メルカリ購入本47冊目
町田そのこさん
『夜明けのはざま』




お久しぶりの

町田さんです


自分が今まで町田さんの作品を読んで

感じてきたこと…

同じような読後感で満たされました。


葬儀社を舞台に

一章  見送る背中

二章  私が愛したかった男

三章  芥子の実

四章  あなたのための椅子

五章  一握の砂


これら五章から成る連作短編集です。



地方都市の寂れた町にある葬儀社

『芥子実庵』

仕事のやりがいと結婚の間で揺れる中、

親友の自死の知らせを受けた

葬祭ディレクターの佐久間。

元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった

花屋の牟田。

世界で一番会いたくなかった男に再会した

葬儀社の新人社員の須田。

夫との関係に悩む中、

元恋人の訃報を受け取った主婦の良子…。


せめて、自分自身には嘘をつかずに

生きていきたい。


死を見つめることで、

自分らしく生きることへの葛藤と決意が

力強く描きだされている…。



まず、登場人物が多いです。

誰かと誰かが編を跨いで繋がって、

さらに枝葉が広がっていく。




イギリスは曇りか雨の日ばかりだと

聞いたことがあるけれど、

わたしの心は

イギリス領になったのだと思う。

晴れ間がほんのときどきしかない。

かつてはちゃんと、

四季に似た変化があったり

快晴の日々があったりしたはずなのに。



男の腕は、

愛するものを守り包むためにある。

私は、そう思っている。

女はその腕の中で安心しながら、

内から男を支える。



女性はライフステージが変われば、

必然的にライフスタイルも

変えざるを得ない。

子どもを産めばその変化は

特に大きなものになる。

どれだけ世相が変わっても、

覆されないものもある。



一緒に生きていくために大切なのは

『しあわせな瞬間』だけではなくて、

『相手のしあわせを考える時間』も

大切なんだよ。

でも、たくさん悩むといい。

それも、相手や自分のしあわせを考える

時間だと思う。



失敗したからこそ、伝えられる言葉もある。



四十を半分も過ぎたひとが

やっと知ることだってある。

五十を超してやっと踏ん切りを

つけられる過去がある。

ひとはいつ、

大事なことに気付くか分からない。

気付けるその日まで、

自分なりにもがくしかない。



寄り添うことと、

踏み込むことは違う



そのひとが正しいと思ってやっていることを

私は私の感覚だけで否定したくない。

誰かの意見に左右されたくない。

そのひとと向き合って、話を聞いて、

理解する努力をしたい。

誰かの常識や言い訳で逃げたりしない。



自分の中の『それくらい』を

相手に押し付けちゃだめだよ。

理解しないと、いつか後悔することになる



大事だと信じたものを掴もうとすれば、

何かが落ちていく



何かを手に入れて、何かを失う

何かを望み、

手に入れられないことに絶望する。

己の手の中に残ったものと

失ったものを数えて

嘆いたりする。

でも、大事なのは

『持っていること』ではなく

『持っているもの』『持っていたもの』

でもない。

そこから得た喜び、得られなかった哀しみ、

葛藤やもがきこそが大切なのだ。

それらは、誰かに繋がれていく。




一冊を通して

佐久間の成長記録的なものも感じました。


母と姉との関係性や

恋人の純也との関係性も。


序盤の純也は『なんだコイツ』みたいな

感じで『イヤなヤツ』という印象でしたが…

切ないですね。




続編に期待したいです。

『芥子実庵』の社長…芥川。

ある時は放蕩社長と揶揄されたり、

はたまたある時は

髪をぴっちりオールバックに黒縁眼鏡と喪服

そして

はたまたある時は

カリフラワーみたいなアフロに

ド派手なアロハシャツと黄色いレンズの眼鏡


共通して言えるのは

年齢不詳で雰囲気イケメン。

無駄に渋いバリトンの声。


葬儀社の社長なのに

『死』が怖い。

向き合うことができない。

それには理由があるのですが…。



とにかく素敵な一冊でした。

町田さんらしくて…

本屋大賞にノミネートされると良いな照れ