新たな対峙、笹崎邸での運命の夜|ママたちはエルメスを隠せない 第924話
来年の神埼聖司との映画共演を控え、
一筋の覚悟を宿した氷川瑞希。
そんな彼女に、恋人・圭太から
「父の元へ来てほしい」との連絡が入る。
笹崎グループ会長・栄一による
CM起用の打診は、
単なる出演依頼に留まらず、
父・和也の経営する広告代理店・誠広と
業界最大手・廣報堂の勢力図をも
揺るがしかねない事態を予感させる。
公私の境界線上で揺れる、
瑞希の新たな挑戦が幕を開ける。
前話はコチラ

動き出したもう一つの運命
来年、実の父である神埼聖司との再会という、
避けては通れない大きな山が控えている。
瑞希は鏡の中の自分を見つめ、
「大丈夫」と静かに呟き、
その瞳に一筋の覚悟を宿した。
そんな中、もう一つの運命が音を立てて動き出す。
夜、圭太から連絡が入った。
「お疲れ。今度、父さんの所に来れる日ある?
仕事の帰りでも。
太田さんも一緒でいいかな?」
瑞希はすぐにピンときた。
以前、圭太の父・栄一が冗談めかして
言っていた「いつか瑞希にうちのCMを」
という話が、ついに動き出すかもしれない。
代理店戦争の火種:誠広と廣報堂
しかし、これは単なる出演依頼の
枠には収まらない。
太田も同じ緊張感を抱いていた。
笹崎グループの広告を独占する
最大手の廣報堂に対し、
瑞希の父・和也が経営するのは
同じ広告代理店の誠広だ。
もし瑞希の起用をきっかけに
代理店の勢力図までが
動くようなことになれば、
業界全体を揺るがす大騒動になる。
栄一は瑞希を「一人の女優」として呼んだのか、
それとも親同士の信頼関係を含めた
大きな一手を打とうとしているのか。
太田の脳裏には、
ビジネスとしての冷徹な計算と、
瑞希を守るべきマネジメント
としての誇りが交錯していた。
慣れ親しんだ門、異なる緊張感
二日後。仕事終わりに、
瑞希、太田、田中の三人は笹崎邸を訪れた。
瑞希にとっては親友・莉音の実家でもあり、
幼い頃から幾度となく訪れ、
栄一からも実の娘のように
可愛がられてきた場所だ。
「……着いたわよ」
太田の声に、瑞希は深く息を吸い込んだ。
田中がドアを開け、
瑞希は慣れ親しんだ門の前に立つ。
玄関先で待っていたのは圭太だ。
瑞希の恋人として、そしてグループの
跡取り息子として、
彼は少し硬い表情で二人を迎え入れた。
「パパ」との対峙、未来への一歩
「圭太、お邪魔します。パパは帰ってる?」
「ああ。父さん、リビングで待ってるよ」
幼い頃から「パパ」と呼び慕ってきた栄一。
だが、今日この門をくぐる意味は、
これまでとは決定的に違っていた。
太田もまた、誠広と廣報堂、
そして瑞希の将来を天秤にかけながら、
プロとしての鋭い視線を邸宅へと向けている。
「……行きましょう」
瑞希は静かに一歩を踏み出した。
この扉の向こうで待つパパが、
自分に何を託し、どんな未来を提示するのか。
育ての父・和也の進退にも関わりかねない、
逃れられない対峙の場。
瑞希は背筋を伸ばし、
慣れ親しんだ邸宅の奥へと、静かに足を進めた。
ーつづくー
*このお話はフィクションを含みます。
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【あとがき:第924話を振り返って】
今回は、瑞希のプライベートな
人間関係が大きなビジネスへと
繋がっていく重要な局面を描きました。
幼い頃から「パパ」と呼んできた
栄一からのCMオファーは、
本来なら喜ばしいことですが、
背後には広告代理店同士の熾烈な
争いが隠されています。
瑞希の父・和也の「誠広」を守るため、
そして女優・氷川瑞希としての
価値を証明するため、
彼女はこの対峙にどう臨むのか。
家族、恋人、そして仕事。
すべてが絡み合う笹崎邸での
話し合いの行方に、どうぞご注目ください。
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