線路で死体がみつかった。
被害者は誠実な人柄。
多くの人を助け、
人望に厚く、
誰かの恨みを買う人じゃない。
なのになぜ?
ベテランと若手刑事が
東北弁の男が発した「カメダ」
という言葉を手がかりに
真相をたぐりよせると、
父子の厳しい人生がみえてきた。

 

 
砂の器
野村芳太郎監督
1974年
加藤剛
加藤嘉
緒形拳
丹波哲郎
森田健一
島田陽子
 
娘が「これ見て♪」と映画館から
持ち帰ったチラシ。
加藤剛 橋本忍 追悼上映会
 
「な、なんと!
砂の器やんかっ!」
 
2日後に迫ってる。
 
「どうする?」
「いくわ!」
即決即答!
兵庫県立美術館ミュージアムホールへ。
娘はエクソシストのTシャツで参戦。
250席あるホールは、
一回目・二回目共に満席。
臨時席を設けて対応されていました。
 
 
詩情あふれる音楽
台詞以上に語りはじめると、
会場に鼻をすする音がひろがって。。
 
少年が涙をぬぐいながら、緑を駆け抜け、
線路を走って走って父の腕にとびこんでいく。
 
もう胸が苦しすぎて(TДT)
緒形拳さんの優しい表情、
加藤嘉さんの慟哭、
30年ぶりに観た今作の余韻がものすごい。
 
 
 

 

  感想

「芸術の世界では

出来上がったものが勝負
音楽家和賀英良のセリフです。
和賀英良が渾身の力で
「宿命」を生み出したように
 
脚本家橋本忍さんが
生み出した父子の旅
 
彼が書き上げた
原作にない旅こそ映画の真髄。
 
この部分で勝負がきまりましたね。
 
TVの対談番組で、
共同脚本の山田洋次監督が
こう語ってました。
 
「橋本さんが興奮して
クライマックスを書き進めた。
その姿を横でみて
俺は今、世紀のすごいことに
立ち会っている!
と感じた」
 
深い人間ドラマの傑作です。
 
前半は、刑事の旅
暑い夏の蜃気楼のむこうに、
事件の解決の糸口をさがそうと
白いタオルで首筋の汗をぬぐい、
歩く歩く刑事の姿。
 
中半は被害者の旅
退職旅行のスケジュールを変更し
殺されることになった経緯が描かれます。
 
後半は父子の旅
凍てつく冬の寒さを2人が身をよせあう放浪の旅。
台詞のない音楽と美しい映像だけで
語られる父子の旅です。
 
より悲しく美しくドラマティック!
胸をうちます。
 
真冬の海沿い、白波、大雨をしのぐ父と息子。
梅や桜緑の春、山々の連なり。
そのなかで小さく映し出される2人。
 
子どもたちに石を投げられ、扉を閉ざされる。
「罪人、病人、この村に立ち入るべからず」
の立札ごしに駐在に追い立てられる父子。
 
鯉のぼりの季節。
小学校の校庭を輪になって体操する生徒を、
高台からじっとにらみつける少年の眼差し。
 
世間の厳しい仕打ち、
追われる旅の中にあっても
鍋で炊いた温かいおかゆを笑顔ですする
ささやかな幸せ
 

 

「息子に一目あいたい」
「きっと会わせる」
 
20年も文通した 父と巡査。
 
人情に厚いおまわりさんが退職して旅にでる。
思いがけない場所でみつけた手がかり
巡査の心は希望を見出す。
 
よし、これで
念願の親子対面を果たしてあげられるぞ!
 
しかし、少年は・・・
 
人の偏見が父子をき、
人の善意が少年の心をさらに追い詰め
恋人の愛も彼の心を溶かすことはできない。
刑事の執念過去へ引き戻す。
 
電車の窓からのびた
若い女性(島田陽子)の白い手
 
握られた小さく裂かれた布が、
紙ふぶきのように風に舞う。
 
証拠と一緒に、
彼女の運命もまた風に流されいく。
 
儚く美しいシーンですねぇ。
 
息子は
社会の厳しさが
身に染みているからこそ
恋人にも誰にも言えない。
 
父への想いと
生きる証を曲にこめた
「宿命」の旋律。
 
せめてこの曲だけでも
生き残って・・・
 
そう願わずにいられないラストシーン。
 
上映終了後、拍手が起きました。
 
娘の感想は↓