弘前の街を後にして、車を国道394号線へと向けました。
津軽と南部をつなぐこの道は、静かな森の中を抜けていく山岳ルート。
少しずつ標高が上がり、窓を開けるとひんやりとした空気が入り込んできます。
これから名湯・酸ヶ湯温泉が待っていると思うと、自然とアクセルを踏む足も軽くなる気がします。
途中、城ヶ倉大橋のスケールに圧倒されつつ、カーブの多い山道を慎重に進んでいくと、ふわりと硫黄の香りが漂い始めました。
「あ、近いな」と思わせてくれる、温泉地ならではのサインです。
そして到着した酸ヶ湯温泉。
入口をくぐると、昔の旅館を思わせる木の温もりあふれる空間に、ねぶたの飾りがそっと彩りを添えて迎えてくれました。
受付を済ませ、脱衣所でいつものようにスルリと服を脱いだら、そのまま浴場へ向かいます。
白く濁った湯で知られる「ヒバ千人風呂」は、目の前に広がる光景がただただ圧巻。
160畳の広さを誇る総ヒバ造りの大浴場は、その存在感に思わず息をのむほどです。
湯気がもくもくと立ちこめる大空間へ足を踏み入れた瞬間、旅の疲れがふっと溶けていくような感覚に包まれました。
身体を包み込むお湯はやや熱め。
肩まで浸かると、じんわりと効いてくるのがはっきりと分かります。
三百年以上もの間、この湯が多くの人を癒してきたのだと思うと、自然と背筋が伸びるような気持ちになります。
「ヒバ千人風呂」には、熱の湯(あつめのゆ)、四分六分の湯(しぶろくぶんのゆ)、鹿の湯(しかのゆ)、冷の湯(ひえのゆ)という4種類の浴槽があります。
泉質は、単純硫黄泉(pH2.0を下回る強酸性)。源泉をかけ流しで楽しめます。
混浴ではありますが、湯あみ着を着用できるので、女性でも比較的安心して入れると思います。
館内には、趣のある椅子が並ぶ休憩スペース「御鷹々々サロン」があり、湯上がりのほてった体をゆっくり冷ますにはぴったりの場所。渓流を望む窓辺の景色を眺めながら、しばし身をゆだねます。
廊下には「棟方志功ギャラリー」が設けられ、売店には青森県のおみやげや酸ヶ湯温泉オリジナルの品々がずらり。歩くだけでもちょっとした小旅行気分です。
外へ出ると、ひんやりとした風が頬に心地よく、思わずベンチに腰掛けて深呼吸。
湯上がりならではの贅沢なひとときが広がります。
「来てよかった」と素直に思える、そんなひとときでした。
ドライブの達成感と名湯の癒しが両方味わえる、特別な場所でした。
次は雪の季節にも訪れてみたいな、なんて思いながら、帰りのエンジンをかけました。



