フィギュア岡山 躍進の基盤 (上)
貸し切りリンク
日本フィギュアスケート界のホープ田中刑事(16)の練習拠点・ヘルスピア倉敷(倉敷市連島町西之浦)。バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔(関大大学院、翠松高出)がかつて腕を磨いたリンクだ。現在は学校法人加計学園(岡山市)が所有。10月から5月までの営業期間中、フィギュアやアイスホッケーなどのクラブ、一般愛好者も受け入れるが、同学園が運営する理大付高2年の田中は、部活動として優先的に貸し切り利用できる。
納得いくまで滑り込む
将来、五輪を目指すような選手にとって「貸し切り」は喉から手が出るほど欲しい環境だ。周りを気にせず思い切ってジャンプやスピンができ、曲をかけて行う通し練習も、順番待ちすることなく納得いくまで繰り返せる。
競技人口の多い都市部では“芋の子を洗うような”リンクで滑り、大会が近づくと、練習しやすい場所を求めて遠方まで出向くパターンが多い。それでも貸し切りとなれば、早朝や深夜しか空きがないことがほとんど。全国高体連スケート専門部は「高校生の競技環境はまだまだ整っていない」と指摘する。
田中はそれとは対照的に、毎日でも存分に練習でき、1時間当たり2万円かかる貸し切り利用料も免除される。「今の自分があるのは、このリンクで集中的に滑り込めたおかげ」と感謝する。
救いの手
田中の成長に大きく貢献しているこの練習環境は、どのようにして成り立ったのか。
同リンクは、元は厚生年金福祉施設「サンピア倉敷」。年金改革の一環で売りに出され、2009年2月に同学園が3億3千万円で購入した。なかなか買い手がつかず、閉鎖も取りざたされていた中、救いの手を差し伸べた格好だ。「学園の教育施設としての活用はもちろん、岡山スケート界の発展に協力できると取得を決めた」と同学園評議員でもある理大付高の橋爪道彦校長。
岡山県スケート連盟をはじめとする熱心なリンク存続運動も、同学園の動きを後押しした。署名活動などに奔走した同連盟の大西洋副会長は「大輔が巣立ったリンク。後に続く選手も育っており、絶対つぶしてはならないという気持ちだった」と振り返る。
10年春、理大付高アイススケート部が、第1号部員に田中を迎えてスタートした。
高橋に続け
高校で専用リンクを持つのは、世界女王の安藤美姫や浅田真央が通った中京大中京高(愛知)、高橋大輔が進学した関大の系列校・関大高(大阪)しかない。この2校と並ぶ屈指の環境にあこがれ今春、昨季の全日本ジュニア2位の友滝佳子ら2人が入部。田中に続こうと練習に励む。日本スケート連盟の強化選手となり国際大会にも派遣された友滝は「リンクに恩返しできるよう結果を残したい」と力を込める。
岡山県にはほかに、通年営業の岡山国際スケートリンク(岡山市北区岡南町)もあり、練習場の充実度は地方では最高レベル。日本連盟の吉岡伸彦フィギュア強化部長は「岡山にはリンク、指導者、才能あるスケーターという土壌がある。高橋に続き世界で活躍する選手が出てきてほしい」と期待する。
◇ 日本男子フィギュア初の五輪メダリスト高橋大輔を生んだ岡山。不況の影響などで各地のリンク事情が厳しさを増す中、ヘルスピア倉敷、岡山国際スケートリンクの2施設を中心に、国内有数の選手育成拠点になりつつある。新たな強化が進む岡山フィギュア界の現状を追った。
(2011年11月18日掲載)
サンデースポーツ
エリック杯現地予定表<