メルカリ購入本20冊目

彩瀬まる さん
『不在』





彩瀬さんの長篇小説は

久しぶりでした。





ぎゅっと吹き出物の膿をしぼり出すように…

ふくらんだ膿が弾けるように…

こんな感じの表現、彩瀬さんだなぁと。



でも

最後まで主人公には

共感できないままで、


う~んキョロキョロ

感じたままでした。



『斑木アスカ』というペンネームで

漫画家として生きる『錦野 明日香』


幼い頃に両親が離婚し

長く疎遠だった父が亡くなったと知る。


不可解な遺言を遺した父の意思に従い

医院を併設する実家へと

足を踏み入れる…


父、母、兄、祖父母、叔父

自分が知らない父を知る女性と娘

そして年下の恋人


明日香から繋がる糸が

きつく絡んだり

ゆるく解れたり


怨念とか憎悪とか

ちょっとおどろおどろしくて

ニュアンスが違うけれど、

あ~連鎖して行くんだなぁ…

ある種の呪縛?のようなものから

結局抜け出せないで、

隣にいてくれた大切な人まで失ってしまう

やるせなさ…。



スッキリはしないけれど

こういうカタチもありなんだな、と。







なぐさめを、自分の心を守ってくれるものを

手放して、長く走れると思わないほうが

いいです。



時々ものすごく博識で、

時々ものすごくもの知らずだ。



一番無垢で柔らかい私を

受け止めてくれる人がいなければ、

私はきっと一生誰にも

甘えられなかっただろう。



なにもしたくない、

なにもしなくたっていい、は、

なにをしてもいい、に似ている。




愛なき世界の生き方を探る…と

帯にありましたが、

明日香が父との関係を

最後にこう記していました。


愛は花だ。

運がなければすぐに枯れるし、

腐ってなくなってしまう。

だけど咲いていたことまで

否定しなくたっていい。

なくなったからって、

偽物だったわけではない。

昔、きれいな花が咲いていた。

それでいいんだ。



この思いは

とても心に寄り添えました。