レプリカントが人間になっていく。
その美しく哀しい姿を味わう作品。
人間はいつまで生きるのか?
それは神のみぞ知る。
それは神のみぞ知る。
リドリー・スコット監督の世界観。
「ゲティ家の身代金」もそうですが、
孤独の描き方がうまい監督さんですねぇ。
孤独を埋めるために好きなモノを増やし
人と人の触れ合いが乏しく、
温もりを感じられない世界です。
近未来の地球、雨が降り、
アジアンテイストな街や人々、
強力わかもとの電子看板のインパクト(笑)
強力わかもとの電子看板のインパクト(笑)
感想
危険な仕事、汚い仕事、
男性を慰める仕事。
人間が嫌がる仕事を
代わりに課せられた
レプリカント。
新しい感情が芽生えはじめる。
レプリカントが
都合が悪い存在になってしまう。
だから、生かしてはおけない。
「死刑というときまりが悪い。
だから解任と呼ぶ」
「奴隷狩りなんて言うと
差別用語になるから使っちゃまずい」
そんな人間の詭弁をナレーションが語る。
レプリカントを通して感情が生まれる描写が素晴らしい。
最も繊細な感情を
見せるのがリーダーの ロイ・バッツィ。
脅え、恐怖、不安、緊張、怒り自分の人生を生きたい。
植えつけられた記憶ではなく
本物の思い出がほしいんだ。
そのためにもっと時間がほしい。
寿命をのばせないか?
彼らの心の叫びがスタイリッシュな映像と
ムーディな音楽にのせて描かれます。
プリス(ダリル・ハンナ)
「私たちは機械じゃない、人間よ。ロイはやり場のない悲しみを味わう。
闘いの途中で
再び、横たわる彼女のもとへ近づく。
すると…
愛おしい気持ちが湧き上がってきます。
この瞬間が最も切ない。
彼はデッカードを襲いながら、
まるで自分自身を襲わせるように
あおる。
仲間を救えなかった自分を罰するように
自分に傷みを与えることで、
意識を失うことを防ぐ。
自傷行為でやり場のない痛みをちらし
生きている実感を味わうのです。
キリストのように手の平に傷を負った
レプリカントが
最後に芽生えた感情とは?
人間も自分たちと同じ、
寿命をコントロールできない生物なのだ。
今すぐではなくても
結局は同じ運命なのだと悟る。
その瞬間、デッカードに腕を伸ばす。
悟りから許しへと感情が変化したのだ。
教会の鐘の音のようなBGMと
共に平和の象徴=白鳩が
空に羽ばたいていく。
恨み憎しみが空へ消えていく。
彼らの寿命はいつまで?
哲学的なテーマが魅力のSF映画でした。