すみません…もっと書きたかったのですが…時間がなくて…
ある方の言葉がヒントになって…思い浮かんだお話です。
いつもの如くショートですが、ホタルの気持ちが可愛く書いたつもりです。
読みたいと思った方だけ…どうぞ。



このお話は、ホタル(高野蛍)とぶちょお(高野誠一)の可愛いおはなしです。
2人のちょっとした瞬間や何気ないお話を書いています。
だから…短い時もありますが…後は皆様の想像でお話を考えてくださいね。
よろしければ…どうぞ…。





              …た☆な☆ば☆た…






とある都会の片隅に住む高野家の小さな庭には…七夕の笹が雨に濡れながら軒下に飾られていた。

ホタルは縁側に座り…1人ため息をつく。

「あぁ…今日は七夕っていうのに…雨だ。どうしてこんなに降るの…」

ホタルのため息は止まらない。

「はぁ…ふぅ…」庭を眺めてはため息をつく。

縁側に座り込んだまま…ホタルは横たわる天の川を思い浮かべ…お互いに手を取り合おうとしている織姫と彦星の姿を思い浮かべる。




降りしきる雨を見つめて泣きじゃくる織姫はなぜか…ホタルなのだ。

そして…天の川を挟んで反対岸にいて…織姫を思う彦星の姿。

泣いているであろう織姫を思い心が痛い彦星の姿は…そう…ぶちょおなのだ。

ホタルは織姫と彦星にじぶんとぶちょおの姿を重ねていた。



ぶちょおが出張に出かけて…1週間になる。

最初の話では、3泊の予定だったのだ。でも、トラブルが起き、しばらく帰れなくなって…

毎日連絡はあるけれど…ぶちょおの声で帰るとは一言もない。

仕事だとわかっているので…ホタルも聞きづらく…聞きたい思いを抑えていた。

そんなホタルに対して山田姐さんは事も無く…

「別にいつ帰るのって聞けばいいじゃない…こんな事も聞けないなんておかしいわよ」

って…笑われてしまった。

「そうなんですよね…でも…なんか聞きにくいんです」そう答える寂しそうなホタルを見て…

「ホタルちゃん…男って案外聞いて欲しいもんなんだよ。何も言われなければ俺なんていなくてもいいんだって…勘ぐっちゃうんだ」

二ツ木にもそう言われ…驚き悲しくなっていたホタルなのだ。



誰も帰って来ない家の縁側に1人座っていると…どうしても、織姫と彦星の気持ちになってしまう。

「ぶちょおは、私がいなくても平気なんだろうなあ。そりゃ仕事だから仕方ないと思うけど…やっぱり会いたいとか…帰りたいとか言ってくれてもいいじゃない」

ホタルは自分が言えない事は棚の上に置いて…ぶちょおからの言葉を待っている。

「でも…山田姐さんは自分から言えばいいじゃないって…言ったよね。それができたら…私はここにはいないと思うわよ」

でも…二ツ木の言葉もホタルの胸に刺さっている。

ホタルはぶちょおに救われた。

恋も結婚もすべて忘れていたような干物女のホタルに、恋をすること…愛することを思い出させてくれた…そしてホタルを待ち続け、妻として迎えてくれたぶちょおに感謝することしかできないホタル。

職場結婚だけれど恋愛期間が短い分、結婚してから恋愛をしているようなホタルとぶちょお。

ぶちょおの出張は、何も言わないけれどさみしくて仕方のないホタルだった。


縁側に座り…膝小僧を抱きしまたまま…ホタルはぶちょおを思う。

そろそろ…電話が入る頃…ホタルは目の前に携帯を置いたまま見つめている。

ぶちょおからの電話を待ち続けて…時間はいつのまにか深夜に近づく…

待ちくたびれたホタルの気持ちはだんだんエスカレートしていく。

電話位してくれてもいいじゃない…一瞬頭の中が噴火した。

いきなり携帯を握りしめ…投げようとしたけど…はっとして携帯を抱きしめたまま涙声…

「ごめんね…投げようとしたりして…」ホタルは携帯を胸に大事そうに抱きしめる。

今度は、携帯がぶちょおに見えてきて…投げるとぶちょおが痛い思いをするんじゃないかと…

何を見てもぶちょおに見えて…ぶちょおが愛しくて堪らなくなる。

「会いたいなぁ…声が聴きたい…」ホタルの思いは織姫の思いへと移っていく。





きっと織姫は1年に1度…晴れた夜にしか彦星に会えない…凄く楽しみにしてるはずなのに…

なのに雨なんて…きっと彦星に会いたくて仕方かなかったんだろうなぁ…そう思うとホタルの瞳から涙が溢れ出てくる。

それでも何とか自分の気持ちを誤魔化しつつホタルは寝室に向かう。

部屋の灯りをつけ…ベットにそっと潜り込む。

綺麗好きなぶちょおだけれど…なんとなくぶちょおの残り香が香る。

ホタルはぶちょおの方へ背を向け…目を閉じた。








玄関の方でゴトゴト音がする。

ホタルが寝てるのかと気を使いながらのぶちょおのご帰還。

でも目の前には、音に気づいたホタルが腕を組んで仁王立ちしている。

「ただいま…」ぶちょおは挨拶をする。

まさかのぶちょおの帰りだとは思わなかったホタルは…泥棒だと思い決死の思いで立っていた。

その顔は驚きと嬉しさとホッとした瞬間の変化の顔。

「ど…どうした…」ぶちょおは驚き、仁王立ちのホタルに思わず1歩引いた。

「ぶちょお…今日は雨なんです。織姫と彦星は会えないんです」

ホタルには何も答える言葉が出なくて、思わずそう言うと…ぽろぽろと涙が毀れる。

一瞬頭を傾げるぶちょお…でも、はっとして…ホタルの言葉を考える。

ぶちょおにはホタルの考えていた事がなぜかわかってしまう。

「織姫と彦星が出会ってないなんて…どうして言えるんだ?」

そう答えるとぶちょおは家に上がると、ホタルの腕を取り…寝室に入る。

「え…?」ホタルは不思議そうに首を傾げながら…ぶちょおに腕を引かれて寝室へ…





ホタルをベットの端に座らせ…その横にぶちょおも座る。

「いいかホタル。地球には雲という物質があるよな…」

なぜか小学生に話すような言い方のぶちょお。

「ありますよ…曇って空を覆っているものですよね。水蒸気で出来ていて、雨を降らしたり雪を降らせたりする雲でしょ」

ホタルもしたり顔で答える。

「そう…でもな、曇って大気圏の中だけでのもので…雲を抜けると広大な宇宙に出る」

ぶちょおはホタルに噛んで含むように話して聞かせる。

ホタルも大きく頷きながら…

「そうですよね。曇って突き抜ければ…宇宙へ続きますもんね」

「だろ。だから、俺たちには雨しか見えなくても…その雨雲を抜けた先には広大な宇宙があるんだ。だから…天の川を挟んで織姫と彦星は1年に1度必ず出会ってるんだ。ホタルが心配するのはわかるけど…2人は会ってるんだよ」

そう言われたホタルの目は嬉しそうに輝いた。

「そっか…地球からは雨で見えないけど、宇宙では雨なんて降ってないから会えるんですね」

ホタルの嬉しそうな声に、ぶちょおも大きく頷くと…

「そう。だからホタルは泣かなくてもいいんだよ。それよりホタルは俺に何か言わないといけないんじゃないのかな」

ホタルはぶちょおの顔を見つめると同時に…あっという顔をした。

…そうだ…ぶちょおはただいまって言ったよね…

ぶちょおの言葉を思い出し…

「お帰りなさい」はっきり答えると、嬉しそうに微笑むホタルの瞳に…

「ただいま…ホタル」ぶちょおがホタルを見つめる瞳は物凄く優しい。







離れ離れの時間を通り過ごして…やっと出会えた織姫と彦星のようなホタルとぶちょお。

今夜のホタルはいつも以上におしゃべりで…ぶちょおに甘えている。

外は雨だけど…きっと遠い宇宙にある天の川では、織姫と彦星が楽しくおしゃべりしているのでしょう…ホタルとぶちょおのように…