立ち退き銀座日記#1 | BOOGIEなイーブニング!

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今、働いている木挽町のビルを建て直すらしく立退きになる。その情報は去年の暮れ頃、隣の部屋のドラえもんにソックリなババアから聞いた。それから2カ月後、説明に伺いたいと、突然、大家から電話がかかってきた。それが2月の中旬だった。電話の翌日14時、なんのアポもなく大家と不動産屋は事務所に来た。ぞろぞろとオヤジどもが4人。ウチの社長は遊びに出かけていて留守だったので、止むを得ず僕が代わりに名刺交換をした。全員なぜか違う会社の名刺だった。代表の一人がおもむろに話し始めた。要するに話しはこうだ。
ここに新しいビルを造る。大家は一切の権利を売却する。近所に代わりの部屋を用意してあるので、5月末日までにそっちに引っ越してくれというのだ。不動産屋は引っ越し先の間取り図を置いて帰っていった。

ずいぶん急な話しだった。

早速、翌日にその不動産が提案する、代わりの部屋を見にいった。汚い。薄暗い。この世の終わりのようなビルだった。5Fを丸ごとワンフロア使って、細かく間仕切りし、今いるビルからこのビルに入居する会社で分けるらしい。

ちなみに便所は和式。

ババコ糞野郎の会社は間違いなくこのビルに引っ越すだろうから、我々もここに越すと新ババコ戦記が始まってしまうだろう。

家賃は前と同じで敷金はなし。なんの旨みもない話しだった。ってか不動産屋は空室だらけのボロビルは埋まるし、立退きもリスク無く片付く都合のいい話しだ。こっちとしては、家賃同じで、今よりボロいビルに移ってどうするのだって感じ。当然、そんな条件では飲めない。
社長は東京都が運営する不動産相談窓口に行った。窓口の相談員は「こちらは法律で守られています。立退き料400はいけますよ」と太鼓判を押してくれたらしい。

社長は実に逞しくなって帰ってきた。「法定更新」という理論武装まで身につけた。何か、相談員に困ったらその言葉を使いなさいと言われたらしいのだ。もちろん言葉の意味までは知らないので、僕がプリントして渡した。


【法定更新】
借地・借家の契約について、賃貸物件を貸し主が自己使用するなどの正当な事由がない限り、貸し主は契約の更新を拒絶できず、自動的に契約が更新されるとする、借地借家法の規定。


それより、相談員の「いけますよ」がよっぽど社長には心強かったのだろう。

2年振りに口笛まで吹いていたのだ。

そして、社長はこう言った。
「800はいけるな」

いよいよ、明日は不動産屋との個別面談が控えていた。準備万端。大勝利。事務所の誰もがそう信じて疑わなかった。

つづく

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