誠実な決断、交錯するビジネスの筋|ママたちはエルメスを隠せない 第926話
笹崎ホールディングス会長・栄一から、
ついに笹崎建設のCM出演依頼を
直接打診された氷川瑞希。
日本屈指の巨大グループの広告という
華やかなオファーの裏で、
瑞希は父・和也が経営する「誠広」への
代理店スイッチという誘惑に直面する。
しかし、彼女が選んだのは、
これまでの恩義を重んじる
驚くべき回答だった。
父と娘、そして経営者たちが織りなす、
信頼と誠実さに満ちたビジネスの対峙を描く。
前話はコチラ

巨大グループの始動:笹崎建設のCMオファー
リビングの柔らかな光の中で、
栄一は満足そうに頷きながら、
ついに核心となる話を切り出した。
「瑞希、前に少し話したことはあるけれど、
うちの会社のCMについてなんだ。
いつかお願いできれば、
と言っていたことが、
いよいよ現実の話になりそうでね」
太田は表情こそ崩さなかったが、
内心では激しく胸が高鳴っていた。
日本経済を牽引する笹崎グループが、
本格的に氷川瑞希を「顔」として
起用しようとしている。
その重みは、これまでのどの仕事とも一線を画す。
「はい、そうなれば嬉しいですけど」
瑞希が控えめに微笑むと、
栄一はさらに言葉を重ねた。
「グループ会社の笹崎建設の
イメージキャラクターとCMを
お願いできないかと、
広報から正式に話が上がってきてね。
社員たちは、圭太と瑞希が同じ学校で、
サッカー部での繋がりがあることも
よく知っている。
それで、私から直接、瑞希に聞いてもらいたい
ということなんだ。どうかな、瑞希」
「喜んでお受けいたします。
そんな大きなお話を
いただけるなんて、光栄です」
瑞希が迷いなく答えると、
栄一は太田へ視線を向けた。
太田もまた、瑞希のキャリアにとって
これがどれほどの飛躍になるかを瞬時に計算し、
プロフェッショナルな顔で応じる。
「会長、このお話、事務所としても
ありがたくお受けさせていただきます」
「そうか、よかった。これは嬉しいね。
私から瑞希を無理に推したわけでも
何でもない。単純に、一企業としての
選定で瑞希が選ばれたんだよ。
それが何より嬉しい」
代理店スイッチの誘惑と、瑞希の矜持
栄一は本当に嬉しそうに目を細めた。
しかし、そこからふと表情を引き締め、
ビジネスの顔に戻って太田に断りを入れる。
「太田さん、瑞希に一つ、
少し突っ込んだことを聞いてもいいかな?」
「はい、構いませんが」
太田が固唾を飲んで注視する中、
栄一は瑞希の目を真っ直ぐに見つめた。
「瑞希、もう業界の仕組みも
分かってきたと思うから、
あえて聞くよ。
瑞希をCMに使うとなると、
どうしても私は、瑞希のパパの会社……
誠広に担当をお願いするかどうか、
悩むんだよ。わかるかい?」
瑞希の父・和也が経営する誠広。
もし笹崎グループの案件を誠広が
受注すれば、莫大な利益と業界内での
地位向上が約束される。
実の父を助けたいという
情に流されても不思議ではない場面だった。
しかし、
瑞希は一瞬の淀みもなく、静かに答えた。
「そのことなら、今まで通り、
廣報堂さんへお願いしてください。
確かに父の会社の利益にはなりますが、
『私がいるから』という理由だけで、
長年の付き合いを簡単に
変えてほしくないんです。
廣報堂さんにはサントピアのCMの時も
本当によくしていただいたし、
あの方たちを……なんて言うか、
裏切るようなことはしたくないんです」
父と娘、鏡合わせの誠実さ
栄一は一瞬驚いたように目を見開いたが、
次の瞬間、思わず声を上げて快活に笑った。
「ははは! 瑞希は本当に優しいな。
……わかったよ。
瑞希は、パパと全く同じことを言うんだね」
「パパと?」
瑞希が意外そうに目を丸くすると、
栄一は楽しそうに種明かしをした。
「ああ。今日、みんなにこの話をする前に、
和也君には事前に打診していたんだよ。
『瑞希を起用するなら、
誠広にスイッチしようか』とね。
だが和也君は、
『娘の仕事に甘えるような真似はしたくない。
今まで通り、廣報堂さんとの
筋を通してください』と、
即座に断ってきたんだ」
「そうだったんですね……」
太田も思わず感嘆の溜息を漏らした。
瑞希の真っ直ぐな誠実さと、
娘の立場を尊重し、
ビジネスの筋を通そうとした和也の
不器用なまでの親心。
二人の想いは、まさに
鏡合わせのように一致していた。
リビングを包むのは、ビジネスの冷徹さではなく、
互いを思いやる深い信頼の空気だった。
「わかった。瑞希の気持ちは受け取ったよ。
最高のCMにしよう」
栄一の力強い言葉に、瑞希は誇らしげに頷いた。
しかし、この決断が新たな物語の幕開けとなり、
業界の波紋を呼ぶことを、
その場の誰もが確信していた。
ーつづくー
*このお話はフィクションを含みます。
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【あとがき:第926話を振り返って】
今回は、瑞希の人間としての成熟と、
父・和也との深い精神的な繋がりを描きました。
笹崎グループという巨大な利権を前にしても、
己の利益より「筋」と「恩義」を優先する瑞希。
それは、和也が背中で見せてきた
「仕事の美学」が彼女にしっかりと
受け継がれている証拠でもあります。
和也が事前に栄一の申し出を断っていたと
いうエピソード。ビジネスの場であっても、根
底にあるのは人としての信頼関係。
この決断が、今後の瑞希の女優としての
評価をさらに高めていくことになるはずです!
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