「弟も妹もみんな結婚したけど
あんたはいつするの?
精肉店で働くマーティは、
おせっかいな婦人客に言われる。
次の客も同じ台詞をぶつけてくる。
「誰かいい人見つけなさいよ。
いい加減に結婚しなさいね」
「僕だって相手がいりゃするよ!」

 

 
マーティ
デルバート・マン監督
1953年
アーネスト・ボーグナイン
ベッツィ・ブレア

 

独身をとりまく人々の
リアルな心境が描かれて
「わかる~~~!」
 
小津安二郎監督作品や
向田邦子さんの本のような
リアルな人の心に
ほっこりするんですよねぇ。
 
愛おしい作品です。
 
主役はアーネスト・ボーグナイン。
「大砂塵」の荒くれ者でしたね。
今作では、不器用で誠実な男を演じています。
 
 

 あらすじ

冴えない見た目のマーティは

振られっぱなし。

土曜日ごとに女さがしなんかウンザリだ。
母にせっつかれて
仕方なく出かけたダンスパーティ。
思いがけなく一人の女性に出会う。
 

 

 感想

いつもの俺はもっと無口なんだよ。

今日はどうしたんだろう。

おしゃべりが止まらないんだ。
マーティは初対面のクララにしゃべり続ける。
気づいたら3時間があっという間
高校教師のクララは
控えめで気立てのよい女性。
耳を傾け、彼の話を聴き、
楽しい話は一緒に笑い、
深刻な話は真剣な表情で聞き入る。

マーティは、

自分のこれまでを知ってもらいたい。

そして、彼女のことも知りたい。
 
遅い時間だから、
あと少しだけ話がしたい。
 
互いに仕事の迷いを打ち明け、励まし合う。
バスの時間まで、もうちょっとだけ。
 
もう少し。
 
さらにもう少し。
 
一緒にいたい。
 
ニューイヤーも良かったら、一緒に。
 
ついせっかちになるマーティを
クララは(焦らないで)という気持ちで
見つめ返す。

 

その頃
親友はマーティを探しまわる。
 
いつも一緒につるんでいるはずの店に
いないぞ⁈変だなぁ。
 
ようやく見つけ声をかけるものの
クララのことを無視
 
ぶっきらぼうで失礼な態度をとる。
 
なぜなら
マーティが女連れなのが気に入らないから。
マーティは母親にも紹介するが。。
 
お母さんも親友も陽気な仲間も
「あんなイモ女」「容姿が良くない」
などといちゃもんをつける。
 
だけど、別に本心じゃないんです。
彼女が美女でも同じこと。
理由はなんだっていいんです。
 
マーティが独り身で寂しそうだと
あれこれ世話を焼く。
 
でも、いざ彼に彼女ができたら
なんだかさみしい。
 
彼には幸せになってほしいけど
なんだかつまらない。
 
自分が置いていかれたような焦りを感じ
ついついマーティの恋に水を挿してしまう。
 
母親は妹の愚痴を聴かされ、
急に心細くなる。
 
姑の立場って孤独だよ。
姉さんも今に、私と同じ思いを味わうよ。
息子が嫁をもらって同居したら
居場所がなくなるんだ」
 
そんな風に吹きこまれる
本当になりそうでこわい。

さらに、クララから質問される。
 
「子供が巣立っていくのは
仕方ないですね。
趣味はないんですか?
ムッとするお母さん。
 
「子育てが忙しくて
趣味どころじゃなかったんだ!」
 

前日まで、

息子に良い縁がありますように
と願っていたのに。
 
なんだか・・・モヤモヤする。
息子が朝から鼻歌でご機嫌。
 
それも気に入らない。
 
「親の留守中に家にあがりこむなんて
どうせロクな女じゃないよ」
 
「年増女じゃないの?
イタリア系じゃないとダメよ。
高校教師なんて
商売女と一緒だよ
私はあの人いよ」
 
もうメチャクチャな理由で
ケチをつけはじめるんです(笑)
 
うんうん、わかるよ、
お母さん・・・
 
そういえば、
私も独身の頃、こういうことあったなぁ。
 
ウチの母は、
知り合いの娘さんがゴールインすると
「私も早く孫が抱いてみたい」
「お見合い話を持ってきてもらったよ」
あれこれと世話を焼いていたけど
 
いざ付き合いはじめると、
急に口数が減っていったっけ。
 
彼と喧嘩したら
「あらあら、どうしたの?( ^)o(^ )」
妙に嬉しそうにウキウキしたりして。
 
子どもの幸せを願ってはいるけど
複雑な気持ちになるもの。
 
今作のマーティは、親孝行息子。
友人にも義理堅い。
当然、周りの声も気になる。
 
しばらくは、
周りの雑音につきあって
彼女への気持ちを抑える。
反論も控えめにする。
でも、やっぱり…
 
一番大切なことに気づく。
 
彼女といる時が一番楽しくて
自分らしくいられる
 
一緒にいると居心地がいい。
 
そして、
彼女と会った後は 
夜風までもが心地いい
 
心をきめた人の顔って、
良い顔するなぁ。
 
 
アカデミー賞作品賞
主演男優賞、監督賞、脚色賞
パルムドール他受賞
 
2019年6月の記事を再UP