太郎は、自分が


超亭主関白タイプ

男尊女卑の考えが少しある

彼女が男友達と遊びに行くなんて考えられない

嘘は大嫌い 嘘つくやつは一生嘘をつく

言っていい嘘なんてない

会社を出るとき、電車に乗るとき、家に着いたとき

それぞれにメールをもらわないとイヤ


な性格だと言いました。

会社で見るのとまったく違う太郎に 

花子はちょっと驚きました。


でもまだこんなの序の口。

今や


彼女が男性の美容師に髪を触られるなんてイヤ

だとか

 

超肩こりな花子がマッサージ行けば

「男性にやってもらってないだろうな」

と不機嫌になり


喫茶店でオーダーを取りに来るウエイターを見つめると

きょろきょろするな と不機嫌になり


福山(雅治)かっこいい~♪ と言えば

じゃあ福山とつきあえば?! と不機嫌になり


「家に着いたよ」メールを忘れればまた不機嫌になり



本当の太郎を知れば知るほど

なんて面倒くさいヤツなんだ と呆れてしまいます。



ドライブデートをして、太郎の彼女になったと思った花子。

でも、太郎から 「つきあおう」 と言われた訳でもなく

「好きでいて欲しい」とは言われたけど 太郎から

「花子のことが好きだ」 と言われたわけではありません。



私は「今から帰る」「家に着いた」メールを送るべき人なんだろうか?

男友達と飲みに行くのを事前に報告しなきゃいけない人なんだろうか?


・・と花子は日々悩みつつ

元々面倒くさがりな性格なので、帰るメールはずっとしないでいました。



ドライブデートから半月後

太郎は仕事に復帰することになりました。


それからです。

ぱたっと太郎からの連絡がなくなったんです。


仕事に復帰してまだまだ大変

ココロも体も疲れてるんだからと 

花子は自分からメールを打つのも 段々数を減らし

一週間に一度のペースになりました。


でも 太郎からは一度も返事がありません。



元カレに されたことを思い出しました。

花子の元カレは 花子と別れたくて突然連絡をしてこなくなりました。

電話番号もメールアドレスも変えられて 

別れたい理由さえ教えてもらえず途方に暮れたことを思い出しました。



太郎はそんな人じゃない と思いながらも

同じことの繰り返しなんだ・・・・と泣き暮らす日々。

ヘタレな花子は どうして連絡をくれないのか と聞くこともできず

「今は大変なとき」 「煩わしてはいけない」 と一生懸命思い込もうとしてました。


連絡がなくなって2ヶ月近く

さすがの花子も


好きでいて欲しいと言ってくれてありがとう

夢を見させてくれてありがとう

何もできなくてごめんなさい


とメールを打ちました。

打ったけれども送信はできず

保存メールとして何日も何日も取ってありました。



2ヶ月がたったある日の夜中

太郎から電話がありました。




初めてのデートはドライブ。


約束の時間は11時。


「朝起こして欲しい」


と太郎が言うので 9時に電話をして起こすことに。

これが花子の初のモーニングコール。

2時間も前に起こしたのですが

約束の時間には30分遅れることになった太郎。


このモーニングコールが半年後、花子の日課となること

約束の時間に遅刻してきたことが病気に関ってること

まだこの時の花子には分かっていませんでした。



ドライブは楽しく進みました。

車の中でもたくさんの話をしてくれる太郎。

それは 夫婦漫才 と言われてた2人とは違って

太郎が話してくれる色んな話に

ただただ目を見つめて聞いてるだけの花子。



家まで送ってもらった花子。

家の近くで一度停めた車を 何度もまた走らせる太郎。

家の近所をぐるぐる周った3周目

花子は太郎に抱きしめられました。

夢のような時間でした。



臆病者の花子。

自分のことになると ほんとヘタレになる花子。

自分から「好き」だなんて絶対言えないヘタレな花子が

清水の舞台から飛び降りて

その夜 太郎に


「太郎のことを好きでいていいのかな」


と聞いてみました。

太郎は


「好きでいて欲しい」


と答えてくれました。



この日 

花子は太郎の彼女になりました。







7年前、初めてウツに倒れてから5年後

太郎はまた会社を休むことになりました。


今回の休養については 

太郎は事前に花子に教えてくれていました。

1ケ月程度の休養だとのことでしたが

結局、休養は4ヶ月に及びました。


7年前は起き上がることさえできなかった

歩くときも誰かに支えてもらわなくてはならなかったほどの太郎ですが

今回の休養では パソコン教室に通うなど 少し余裕があったよう。


休養が3ヶ月を過ぎたころ 

突然太郎から電話がかかってきました。


「もうすぐ誕生日じゃない? ご飯ご馳走するよ」


と。


太郎が病気で休んでいると言うことも忘れて

花子は舞い上がって喜びました。

これまでの誕生日も 「おめでとう」 と言葉はもらってましたが

目に見えてプレゼントをもらったことはありません。

飲みに行くこともたくさんありましたが

2人きりで会うことはありませんでしたから。



その日、簡単な昼食をご馳走になり

喫茶店を2軒はしごして 太郎は色んな話をしてくれました。


自分の性格、ウツの状態、家族のこと

いつもニコニコ、冗談ばっかり言ってる会社の顔と

まったく違う本当の太郎の顔を見せてくれました。

花子はそんな太郎の話を うんうん とうなづいて聞くだけでした。

気の利いたこと 何も話してあげられませんでした。



その日の夜、太郎からメールが入りました。



今日はありがとう。

会社での自分ではなく素の自分でお前と話がしたかった。

くだらない話をちゃんと聞いてくれてありがとう。

こんな病気になってから

本当の自分を知ってくれる人が欲しかった

安心できる人が欲しかった

自分をさらけだせる人が欲しかった

お前ともっと話がしたかった

お前のことをもっと知りたかった。



花子は泣きました。

嬉しくて嬉しくて またエンエン エンエン泣きました。

花子は太郎の特別な人になれたんだろうかと

エンエン エンエン泣きました。


実は太郎の病気の半分も教えてもらった訳じゃないのを

この時花子はまだまだ知りませんでした。

誰も知らない太郎を 自分だけが知ることができたことに

花子は舞い上がってました。



そして 太郎とドライブに行く約束をしたのでした。







太郎は花子の仕事の先輩。

仕事の仲間と飲みに行くときは、いつも2人で冗談を言い合って


夫婦漫才


と言われるほどの仲良し。



仕事ができて、世間一般に見てまぁ“いい男”の部類に入る太郎。

そんな太郎が花子は大好きでしたが 彼女になれるとは思ってませんでした。


仕事でつながっているだけで嬉しい。

飲みに行くときにちょっかいかけてくれるだけで嬉しい。


それに 花子はその頃

別れた元カレをまだ完全に忘れたわけでもなかったんです。



そんな太郎がウツで倒れたのが7年前。

まだまだウツについて正確な知識をもっていなかった花子は

すぐによくなるだろうと軽く思ってました。



太郎の休みは数ヶ月に及び

仕事に復活してからも、

しばらくは週に3日ほど、しかも午後からの出社と言う日々。


会社では、倒れる前と変わらない様子で仕事をする太郎。

病院に通いつつ、ようやくフルタイムの勤務に戻り

調子を取り戻しつつあったある日


花子の妹が適応障害に倒れ

悩みに悩んだ花子は、太郎に相談することにしました。



太郎は、自分がウツで倒れていたときのことを

事細かに話してくれました。

どんなに苦しかったか、どんな症状でいたのか

周囲にどうして欲しかったか・・・


そして花子の妹のために 自分の通う病院を紹介してくれました。

いつでも自分の話を花子の妹のために話してやる と言ってくれました。



花子はエンエン泣きました。

妹の病気のことに涙が出たのではなく

太郎がどんなに苦しんでいたのか

調子を取り戻しつつあるのに 

病気で苦しんでいたときのことを思い出させてしまったことを後悔して

エンエン エンエン泣きました。



そして以前よりももっと 太郎のことが好きになりました。

この人はすごい人だ  と心の底から好きになりました。

そしてようやく ウツについて真剣に勉強するようになりました。






花子のカレ、太郎は気を遣い屋さんで

誰にでも優しく、いつもニコニコ、面白いことを言っては人を笑わせる

仕事関係の人からは信頼が厚くみんなの人気者。


でも、ウツ強迫性障害

すでに2度、療養のために会社を長期で休んでいます。

次倒れたら、もう会社にはいられないと覚悟をしています。


会社を休んだので、ウツであることはみんな知っていますが

強迫性障害まで病んでいることは誰も知りません。



花子はそんな太郎をずっとずっと好きで好きで

ウツの本を何冊も買って勉強して

少しでも太郎のことを理解しようと頑張ってきました。



そんな気持ちが太郎に通じて

去年の花子の誕生日をきっかけに

とうとう太郎の彼女になることができました。



太郎がウツであることを分かっていて好きになった花子。

彼女になってから 強迫性障害も病んでいることを知った花子。



一緒に病気と向かい合いたい。

誰も知らない本当の太郎を支えて行きたい。


そんな甘い覚悟が試されている日々

毎日毎日つらくて、淋しくて、情けなくて

彼女になって幸せなはずなのに泣いてばかりの花子の

頑張る日記です。