“長生きしたいです~”
“長生きしてくださ~い”
な~んて言葉を聞くと
本気かいと思う…
というのも…
我が父方の祖母は110歳
あと半年もすれば111歳だ
恐ろしい~
ギネス世界記録も夢じゃない
家族に好かれるお年寄りなら
長生きは楽しくて良いだろう…
だが…残念ながら我が祖母は
性格的にかなり問題があるそうで
家族や親戚から好かれていない…
良い話を一つも聞いた事がない…
両親から聞いた話によると
超お嬢様育ちの自己中で
他人を見下し馬鹿にする
産まれてこのかた一度も
労働をしたことがない…
家事や子育ては人任せ…
太平洋戦争で財産を失った後も
悪い態度や性格は直らず祖父に
離婚され息子で長男である
伯父さんが引き取ったのだ
だが…
祖母を引き取った伯父さんが肝硬変で病死
次に引き取った伯母さんが肝硬変で病死
次に引き取った我が親父が肺癌で病死
親父は祖母を引き取る時に
かあちゃん引き取ると
俺が死ぬ~
俺が死んでもいいのか~と
凄く嫌がったそうだ
親父は祖母を我が一族の
疫病神か死神だと思っている
兄と姉が亡くなっているから
わからないでもないが…
そうしたら
本当に親父が死んでしまった…
これではシャレにならない…
親父は祖母を引き取りはしたが
同じ屋根の下で暮らすのを恐れ
知り合いに預けてしまった
当時、すでに私も妹も実家から
巣立ちしていたので祖母の件を
知らされたのは数年後であった…
親父に肺癌が見つかり
残りの時間がわずかとわかった時に
祖母の事を親父に聞いてみた
親父は…
そうなんだよ…
あの人の事がなぁ…
順番通りに逝けば問題ないのに
俺が先に逝く事になるとは…
お前が面倒見る事はないからな…
あの人には人には言えない
恥ずかしい事が昔あったんだ…
俺は墓まで黙って持ってゆく…
我が一族は女の祟りがある
といわれているんだ…
ああ…女の祟りって…
かあちゃんかもしれないなぁ…
と、つぶやいて背を向けた…
ななな…なに…
なんだ~なんなんだ~
あの婆さん何をしたんだ~
祟りってなに…
とても気になる発言ではあるが
死に行く者が墓まで持ってゆく
という話を無理に聞く事はできない
親父は子供の頃に
祖母にあまり可愛がられず
戦争の時は見捨てられたそうで
それを根に持っているだけ
かと思っていたが…
誰にも言えない何か秘密の
暗い過去があるのね
うう~気になる~
親父は末期の肺癌のくせに
タバコを吸いながら
私に背をむけたまま
この話はもう終わりだ
沈黙…
なんともいえない重苦しい空気…
祖母には何かが取憑いているのかも…
↑ 親父は2011年4月22日鬼籍に入った
現在の祖母はすっかりボケて
食事以外は寝たきりだそうだ
そんな祖母の状態を聞くと
長生きが幸福とは思えない…
むしろ罰にさえ思えるのだ
生きる意味とは…
生かされ続ける意味とは…
親父のいう人には言えない
過去とは何か…
四人の子供のうち上の三人が死亡…
結局、祖母は親父の妹である
伯母さんに引き取られた…
生きたくても生きられない
命もある
死にたくても死ねない
命もある
ふぅ…なんだかな~
人生って何だろうね…
良い人間になる努力を怠った人間には
良い晩年はむかえられないという事か
人生は基本的には辛い事の方が多い
それを楽しい方向にもっていくのが
人生の醍醐味のように感じるのだが…
真実はわからない…謎だ…
ただ…
長生きだけが必ずしも幸福では無い事
だけは確かだろう
↑ 東京上野の国立西洋美術館の
オーギュスト・ロダン作『考える人』