「僕、子どもがほしい。ちょうど受胎日だね」
突然、夫がカレンダーを指さし言いだした。
彼は真っ赤な薔薇を部屋に飾り、
暖炉に火をともしグラスで乾杯。
優しくロマンティックなムードを演出する。
しかし、妻が悪夢をみた翌朝
彼はよそよそしくなっていた。
 
 
ローズマリーの赤ちゃん
ロマン・ポランスキー監督
1968年
ミア・ファロー
ジョン・カサヴェテス
ルース・ゴードン
シドニー・ブラックマー
※2019年10月の記事を再UP

 

スリラーとしても人間ドラマとしても
面白い有名作。
初々しいヒロインが
身も心もやせ細っていきます
「ジョンとメリー」衣装を担当した
アンシア・シルバートが今作も手掛けています。
ヒロインが同じようなデザインのワンピース
きていてビックリ。
 
左:ジョンとメリー
右:ローズマリーの赤ちゃん
ミア・ファローは少女っぽい服がよく似合う。
今回、印象に残った衣装は
真っ赤なパンツスーツ
家のあちこちに飾られた
彼女の名前と同じ薔薇の花
ローズマリーも薔薇もすごく美しい。
隣人夫妻のファッションもカラフルで独特ですよ。
世話焼きな隣人を演じたルース・ゴードン。
アカデミー賞助演女優賞。

 

  ネタバレ感想

あの夜以来、

夫は私を避けている。
「赤ちゃんができた?!
やったな!」
夫は大喜びで隣人に報告にいく。
お年寄りと付き合うのは
嫌がっていたはずなのに。。
「私たちも待っていたのよ」
隣人夫婦から産婦人科医を紹介され
毎日薬草の煎じ薬を飲まされる。
図々しい親切の押し売り
エスカレートし、
度を越した過干渉に発展していく。
気味が悪い。
ただでさえ新米ママさんは、
不安がいっぱい。
体調がい。
赤ちゃんが心配
なにもしてくれない主治医への不信感
夫が留守がちになる。
体調不良を適当に受け流され、
孤独感がつのっていく。
夫と隣人によって
外部との繋がりを
たれそうになる。
だけど踏ん張るローズマリー。
次第にアパートの悪い噂が気になりはじめる。
突然死した知人が残した手がかりをたどり、
謎に近づいていく。
心理サスペンスオカルトの要素が
加速していきます。
はじめての胎動を感じる喜びのシーン
奥さんと夫の温度差が印象的なんですよね。
 
「赤ちゃんがお腹を蹴ったわ!

 生きてる!元気だわ。」

 
長く続いていた腹部の激しい痛み。
赤ちゃんの安否が心配だったから、
よけいに嬉しい。
妻は感動し夫の手を自分のお腹にあてる。
夫はギョッとなり
反射的に手を引っ込める。
 
「かみつかないわよ(笑)」
ローズマリーは苦笑いをするが、
夫は得体の知れない者への怖れを隠せない。
 
こういうちょっとしたやり取りで、
彼の弱さがチラリと覗きます。
 
私の赤ちゃんが狙われている!
守らなきゃ。
赤ちゃんを悪魔の生贄にされると思い込む
安全な場所で、出産したい。
夫&隣人の手からわが子を守らなくちゃ。
しかし、生贄は赤ちゃんではなかった
「また産めばいいだろ」
女性にとって命がけの
妊娠・出産、死産軽くみる男。
名優を目指す彼にとって
守りたいのは自分の役者人生だけ。
他者を踏み台にチャンスをつかみたい。
 
「お前に手出しさせないように
約束させたんだよ」
 
恩着せがましい言い訳で
罪悪感から逃げようとする卑怯な男。
男のズルさが際立つ
クライマックス。
夫を演じたジョン・カサヴェテス監督は
本当にこの人物にぴったり。
憎まれ役が上手い役者さんだなぁ。
 
夫の心には、すでに悪魔が宿っている。
憎む価値さえなくなった男に、
ツバをはきかける。
伴侶に失望した妻は、どこに向かうのか
 

ゆりかごを激しく動かすが目に入る。

(そんなに荒っぽく扱わないで)
 
泣き止まない我が子のが耳に入る。
(可哀想に)
 
あなたの子と言われる。
(そうね。たしかに、私の赤ちゃん
 
悪魔の囁きに母性が傾いていき

悲しい母の顔になる。

 
その表情に寂しげな子守歌が重なる。
 
演出・演技、どれをとっても魅力的な名作です。