二連覇の報告会、伝説への承諾|ママたちはエルメスを隠せない 第903話
高校サッカー選手権の二連覇を
成し遂げた青和学院で、
感動の優勝報告会が開催される。
壇上に呼び出された氷川瑞希は、
全校生徒の前で照れながらも
サッカー部への愛を語り、
温かい拍手に包まれた。
しかし、放課後の車内で待っていたのは、
二年間で五億円という破格の続投オファー。
制度そのものを終わらせる「伝説」としての
道を選んだ瑞希は、
親友・莉音と恋人・圭太の待つ
安らぎの場所へと向かう。
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講堂の喝采:元マネージャーの帰還
大会が終わった翌日。
瑞希は激闘の余韻に浸る間もなく、
いつものように青和学院へと登校した。
しかし、校内へ入った瞬間から
生徒たちの視線は、
昨日までとは明らかに違っていた。
羨望、尊敬、そして深い親愛。
講堂で行われた優勝報告会。
壇上には、二連覇という偉業を
成し遂げたサッカー部の面々と中島監督が並ぶ。
式が終盤に差し掛かった頃、
中島監督がマイクを握り、
いたずらっぽく笑った。
「さて、昨日の国立で一番目立っていたのは、
うちの選手じゃなくて……
泣き崩れていたあの
元マネージャーだったんじゃないか?
氷川、ちょっとこっち来い!」
全校生徒から地鳴りのような
歓声と拍手が沸き起こる。
瑞希は戸惑いながらも、
監督に促されてステージの中央へ立った。
沸き起こる「瑞希コール」。
「皆さん、改めて二連覇おめでとうございます。
昨日は……あんな姿を見せてしまって、
本当にお恥ずかしい限りです」
照れくさそうに頭をかく瑞希に、
生徒たちから「最高だったぞー!」
「泣き顔も世界一かわいかったよー!」
と熱い声が飛ぶ。
「実は、応援マネージャーとして
全校の分析をしていたんですけど……
正直に言います。
分析を進めれば進めるほど、
『あ、これ結局うちのサッカー部が
一番強いんじゃないかな?』って、
途中で少し絶望しかけました(笑)。
それくらい、みんなの努力は
データを超えていました。
私はもうマネージャーではありませんが、
いち生徒として、みんなが誇りです!」
部員たちを立てながら、
ユーモアを交えた瑞希の言葉に、
講堂は温かい笑いと一層大きな拍手に包まれた。
破格の提示:二年間で五億円の重み
放課後、裏門内に迎えに来ていた車に乗り込むと、
車内の空気は一転してビジネスのそれへと変わった。
太田は一枚の資料を差し出す。
「瑞希、お疲れ様。……単刀直入に言うわ。
JTVから、あなたが高校を
卒業するまでの二年間、
継続して応援マネージャーを
やってほしいと
正式にオファーが届いたわ」
太田の言葉に、瑞希は息を呑む。
「条件は二年間で総額5億円。
事務所のマネジメント料や
諸経費を引いたとしても、
あなたの手元にはおよそ1億円が
残る計算になるわ。
これほどの額になるのは、
あなたの続投が決まっただけで、
すでに数億規模のスポンサーが
動いているからよ。
あなたはもう、
大会の価値そのものを担保する存在なの」
瑞希が目を丸くしていると、
太田はさらに真剣な面持ちで言葉を継いだ。
「そしてもう一つ。
あなたが卒業した後は、
応援マネージャーという制度
そのものを廃止する。
JTVは、あなたを
『最後にして最高の伝説』にする覚悟よ。
……どうする?
受けるも断るも、あなたの自由よ」
瑞希は少しの間、
窓の外を流れる冬の景色を見つめていた。
一億円という大金や、制度の廃止。
その重みはまだ実感として
湧かなかったが、
答えは最初から決まっていた。
「……受けます。お金のことは
よくわからないけれど、
高校生活が終わるまで、
大好きなサッカーに、
あの熱狂の中にいられるなら。
……単純に、それが一番嬉しいから」
瑞希の迷いのない返答に、
太田は「そう言うと思ったわ」と
小さく口角を上げた。
安らぎの場所へ:自分へのご褒美
この日から、瑞希には待ちに待った
二日間のオフが与えられた。
両親には
「莉音のところに泊まってくるね」と
許可を得ていた。
そこは親友の家であると同時に、
恋人である圭太の家でもある。
一ヶ月近く続いた極限の緊張状態。
その糸をようやく解ける、
世界でたった一つの場所。
(やっと会える……。
莉音にも、圭太にも)
車が莉音の家に近づくにつれ、
瑞希の表情からは
「分析官」や「伝説」の仮面が剥がれ落ち、
一人の16歳の少女のそれに戻っていった。
これから始まる、気兼ねのない親友との夜。
そして愛する人との時間。
それは、激動の冬を駆け抜けた瑞希にとって、
何物にも代えがたい「最高のご褒美」だった。
ーつづくー
*このお話はフィクションを含みます。
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【あとがき:第903話を振り返って】
今回は、大会直後の学校での日常と、
その裏で動き出した巨額の契約を描きました。
校内での瑞希はどこまでも
「青和の一員」ですが、
大人たちの世界では
「五億円の価値を持つ象徴」となっています。
そのギャップを本人が
「サッカーが好きだから」という
純粋な理由で埋めてしまうのが、
瑞希の魅力ですね。
そして、ついに莉音と圭太の待つ家へ。
シルバーアクセのお手入れに



