンが今作でも冷酷な夫人。
「もっと近くへ」と命令する姿、ゾッとします。



【あらすじ】
さすらいの賭博師サム
18年ぶりに故郷へ立ち寄る。
幼馴染の令嬢と少年のが知りたくて。
驚いたことに、彼らは結婚していた。
しかも、逆玉の輿になった夫は検事になっていた。
夫婦は、突然現れたサムに
過去の事件をネタにゆすられると勘繰る
しかし、事態は予期せぬ展開へ。



【感想】
振り返ってはいけない。

映画の最初最後
主人公の行動が変わります。
「人生をやり直して新しく生まれ変わりたい」
そう願う男女4人。

人は選択に迫られたとき
何を選ぶのかという物語。

彼らに共通するのは父の影。
父親たちは現実から逃げようと、
もがいた人ばかり。
愛する亡き父の影にられる夫婦。
マーサとウォルター。
マーサの夫をカーク・ダグラスが演じています。
(デビュー作)
ナイーブな彼は
マーサと自分のために犯したを悔やみ、
酒びたりの日々。
妻の望む生き方をするのか、
父の夢(経歴や財産のある暮らし)を続けるのか。
踏み出す勇気がでない。
一方、父を疎み、居場所を求めさすらうサムとトニー。
「旅は道連れ。一緒に西部をめざそう」と意気投合する。

しかし、マーサがサムを引き留める。
「過去に縛られる生活から抜け出したい。
一緒に連れて行って
女たちが男へ投げかける言葉
「あなた次第よ。
そっちがきめて」
 
トニーか?
マーサか?
どちらと生きていくのか?
自分でも分らない。

サムの癖が面白いんです。
コインを親指から小指へ転がす癖。
硬貨が表裏コロコロと動き
決めかねている心を表しているようです。

情熱的で謎めいたマーサ。
魔性の女の本心はどこにあるのか?
場面ごとに変わる表情。
聖女にも悪女にもみえるんです。

マーサと対照的なトニー。
その日暮らしの頼りなげな女性。
  
どちらの美女も孤独なベール
まとっています。
そして、2人共、サムに救いを求めている。

やがて、18年前の事件を調べていくと、
サムが知らなかった
真実に気づく。

マーサの話を信じるのか?
夫の証言を信じるのか?

ふたたび、18年前の晩と同じ状況が3人を襲う。

階段の上に立つサムの耳元で
甘くささやくマーサの声。
やるのよ
私たち自由になれるわ」

その瞬間、サムのは決まった。

彼の選んだ道は。

そして、夫ウォルターが選んだ道は・・・。

旧約聖書の一節をくりかえすサム。

「神との約束を破って
振り返った妻は塩の柱になり
振り返らなかった夫は無事だった。」


ドラマティックな山場
後味のよいラストシーンを味わいました。