「僕の手に触れろ!
いつ死ぬ?未来を教えろ!」
特殊能力(千里眼)が備わった彼に、
人々が自分の未来をたずねる。
交通事故から目覚めたのは5年後、
足が不自由になり、
恋人は結婚して子供までいた。
俺の人生を玩具にした神がうらめしい。

「デッド・ゾーン」
デヴィッド・クローネンバーグ監督
1983年

(画像お借りしました)
「シャイニング」「ペットセメタリー」
「ニードフルシングス」「ランゴリアーズ」など
人間をミステリー、ホラー、SF
色んな角度で描く作家スティーブン・キング

クローネンバーグ監督といえば、
グロテスクな映像・・・というイメージがあります。
でも、今作は詩的で大変美しく儚い作品。

主人公ジョンを演じるクリストファー・ウォーケン。
ジャケットの襟をたてて、杖を持つ姿は
死神かバンパイアのように神秘的。

スリーピー・ホロウの1節
物語に奥行きを出しています。
主人公の心模様とあいまって、大変効果的です。


【感想】
「君には5年でも、
ボクには昨日だ」
かつての婚約者の腕に赤ちゃんが抱かれている現実。
昏睡で眠っていた年月の長さを思い、
ジョンは少し微笑みながら、うつむく。
彼女を責めることはできない。
「サラ、髪を切ったんだね?」 
「えぇ、ジョニー。
もうだいぶ前に。。」
2人の間に壁ができたシーン。
なんともやるせない空気がいいんです。
彼には千里眼が備わっていた。
相手のにふれると、
その人の人生、家族、
過去、未来がみえる。

「選挙で誰が当選するかあててみろ!」
「僕がいつ死ぬのかみてみろ!透視しろ」
「連続殺人犯をみつけてくれ!」
「犬、子供をさがして!」



彼のもとへ大量の手紙が届く。
棚に積み上げられた手紙の束。

「どうして、手紙を読まないのか?」

「ここにあるのは心の平和を求めている人からの手紙
 僕には開封できない。
だって、
皆の願いを叶えてあげられないから」

寂しそうに答えるジョン。
誠実な両親に育てられ、
心優しい彼の人柄が描かれた場面です。

火事を予言し、殺人事件を暴き、少年を救う。

能力が強くなればなるほど、体が衰弱していく。

上院議員選挙が近づいてきた。

ジョンは立候補者のを2度握る。
一度目は、選挙運動のとき。
二度目は・・・

神からさずかった能力だと?
トラックにぶつけられ、脚も不自由になり、
5年を無駄にし、恋人は他人と結婚・・・
神はボクをおもちゃにした!
運命を恨んでいた彼だったが、

「今は、神の恵みだと思う」
そんな考えに変わる。

自分に課せられた使命を果たす、
孤独な男の美学にしびれました。

※2018年4月の記事を再編集しました。