生まれて初めてのキャラ弁当に感激したトモは、もったいなくてなかなか食べられない。

「彼らが本気で編むときは、」荻上直子監督 2017年 127分

生田斗真 桐谷健太 田中美佐子 小池栄子 柿原りんか

(画像お借りしました)


本日は、おむすびの日。

娘が「上映の後、食べたくなった。」と言っていた映画です。


※本館から引っ越した記事です。


2017年春、シアター内はすすり泣きに包まれていました。

マスクしたまま泣いてるご婦人、息にあわせてマスクがペコペコ
胸を打つ場面では、あちこちでティッシュを取り出す音が響いていて・・・。

 

【あらすじ】

小学5年生のトモは母親と二人暮らし。
しかし母親は家事・育児を放棄。
ある日、母親が家出。

トモは叔父の元に向かう。

叔父は恋人リンコと一緒に暮らしていた。
トランスジェンダーの女性リンコに戸惑うトモ。
しかし、トモの頑なな心はリンコの愛情によって徐々にほぐれていく

 


【娘の感想】

「男とか女とか、もはや関係なかったんだ」


すごい!!

日本でもこういう映画、撮れるんだ!

荻上直子監督の脚本が素晴らしい。

強い意志を持って製作されたことを感じる。


今作はたくさんの社会問題を盛り込んだ見ごたえのある物語。
LGBTだけでなく、ネグレクトいじめ介護などなど。

どのテーマも現実味があって、とても面白い。

果物たっぷりのロールケーキのように、

どこを切っても美味しい映画です。

 


私の大好きな場面は、トモとお弁当。

公園でお母さんと一緒に遊ぶ子どもたちをましそうに眺めるトモ。

リンコに作ってもらったお弁当を開けてみると、

可愛いネコのおにぎりやタコさんウィンナー!



思わず「わぁ!すごい可愛い!」

生まれて初めてのキャラ弁に感激したトモは、

そのお弁当がもったいなくてなかなか食べられない。

時間がたちすぎて傷んでしまったお弁当。



でも、食べたい。
お腹を壊してしまったトモを見たリンコは・・・


【リンコは特別じゃない】

私の好きな登場人物は、トモの同級生カイくん。
ホモだとか、弱っちいやつだとクラスでいじめられている彼。

(小学生・中学生のいじめとは、なんと無邪気で残酷なのだろう)


彼もリンコと同じような苦しみを味わっている。

誰にも打ち明けることが出来ず、一人悩んでいる。

好きな人に宛てた手紙を書くカイくん。

母親にも理解してもらえず・・・。


カイくんの存在は物語の中でとても重要。

彼はリンコが特別な存在ではないことを教えてくれるのだ。


【つらさを支えてくれるもの】

この物語に出てくる人たちは、

編み物や音楽によって悲しみや怒り、悔しさを紛らわす。

そうやってバランスを取って生きている。



老人ホーム住まいのマキオの母も言っていた。
「お父さんが浮気をして出て行ったとき、ひたすら編み物をしたの。

何かしていないと気が変になりそうで。

マキオのセーターやマフラーをせっせと編んだわ。

結局ダンボール5箱分にもなったのよ」


それを聞いて「ああ、私だってそうだ」と、ふと思う。
私も何か嫌なことや落ち込むことがあると映画を観る。
その瞬間だけは全部忘れられて、

映画が私の鬱憤を吸い取ってくれているように感じる。

人は弱く脆く不安定。
それを支える”何か”が必要なんだ。


同時に映画を観ながら思ってしまう。
桜の花びら桜がサラサラと川に流れていくように、

私たちの嫌なこと全部水に流せたらいいのにね、と。



映画の余韻に浸るように、

鑑賞後 私はおむすびおにぎりを頬張った。

トモがあさりの佃煮や切り干し大根が好きだと言っていたので、

桜昆布おこわあさりのしぐれ煮


心がじんわり満たされる、春にぴったりの作品でした。