「生きるってのは大変なことよ。死んじゃおしまい」
優しい言葉を選んでいる暇などない。グロリアと少年の逃避行がはじまった。
「グロリア」 1980年 121分 ジョン・カサヴェテス監督
(画像お借りしました)
※本館から移動したレビューです。

ジーナ・ローランズの、男性顔負けの強さ
そして、繊細な女性らしさ
ウンガロの服を着こなし、ハイヒールで銃をかまえる彼女。しびれます。
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞

【あらすじ】
組織を裏切ったため報復をうける一家。
一家の生き残りで事件の証人は、6歳のフィル。
グロリアは成り行きで、少年をあずかるはめになる。
「アンタを助けちゃ、あたしがヤバイんだよ。」
追い払っても、払っても、彼女の腰に必死にしがみつくフィル。
2人の前に、すーっと一台の車が近づいてくる・・・


【感想】
グロリアの常識は、
小さな子供には通用しない。


「あんたは、僕のママにはなれない。ママは美人だった。
僕は新しい家族を見つけるよ」



グロリアの女性の顔ギャングの顔交互に入れ替わる

ドラマティックな音楽が、グロリアの決心を表現する。
もう、後戻りできない・・・進むしかないんだ。


昔の仲間が、複雑な顔で声をかける。
「お前ほどの女が、子どもために・・・
どうかしてるぞ」

うるんだ瞳で頷く、グロリア。
(あぁ、そうだよ。アタシったら、どうかしてる。。)
気持ちを落ちつかせるために、
過去をふりかえらないために
煙草に火をつける彼女の横顔。しびれます。

料理の場面で、
グロリアがどんな生き方をしてきたか、わかります。

フライパンにこびりついた目玉焼き
フォークで、剥がそうとガリガリやる。とれない。

やっぱり、母親のマネなんかアタシの柄じゃない。
フライパンごとゴミ箱へポイッ。

グロリアは飼っていた猫にしてあげたように、
ミルクをあげることしかできない。

彼女が少年に翻弄される場面がいいんです。

守ってあげようとしているのに、協力しない少年にイライラ。

「じゃ勝手にすればいい。アタシはバーで一杯やる。
ついてくるもよし、逃げるもよし」
そう言い捨て、バーへ。
カウンターでビールを注文するグロリア。
煙草に火をつける。

平静を装っているグロリアだが、外が気になる。
「マスター、アタシの代わりに外を見てくれない?
子供がこっちに向かって歩いてきてる?」

てっきりついてくると思っていたのに、こない!
慌てて店の外へ飛び出る。
途方にくれ、道の真ん中でたちつくす・・・



地下鉄では、フィルとグロリアの間で、ドアがしまる。
列車が動き出してしまった・・・

銃撃戦よりハラハラドキドキする2人のやりとり。
グロリアにとって、敵より手ごわい相手、フィル。

「アタシが母親になる話、断る?」

「あんたがなりたいなら、なってもいいよ。
あんたは、ママでパパで家族で親友だ。
恋人でもある


墓地の中を歩くフィル。そして、走り出す・・・・


まるで花畑を駆けるようなラストシーン。。
ジョン・カサヴェテス監督演出の見事さ!!
おぉ~、いいねぇ」思わず母娘でうなりました。