バルセロナからロンドンへ戻り、主人と娘はペットのためにイギリス南西へ帰り、私と息子はロンドンで二日間、お友達に会ったり、ギャラリーや劇場へと足を運びました。
ロンドンの素晴らしいところは、今でも博物館、美術館が無料!
これはすごいことですね。観光客が溢れる街で太っ腹です。
バルセロナでは、どこに行っても1人20ユーロ以上していたので、
家族での観光はかなり経費もかかります。
ロンドンの博物館、美術館無料は観光客にとっても、しょっちゅう足を運ぶ
地元の人にとっても強い味方です。もちろん寄付は受け付けています。
私はコベント・ガーデンで働いていたので、短い休憩時間にでも
ナショナルギャラリーに行けていたのですが、今となっては予約していても
長い行列に並ばないと入場できません。
エコ団体の若者がゴッホのひまわりの絵にトマトスープをかけた事件以来、
手荷物検査が更に厳しくなったためです。水など水分は基本的に持って入れなくなりました。
さて、今回は息子が学校でターナーの"オランダの沈没船"を描いていたので、
その本物を見る、というのが1番の目的でした。ターナーと言えば、テイトブリテンの
方を思い浮かべる方も多いと思いますが、ナショナルギャラリーにも4枚ほど
ターナーの傑作があります。
こちらがそのオランダの沈没船です。荒い波とたちこめる暗雲。
迫力のある絵です。息子の教師の話によると、ターナーは波を体で感じるために
マストに自分の体をくくりつけて、荒波を実際に感じてから描いた、とのこと。
こちらもターナー。彼の絵は光で有名ですが、この絵もまた、
美しい光と時空の広がりを感じます。
ターナーは印象派より前なのですが、かなり時代の先を行っていたな、と思います。
45分並んで入場しましたが、館内はそう込み合っておらず、絵の前のソファでゆっくり
座って鑑賞できました。
さてこの辺りの部屋には、大好きな巨匠達の名作がずらり、と並んでいます。
モネの睡蓮。スープ事件があったに関わらず、生身で飾ってあります。ガラスなしです。
睡蓮はパリのオランジェリー美術館が有名ですが、ここロンドンでも観れるのは嬉しい限りです。
ドガ、ルノワール、、
小さい時に、図書館で何度も借りた画集で見ていた絵が目の前にある、、
なんだか信じられないようで、じっくりと見入ります。
その他にもゴッホ、ピカソ、と名作がところ狭しと並んでいます。
ルネッサンス他、時代を遡って、年代の古い順に見る、という歩き方もありますね。
ナショナルギャラリーのいいところは、ルーブルやオルセーのように大き過ぎないところです。くたくたになる、ということはありません。
さて、次の日は、意を決して、息子の行きたがっていた、帝国戦争博物館へ。
私は日本での経験から、ここへ行くのにかなり身構えていました。
しかしながら、入ってみると思ったよりかなりファミリーフレンドリーな雰囲気で、
学期の中間休みであったこともあり、小さな子供連れも沢山来ていました。
展示の主なエリアは第一次大戦と第二次大戦です。
時代背景がわかる展示で、だんだんと戦争がどのように国民の生活に
影響していったか、兵隊を募るために、国がどのように国民へアピールしたか
などがわかり、興味深かったです。ポスターなどの展示も多く、その時の社会への
歴史は大きな数字でくくられることが多いですが、
個人的な手記などを読むと、一個人の体験の話は、より胸に響くものがあります。
また、女性の社会への役割も多く展示されていて、まだ女性に選挙権もなかった時代に
男性の多くが戦争へ行ったことで、女性のする仕事が多くなった、という現象も
学べました。
あまり幼い子供ですと、音響効果がある部屋もあるので、気を付けた方がいい
ところもあります。ホロコーストの展示のセクションだけは、14歳以上を勧めます、との
注意書きがありました。
何人か元軍人の方が座っていらして、見学をしている人がお話を聞けたり、質問できたり、という場もありました。
歴史はあらゆる角度から見ないと、実像はつかめない、と思います。イギリス人と日本人の親を持つ私の子供達には、多面的な歴史の見方をして欲しい。息子ともディスカッションが出来るいい機会となりました。
戦争テーマの日、ミュージカルも第二次大戦中イギリスの対ドイツ作戦を
テーマにした、「オペレーション ミンスミート」を観に行きました。
何十回も観ていると言う友人の勧めで、私は夏にも1人で観に行ったのですが、
これは男の子も楽しめるな!と思って、今回もチケットをどうにかゲットしたのです。
これは、実話が元になっていて、2021年には映画でサスペンス版も出ていますし、
1956年にはThe man who never was というタイトルで映画になっているお話です。
戦時中がテーマと言っても、ミュージカル版は、完全にコメディとして創られていて、
とにかく大笑いの連続です。フリンジで小劇場でたった5人のキャストで上演していた
このミュージカルが、ウェストエンドで大成功、オリビエ賞も総なめ、今度はブロードウェイにも行くそうです。とにかくテンポが良く、弛むところがありません。
5人であらゆる役を取っ替え引っ替え演じる面白さ、そして全員がソリストの実力のある
役者であり歌手で、見応え聞き応えあります。
これから観る機会があったらお勧めです!