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ママたちはエルメスを隠せないVol.556「折り返しの、確信」
前半を1-0で折り返した。
正直に言えば、
まだ信じきれていなかった。
全国大会。
相手は各県を勝ち抜いてきた代表校。
その相手に、
私たちがリードしている。
しかも、自分が感じた違和感、
伝えた修正、それをピッチで
一瞬も迷わず体現してくれた。
その事実が、
胸の奥で何度も反響していた。
ハーフタイム。
控室に戻ってくるみんなを、
Rと並んで拍手で迎えた。
息を切らしながらも、
誰一人、下を向いていない。
私は真っ先にMの前へ行き、
思わず声を張った。
「ナイス!シュート!」
Mは少し照れたように笑い、
でもすぐに首を振る。
「いや…みんながつないでくれたから。
あれは、決めなきゃダメなやつだろ」
その瞬間、
Rがすかさず口を挟む。
「出た!謙虚ぶるやつ!
全国初ゴールだよ?
もっと喜べ!」
控室に笑いが広がる。
張りつめていた空気が、
少しだけ緩んだ。
Kがタオルで顔を拭きながら、
私を見た。
「修正、すげー効いたな。
正直、あのままだったら
ズルズルいってたと思う」
私は首を振った。
「みんなが、
そのままやってくれたからだよ。
それが一番すごい」
誰かがうなずき、
誰かが深く息を吐く。
落ち着いている。
でも、気持ちは燃えている。
私は、
ホワイトボードの前に立った。
「後半も、
基本は同じ形でいこう。
でも相手、
絶対に修正してくる」
ペン先でラインをなぞる。
「たぶん、
最終ラインを一枚下げて、
裏への対応を厚くしてくる。
そうなったら、
縦に急がない」
中盤を指す。
「一度、
中で数的優位を作って、
相手のアンカーを引き出す。
そこが動いた瞬間、
逆サイドに展開」
視線を上げる。
「SBは、
無理に上がらなくていい。
後半の立ち上がりは、
一回、相手を前に出させよう」
みんなの目が、
真剣にこちらを向いている。
「そして、もう一点、取りにいく。
守るだけはしない」
少しだけ、
声を落とした。
「終盤、相手はパワープレーに来る。
ロングボール増える。
だから、
セカンドボール、絶対拾うこと。
ライン下げすぎない。
間延びしない」
誰も、目を逸らさなかった。
その様子を、
取材のカメラが静かに追っている。
でも、もう気にならなかった。
監督は、
何か言いかけたようだったけど、
一度、口を閉じ、
ただ、うなずいてくれた。
最後に、Kが前に出る。
「よし。
後半、もう一点、行くぞ」
一人一人の顔を見渡す。
「集中。
絶対、集中切らすな。
俺たち、ここまで来るまでに
何校、倒してきた?」
拳を握る。
「その全部の思い、
背負ってる。
だから、絶対、勝つ」
一拍置いて、
声を張り上げた。
「さぁ、行こう!!」
「よっしゃー!!」
その声に、私とRも胸が震えた。
一人一人と
ハイタッチを交わし、
ピッチへ送り出す。
背中を見ながら、
私は確信していた。
このチームはまだ、
止まらない。





