レプリカントが人間になっていく。
その美しく哀しい姿を味わう作品。
人間はいつまで生きるのか?
それは神のみぞ知る。
 

 

 
ブレードランナー
ディレクターズカット版
リドリー・スコット監督
1982年
ハリソン・フォード
ルドガー・ハウアー
ショーン・ヤング
ダリル・ハンナ
M・エメット・ウォルシュ

 

リドリー・スコット監督の世界観。
「ゲティ家の身代金」もそうですが、
孤独の描き方がうまい監督さんですねぇ。
大富豪技師も、
孤独を埋めるために好きなモノを増やし
囲まれている。
美しいけれど、
人と人の触れ合いが乏しく、
温もりを感じられない世界です。
 
近未来の地球、雨が降り、
アジアンテイストな街や人々、
強力わかもとの電子看板のインパクト(笑)

 

 

  感想

危険な仕事、汚い仕事、

男性を慰める仕事。
人間が嫌がる仕事を
代わりに課せられた
レプリカント。

 

彼らの中には感情が芽生え、

脱走するものが現れた。

 

彼らを抹殺するため

ブレードランナーが動き出す。

しかし追う側の心にも
新しい感情が芽生えはじめる。
 
レプリカントが

人間のように感情を持つと

危険と見なされる。

 
なぜなら

感情が芽生える

疑問が生まれる。

社会へ反発する。

 

彼らは人間にとって
都合が悪い存在になってしまう。

だから、生かしてはおけない。

 

「死刑というときまりが悪い。

だから解任と呼ぶ」

 

「奴隷狩りなんて言うと

差別用語になるから使っちゃまずい」

 

そんな人間の詭弁ナレーションが語る。

レプリカントを通して

感情が生まれる描写が素晴らしい。


最も繊細な感情を

見せるのがリーダーの ロイ・バッツィ

脅え、恐怖、不安、緊張、怒り
奴隷ではなく、
自分の人生を生きたい。
 

植えつけられた記憶ではなく

本物の思い出がほしいんだ。

 

そのためにもっと時間がほしい。

寿命をのばせないか?

彼らの心の叫びがスタイリッシュな映像と

ムーディな音楽にのせて描かれます。

 

プリス(ダリル・ハンナ)

「私たちは機械じゃない、人間よ。
感情もみもある・・・」
生みの親タイレルに会うが、
遺伝子操作できないことを知り
絶望を味わう。
死へのカウントダウンに対するり。

そんな彼らを

ブレードランナーのデッカードが追う。

プリスが倒された!
ロイはやり場のない悲しみを味わう。

闘いの途中で

び、横たわる彼女のもとへ近づく。

 

すると…

おしい気持ちが湧き上がってきます。

この瞬間が最も切ない


彼はデッカードを襲いながら、

まるで自分自身を襲わせるように

あおる。

 
仲間を救えなかった自分をするように
自暴自棄に暴れる姿が痛々しい。
自分に傷みを与えることで、
意識を失うことを防ぐ。
 
自傷行為でやり場のない痛みをちらし
生きている実感を味わうのです。
キリストのように手の平に傷を負った
レプリカントが
最後に芽生えた感情とは?
命がつきる瞬間、
ついに彼の心は人間になっていた。
人間も自分たちと同じ、
寿命をコントロールできない生物なのだ。
 
今すぐではなくても
結局は同じ運命なのだと悟る。
 
その瞬間、デッカードに腕を伸ばす。
 
悟りから許しへと感情が変化したのだ。
 
教会の鐘の音のようなBGMと
共に平和の象徴=白鳩が
空に羽ばたいていく。
 
恨み憎しみが空へ消えていく。
デッカード&レイチェルは
捜索の手からされるのか?
彼らの運命はどうなる?
彼らの寿命はいつまで?

それは…神のみぞ知る。
自分は何者で、どこへ向かうのかという
哲学的なテーマが魅力のSF映画でした。