貧困緩和を名目に規制緩和させ輸入依存にして貧困増幅!

 

 米国は、自身は手厚い農業支援を温存し、相手国には徹底した規制緩和を要求する。   米国は自由貿易とかlevel the playing fieldとしばしば言うが、彼らが求めるのは「米国(発のグローバル企業)が自由に利益を得られる仕組み」=「自由貿易」なのである。そうして、関税を撤廃させた国の農業を補助金漬けの米国農産物で駆逐してきた。

 

 ハイチでは、IMFの融資条件(conditionality)として、1995年に米国からコメ関税の3%までの引き下げを約束させられ、コメ生産が大幅に減少し、コメ輸入に頼る構造になっていたところに、2008年のコメ輸出規制で、死者まで出ることになった。フィリピンでも死者が出た。米国の勝手な都合で世界の人々の命が振り回された。

 

 貧困削減の名目で、米国の牛耳るIMFや世界銀行の融資の見返りに徹底した規制緩和をさせ、米国穀物に依存させ、コーヒーなどのプランテーションで現地農民から収奪し、貧困を増幅した。利益を得るのはグローバル穀物商社やグローバル食品企業である。

 

 この規制緩和が最も徹底されたのがアフリカ(特にサハラ以南)である。小麦などの輸入先は現在米国ではないが、基本的な輸入依存体質を作ったのは、米国主導の規制撤廃の強要だった。それがもたらした脆弱性が、今回のウクライナ紛争でも露呈し、真っ先に飢餓に陥った。

 

 米国は「安く売ってあげるから非効率な農業はやめたほうがよい」と言って世界の農産物貿易自由化を進め、基礎食料の生産国が減り、米国などの少数国に依存する市場構造になったため、需給にショックが生じると価格が上がりやすく、それを見て、高値期待から投機マネーが入りやすく、不安心理から輸出規制が起きやすくなり、価格高騰が増幅されやすくなったことが、2008年の危機を大きくした。高くて買えないどころか、お金出しても買えない事態になった。この構造が今回も問題を深刻化する原因になっている。

 

 米国は「武器より安い武器」としての小麦やトウモロコシなどの穀物農家の手取りを確保しつつ世界に安く輸出するための手厚い差額補てん制度があり、それによって、穀物への米国依存を強め、ひとたび需給要因にショックが加わった時に、その影響が「バブル」によって増幅されやすい市場構造を作り出しておきながら、その財政負担が苦しくなってくると、何か穀物価格高騰につなげられるキッカケはないかと材料を探す。それがバイオ燃料需要への仕向けだ。

 

 そうした中、2000年代初頭、国際的なテロ事件や原油高騰が相次いだのを受け、原油の中東依存を低め、エネルギー自給率を向上させる必要がある、そして、環境に優しいエネルギーが重要であるとの大義名分(名目)を掲げ、トウモロコシをはじめとするバイオ燃料推進政策を開始したのである。その結果、見事に穀物価格の吊り上げへとつなげた。

 

 トウモロコシの価格の高騰で、日本の畜産も非常に苦しい状況に追い込まれたが、トウモロコシを主食とするメキシコなどでは、暴動なども起こる非常事態となった。メキシコでは、NAFTA(北米自由貿易協定)によってトウモロコシ関税を撤廃したので米国からの輸入が増大し、国内生産が激減してしまっていたところ、価格暴騰が起きて買えなくなってしまった。米国戦略の犠牲になった「人災」である。

 

 今回の穀物価格高騰も原油高を背景にしたバイオ燃料(トウモロコシのエタノール、大豆のディーゼル)が大きな要因になっており、この需要は政策的に穀物価格高騰の増幅のために使われることがある点も押さえておく必要がある。

 

 食料輸入途絶の怖さをメディアも報じ始めたが!

 途上国だけでなく、日本の輸入依存体質の形成も、まさに同じ構造であることは言うまでもない。輸入途絶のリスクが現実味を帯びる中、日本の脆弱性をメディアも報じ始めた

 

 4月19日、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」(日経系)でも、農水省が提示している有事に食料輸入がストップしたときの国産だけによる危機対応の食事として、朝食、昼食、夕食、すべてイモを中心とした食事を再現した映像を放送し、先進国最低の37%しかない食料自給率でいいのか、と報じた。

 

 そして多くの食料を輸入に頼る日本。今後、自給率を上げるために必要なことは? 」と問い、「農家が赤字になったら補填する、また、政府が需給の調整弁の役割を果たし、消費者も助け、生産者も助かるような仕組みを日本にも入れること」という筆者のコメントを放映した。

 

 4月28日の日経新聞も、「食料安保、最後はイモ頼み~不測の事態に乏しい備え」(ニッポンの統治・空白の危機感)と題した記事で、「各国が自国優先で輸出を止めた場合、日本は食料が確保できなくなる恐れがある」を筆者の言葉として紹介した。

 

 「規制緩和・自由化が原因」

 と指摘すると「規制緩和・自由化が足りないから」と反論する市場原理主義者

 

 しかし、その記事への読者コメントとして「安定した供給を可能にする自由貿易」の必要性が経済学者から語られている。「自由貿易に頼り自国の食料生産を破壊したら有事に国民が飢えるから自給率を上げるのが安全保障だ」という当たり前のことを理解してもらいたい。さらに、彼らはそれに対する反論として「自由貿易と自給率向上は両立する」と主張する。しかし、どうやったら両立するのか、その根拠となる説得的説明は未だに聞けていない。

 

世界的にも同様で、「貧困緩和の名目で規制撤廃・貿易自由化を強要して貧困を増幅した。原因は規制撤廃・自由化だ」と指摘すると、「違う。規制撤廃・自由化が足りないからだ」と反論する。明らかな論理破綻を市場原理主義者は反省しない。

 

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世界食糧計画が「2億7000万人が飢餓に向かっている」と声明。同時に、2021年は国連発足以来最悪の人道的危機の年となると警告 - In Deep

 

 ロックダウンと移動の制限による「人為的な大量死」の予兆!

 パンデミックのようなことが起こらなかったとしても、世界ではもともと「食糧問題への懸念」が拡大し続けていました。気象の異常や、一部の国や地域などでの内戦などにより、すでに世界では非常に多くの人が食糧にアクセスすることが困難になりつつあります。

 

 その中で今年、「感染症対策」として突如として世界中で行われたロックダウンや、国境の閉鎖、移動の制限などの中長期的な影響が明らかになってきていまして、いよいよ食糧の問題は来年あたりから、多くの国や地域で深刻化しそうです。

 

 国連世界食糧計画 (WFP)は、12月5月の国連総会において、今後数カ月間の食糧に関しての見通しを発表し「このままだと 2021年の人道的危機は壊滅的なものとなる」

として、過去 1世紀の中で最悪の飢餓や食糧不安がおとずれることを警告しました。

それを報じていたロシア・トゥディの報道をまずはご紹介します。

 

 「2021年は壊滅的になるだろう」と国連は歴史上最悪の危機に直面していると警告した!

‘2021 going to be catastrophic,’ UN warned it faces worst crises in its history
RT 2020/12/05

 国連世界食糧計画の責任者は、これから数か月について悲惨な予測を立て、2021年に予測される「壊滅的な」人道的危機を警告した。2021年は過去 1世紀のどの状況よりも最悪の年になる可能性がある。

 

 世界食糧計画のデビッド・ビーズリー事務局長は、12月4日の国連総会で警告を発した。この会議は、国連の努力の影響を鈍らせている新型コロナウイルスのパンデミックの中で、世界的な努力を議論するために招集された。

 

 事務局長は、現在、「約 2億 7000万人の人たちが飢餓に向かって進んでいる」と警告し、一部の国では飢餓に「ほぼ直面している」として以下のように述べた。

 

 「 2021年は、現段階での状況に基づいて予測すれば、文字通り、壊滅的(カタストロフィック)なものになるでしょう。世界はすでに(緊急経済対策に)19兆ドル(約 1900兆円)を費やしたこともあり、今後、それらの国のお金を利用することができない可能性があります。経済の収縮はすでに始まっており、2021年の各国からの援助資金は十分なものにはならないでしょう」

 

 「私たちは、文字通り 2021年が国連の発足以来最悪の人道的危機の年であると考えており、そうなることを避けなければなりません」

ビーズリー事務局長は、パンデミックと政府のロックダウン政策がこれらの不穏な傾向を後押ししているとして、「経済的な波及効果を考えると、これらはコロナウイルスによるものより(人命や健康状態を)悪化させる可能性があります」と述べた。

 

 シリア、イエメン、南スーダンで進行中の紛争に対しても、「人為的な紛争」も、人道的危機をさらに拡大させる要因になると述べた。

 「私たちはこれらの紛争のいくつかを終わらせなければなりません。 そうすれば、私たちが望む持続可能な開発目標を達成することができるはずです」と言い、紛争、健康危機、そして迫り来る飢饉を「タイタニック号の前面にある氷山」と呼んだ。

 

 「私たちが戦略的に、これらの特定の氷山に資金を投入すれば、ワクチンを使って経済を再建しながら 2021年を乗り切ることができると私は確信しています」

8月に事務局長は、栄養失調に直面している人々の数が 2020年の年末までに 80%急増する可能性があると述べ、数百万人が飢餓の危険にさらされており、「聖書であらわされているような飢餓」という表現を使い警告していた。

 

 その一方、ユニセフは 5月に、118の低中所得国で、5歳未満の 120万人の子供が次の 6か月で死亡する可能性があるとし、ロックダウン、夜間外出禁止令、食糧等の輸送の混乱、および医療へのアクセスの減少による子どもの死者の急増を予測した。

 

 今後、数億人の単位で深刻な飢餓に陥る人たちが出てくると述べています。

 それで、このような国連機関とかユニセフというのは、基本的に低中所得国に対して援助などの活動を行っているわけで、今まではそれが基本で問題はなかったのだと思いますが、現在のパンデミック下の「飢餓」は主要国でも起きているというのが、これまでと異なるところです。

 たとえば、11月24日の米ナショナルジオグラフィックは、「2020年の終わりには、アメリカ人の子どもの 4人に 1人が飢餓に直面する」と報じています。

 

 パンデミックが続く中、2020年にはアメリカ人の6人に1人が飢餓に直面している可能性がある!

 ホリデーシーズンが近づくにつれ、何キロも続くフードバンクへの人々の列は、アメリカの飢餓が 2007年の不況のピークをすぐに超える可能性があることを示唆している。

One in six Americans could go hungry in 2020 as pandemic persists
nationalgeographic.com 2020/11/24

 

 米国内最大の飢餓救済組織であるフィーディングアメリカ (FeedingAmerica)によると、今年の終わりまでに、5,000万人以上が食糧不安を経験する可能性があるという。これは、アメリカ人の 6人に 1人であり、子どもの場合は 4人に 1人となり、2019年からほぼ 50%増加している。

 

 6月の米ノースウェスタン大学の調査によると、食糧需要はアメリカ全国で 2倍になり、子どもがいる世帯では 3倍になった。

 

 10月、フィーディングアメリカによるフードバンクと食糧配給のネットワークは、パンデミック前の平均月から 52%増加し、約 5億4800万食を配布した。ホリデーシーズンが近づいており、12月はそれ以上になる可能性がある。

 

 「これまで見たことがないような数の人たちが空腹に陥っています」とフィーディングアメリカの担当者は述べる。

 

 現在起きている問題は、数千万人のアメリカ人たちが影響を受けるのに十分なものであり、食料貯蔵は少なくなっている。フードバンクは、連邦政府がアメリカ人へ食糧供給を継続できるようにする新たな刺激策を通過させるのを待っている。

 

 このように、アメリカでは、数千万人が飢餓に直面しているか、あるいは、飢餓に陥っているということで、今のところ、アメリカではフードバンクやフードスタンプという食糧配給システムが機能しているために、それ以上の人道的危機にはなっていませんが、しかし、「いつの日か、この無料食糧配給システムが機能しなくなったらどうなるのだろう」という懸念はあります。

 

 無料で配給できる食糧は「無限ではない」です!

 そもそも、アメリカでもヨーロッパでも、事実上の再度のロックダウンあるいは継続している国や地域はあるわけで、2021年になって「すべて問題が解決する」というようには行かない可能性が高いです。

 このような状態で、国家としての経済や景気の復活はともかくとして、「個人」の経済状態の復活に関しては、業種にとっては絶望的となっています。

たとえば、12月3日のアメリカの報道では、調査によって、以下のようなことが進んでいることがわかっています。アメリカの調査機関 Yelp の数値です。

 

 パンデミック以来、アメリカで起きていること

・毎日 800以上の企業がビジネスを閉鎖している。

・3月のアメリカのロックダウン時に閉鎖したビジネスの 60%が再開していない。

・2月から9月の間に 31万6,000以上の企業が閉鎖。

Daily Wire

 

  春のロックダウンから時間が経過するにつれて、さらに事態は悪化しているようなのです。

 現在も再度のロックダウンを続けているヨーロッパの各国でも同じような厳しい状況となっていることが考えられます。

 そして、「国からの支援」の多くも、じきに停止されていくことになっていまして、アメリカでは  12月31日に、「家主による賃借人への立ち退きの一時停止措置の期限が切れる」ことになっています。

 

 つまり、2021年1月1日から膨大な数の立ち退きが発生するとみられています。これに関しては、過去記事「2020年は単に地獄の蓋が開いただけで、2021年からその本番に」という記事にも記しましたが、現在、立ち退きに直面しているアメリカ人の数は 800万人と予測されています。

 

 そして、「世界の感染状況はどうなっているか」といいますと、以前、「気温が低下するとコロナウイルスの感染事例は爆発的に増加する」という米ゴールドマンサックスのデータを「コロナウイルスの感染事例は「正確に気温と反比例する」」という記事でご紹介したことがありますが、北半球の多くの国や地域で、この「気温の低下に沿った感染確認者数の増加と入院患者数」となっています。

 

 世界中のほとんどの人たちがマスクをし、社会的距離を強要され、集会や移動の制限や部分的ロックダウンを行い続けていてこれですからね(実際には、秋に各国でマスクの強制化が始まってから感染事例の増加は加速しています)。

 

 そして、気温が下がる本番はこれからなんです。

 

 とても 2021年早々に、事態が好転するようには思えません。各国の小型のビジネスの閉鎖、「個人」の経済的困難の増加はむしろ加速するのではないでしょうか。

 アメリカにしても他の国や地域にしても、本来的な意味でもたらされる飢餓とはちがった「新しいタイプの飢餓」に覆われる可能性があります。

 

 これは他の言い方をすれば、「作られた飢餓」です。それが 2021年頃から広がっていくのだと思われます。

 

そして……。

 前回の以下の記事で書きましたように、「近いうちに寒冷化の世界となる」可能性が高くなっています。

 

 「太陽の逆光サイクル」と呼ばれる惑星間引力の作用により 2020年代から「ミニ氷河期にほぼ100%突入する」ことを知る
投稿日:2020年12月6日

 

 この記事では、現在と同じような状況だった 1260年「の後の状況」を取り上げていますが、飢饉による死者が多い非常に苛酷な時代がしばらく続いたようです。

 

 そして、「飢餓の蔓延」は必然的に社会全体の健康状態を悪化させますので、パンデミックから始まった飢餓による健康の悪化が、さらなる感染症の蔓延を招く、というどうにもならない「恒久的な輪廻の繰り返し」が社会で発生して不思議ではないです。

先ほどリンクした過去記事でも書きましたけれど、どうやら、

「本格的な苦難が始まるのは 2021年から」