生まれたときから泣いたことのない娘。
チャーリーは祖母が亡くなっても無表情
お絵描きをし、チョコをかじる。
彼女には一つだけ気がかりなことがある。
「この先、私はどうなるの?」
やがて母親と息子に「コッ、コッ」
チャーリーの舌を鳴らす音が聞こえはじめる。

 

 
ヘレディタリー/継承
アリ・アスター監督2018年
トニ・コレット
ガブリエル・バーン
(画像お借りしました)

 

※2019年7月の記事を再掲載

 

ピーナッツアレルギーの少女が登場する
オカルトホラー映画。
 
「レガシー」を思い出しました。
後継ぎとして選ばれた者が、
宿命に巻き込まれていくホラーです。
 
ふるいにかけられるように
邪魔者が1人ずつ消されていく、
その描写の多彩なこと。
チキンの骨、プール、鏡・・・
逃げ出すことのできない恐ろしさ。
 
「ローズマリーの赤ちゃん」にも
今作と似た演出がありました。
それは、ミア・ファローがネックレスをつけ
煎じ薬草茶を飲まされるというもの。
今作では、主人公が黒い茶葉を
口から出すカットに懐かしさを感じました。
 
冒頭のミニチュアドールハウスから、
実際の家族へシフトしていくカットに
惹かれます。
 
女優トニ・コレットが演じる
としての顔、
としての顔
子どもや夫に対する愛情
禍々しいモノにられる狂気
相反する表情の素晴らしさ!
もう、感服です。

 

  感想

私のせいじゃないけど

私のせいだわ。

 
大抵のお母さんが自分を責めやすいこと。
 
それは…
家族の病気、事故、経済的な困窮。
 
今作は、オカルトテイストで味付けされた
家族の物語。
アリーは自分が子供の頃に体験した惨劇
再び味わっていく。

「母が息子に近づこうとしたから
生まれた娘を差し出した」
 
赤ちゃんだった娘チャーリーを生贄にした自分。
 
罪の意識に苛まれるアリー。
 
そして、
母が亡くなったというのに
悲しく思えない。
 
それが辛いし
そんな自分が非人情で情けない。
 
愛していたけど
憎んでいた。
 
喪失感から立ち直るためのセラピー
参加する場面があります。
 
彼女の独白を、
輪になって聴く人々。
 
打ち明ける内容が特殊なのに
なぜか反応が薄いんです
 
ひとつだけ空席の椅子。
 
この違和感。
 
数日後、
親切に声をかけてくる女性が現れ
 
唯一寄り添ってくれる存在になります。
 
「話がしたいときのために」と
連絡先をメモに書いてくれた。
 
青絵の具が倒れたところに
そのメモが。
 
こぼれた絵の具を拭きとりながら、
メモを見つめる。
 
連絡する気になり、
彼女を訪ねたことで
さらなる悲劇へと加速していく。

今作は兆しの描写
次々あって面白い。
ペンダント、電信柱、
スケッチブックの絵、
屋根裏部屋の取っ手。
予兆がしっかりと映るので、
「それで?それで?」と、
物語の展開をワクワク予想しながら
進んでいきました(^m^)

私が一番怖かったのは、

アリーが死にまつわる悲劇を
ミニチュアハウスで再現する場面。

 
ミニチュア作家の彼女が、
愛する家族の無残な姿を、
粘土や絵筆で・・・
冷酷に表現するんです。
これは背筋が凍ります!!!
恐ろしい。
 
あれほど身をよじりながら
「私もあとを追って死にたい」
と嘆いていた彼女なのに
 
不思議な力によって感情を失う。
 
神経を集中し、
とり憑かれたように
指先を動かし続ける。
我にかえる瞬間
操られる瞬間が行ったり来たり。
 
妻が大変なとき、
仕方なく妻にあわせるだけ。
 
夫としての体裁を保つことに終始する。
 
安定剤を1錠、2錠、
口に放り込んで飲み込むだけの
知らぬ顔を決め込む存在だ。
 
やがてアリーは気づく。
 
母の遺品をみて
にかかっていたことに。
 
ミニチュアハウスをめちゃめちゃに壊し、
なんとか逃れようと試みます。

家族の絆をつなぎとめたい。

母として責任を持って、
子を守りたい。
夫や息子へ愛を必死に訴えるアリー。
しかし
彼女の思いが砕け散る運命が。。
 
息子ピーターが
「ママ?パパ?」と呼びかけながら
2階から1階へ降りていく。
 
リビングで彼が見た光景とは…?
 
なかなかエキセントリックな結末でした。